夫の借金29,035,436円と私⑯
第16話 DV期➡ハネムーン期➡緊張期
昨年11月末に夫の新たな借金が発覚してから、負の感情の渦に飲み込まれながらもなんとか這い上がり、夫と一つ屋根の下、平常心で暮らせるようになりました。
でも、時々発作のように怒りの感情が湧きあがってきて、自分でもどうしようもなくなる時があります。
一日の内に何度も「許せない」という気持ちと「支えられてる」という大きな振れ幅の振り子が行ったり来たりするのです。
DVをする人間は「DV期→ハネムーン期→緊張期」の周期を繰り返すのだそうです。
パートナーに暴力を振るってしまった後は、別人のように優しくなり、プレゼントを買ってきたりしてご機嫌をとるのですが、しばらくするとまたちょっとした事で怒るようになり、また暴力を振るうようになる、というサイクルを延々と繰り返すのだそうです。
私も気持ちが「許せない」という振り子に傾いた時は、夫に罵詈雑言をあびせてしまいます。
しばらくして落ち着くと「さっきは言い過ぎてしまった・・」となり、夫の好きなお菓子を買ってきたりしてご機嫌を取る・・・
私も「DV期→ハネムーン期→緊張期」のループにハマってしまったかのようです。
先週もまた、大きな喧嘩をしてしまいました。
仕事から帰った夫が「いい知らせがある」
会社から特別手当で20万円ほど支給されるのだそうです。
夫は嬉々として「頑張って、借金ちゃっちゃと返そう!」
私は最初こそ夫と一緒になって喜んだものの、徐々に心の中に黒い雲が立ち込めました。
夫の借金は11,351,393円です。
20万円など焼け石に水、無いよりましという程度のものです。
11,351,393円が11,151,393円になったから、喜べというのでしょうか。
私の心の振り子は再び「許せない」へと大きくふれました。
私は喧嘩をするときいつも落としどころを考えたうえで仕掛ける事が多いのですが、この日は感情に任せて怒ってしまいました。
翌日の土曜日になっても怒りが収まらない私は、夫と顔を合わせたくないため、午後6時に寝室に引きこもりました。
やり場のない怒りを抱えながらベットに入り、オーディーで「ザリガニの鳴くところ」を聞いていたのですが、意外にも面白く全部聞き終わる頃には明け方になっていました。
次第に落ち着いた私は、また落としどころを考え始めました。
思いついたのが、夫と共にガストのモーニングを食べながら和解することでした。
最近外食を控えていたので、デブな夫は喜んで乗ってくると思ったのです。
翌朝、ガストでトーストとベーコンエッグの朝食を食べながら、夫から
「離婚したくないから、借金の事は言えなかった」
「これから一生懸命頑張るから」
という話をされました。
私の怒りの発作はひとまず収まったものの、いつまた爆発するかわかりません。
夫の最初の借金が発覚し、家計を全部任されるようになってからは、毎日アプリで家計簿をつけるようになりました。
外出して買い物した後は、家に帰ってすぐレシートを並べ、1円単位まで項目別に何にいくら使ったか記録していました。
その影響もあってか、無駄遣いをあまりしなくなりました。
昨年は下着、靴下などを1~2度買っただけで、外出着などは1着も買っていません。
もともと友人と出かける事なども少ないため、まったく服を買う必要性を感じなかったのです。
靴もスニーカー3足をローテーションで履き、そのうちの1足は底に穴が開いてしまいました。
バックやその他の雑貨なども、この2年ほどほとんど買っていません。
先週買い物に出かけた時、本屋に寄りました。
ここ最近、本や雑誌などもほとんど買っていませんでした。
私は好きなファッション誌と、映画に関する雑誌を買いました。
そこでスイッチが入ったのか、隣の靴屋でスニーカーを買い、それからまたショルダーバックを買ってしまいました。
どれも数千円の安物ですが、気持ちが高揚しました。
夫は29,035,436円も自分のために浪費したのです。
私のほんの数千円の買い物が何だというのでしょうか。
駅に向かう途中、女子高生とおぼしき二人が私の前を歩いていました。
二人とも髪が長く、短いスカートの下にジャージを着ていました。
彼女たちは若く、疲れなど知らないように見えます。
私は長く美しい髪の人を見ると、三つ編みをしたくなってしまうのです。
日差しにキラキラと輝く美しい髪を見ながら
「私にもこんな若い時があったな・・・」
と彼女たちの若さをうらやましく思いながらも、彼女たちはSNSで始終繋がっていて逃げ場が無く、私が今高校生に若返ったとしても10分もたずに病んでしまうだろうな、と思いました。
借金残額 令和5年1月現在 8,356,557円
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