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あき竹城さん主演ドラマ「ある日突然・・」

先日、女優のあき竹城さんが75歳で亡くなられました。

彼女の女優としてのキャリアで一番有名なのが、映画「楢山節考」ではないでしょうか。
今村昌平監督の「楢山節考」は、カンヌ映画祭で最高賞であるパルムドールを受賞しています。
彼女は主演の緒形拳の妻、お玉の役を演じていましたが、凄みを感じさせるほどの魅力と色気がありました。

「ある日突然・・」は、1992年8月から10月にかけてTBSで放送されたドラマです。
昼ドラというのはたいていの場合、大袈裟な演出や荒唐無稽な展開で話題性のみを追求した作品が多いイメージですが、このドラマはあきらかにそうしたものと一線を画すものがありました。

私は途中から姉の勧めで見始めたのですが、あっという間に引き込まれてしまい、30分の放送が短すぎるほど毎回食い入るように見ていました。

平凡な主婦、直子は離婚歴のある夫の愛人問題や、連れ子の桃子との親子関係に悩む日々を送っていた。
そんな折、ある雨の日の夜に若い男性、野津とタクシーを乗り合わせた直子だったが、その車内で大金を拾ってしまう。
二人はその大金を山分けして秘密を共有することになる。

野津は交通事故に遭った友人を救うため金が必要だった。
直子に金の半分を渡し、雨の中を去っていく野津。
「ちょっと待って! 困るわ!」必死に野津を追いかけるも見失う直子。
直子もまた、結婚が決まった妹の嫁入り支度のため、金が必要な状況だったのです。
その後、二人が金を山分けする所を目撃していたタクシーの運転手に脅迫されたり、急に金回りが良くなった直子を疑う義理の娘桃子に執拗に追い詰められたりと、息をもつかせぬ緊張感があります。

秘密を隠すべく、直子と野津は頻繁に会うようになるが、そのうち直子は夫や義理の娘から「浮気しているのでは」と疑われ始める。
追い詰められた直子と野津は、富士の樹海へと逃避行する・・


物語の終盤、山小屋で野津と二人きりになった直子は
「今度生まれ変わったら、あなたのような優しい人と結ばれたい」
年の離れた二人が、互いに恋愛感情を持っていたかが定かではありませんが、それ以上の信頼関係で結ばれていたのが間違いないでしょう。

大金を手にした二人ですが、直子は妹のため、野津は友人のため、自分自身のためには1円も使っていないのです。

直子が優しかった姑にあてた手紙に
「生まれてから一度も飛べなかった私が、生まれて初めて冒険をしたような気がする・・」
私はこのラストに、思わず泣いてしまいました。

全45話なのですが、最後まで緊張感が途切れず、現在の韓国ドラマに匹敵するほどのエンターテイメント作品といえます。

あき竹城さんは初の連ドラ主演で、10キロもの減量をし役に挑み、彼女の女優としてのプロ意識を感じます。
インタビューで「今まで真面目に、誠実に生きてきたからこそ、このような役に巡り合えた」と語っていました。
ただの美人女優が演じていたとしたら、可哀そうな女性のお話で終わっていたかもしれませんが、彼女が演じる事により、彼女が本来持つ明るいキャラクターが透けて見え、物語に多面性を与えていると思うのです。
いつもの山形弁の陽気なキャラクターを封印した彼女は、本当に薄幸な主婦に見えました。
主題歌の「あなたに明日を」も、ポップな優しい曲で大好きでした。

ネットで検索しても思いの他情報が少なく、まさに隠れた名作といえます。

あき竹城さんの女優としての功績を振り返る意味でも、ぜひとも再放送してほしいものです。


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