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夫の借金29,035,436円と私⑫

第12話 借金サレ妻の苦悩と葛藤

隠れて11,351,393円もの借金をしていた人間と、どのように向き合えば良いのでしょうか。
今年のお正月はとても苦しくつらいものでした。

夫も私もお正月休みだったのですが、どこへ出掛けるわけでもなく、狭いマンションの部屋で二人で悶々と過ごしました。

命に関わるような病気や怪我などと戦っている人に比べたら、11,351,393円の借金など、取るに足らない悩みかもしれません。

しかしながら、私にとって、この世で一番大事なものは命、次はお金です。
若い人なら、命の次に、友情、愛、仕事、などが来るのでしょうが、
50も過ぎ子供もおらず、老後の介護をすべてアウトソーシングしなくてはならない私たちにとって、お金はまさに命のようなものです。
少なくとも、私はそう認識していました。

心を鬼にして夫と二人で、借金を返済していくと決めたものの、未だ心の中にくすぶる怒りが治まらず、ちょっとしたことで爆発しそうになります。
11,351,393円を告白された時の衝撃と、驚きと、怒りと絶望が何度もフラッシュバックし、叫びたいような気持になるのです。

1日の間にも感情の波があり、夫の感謝する時もあれば
「死ねばいいのに」
と思うときもあります。

夫は借金以外で考えれば、仕事も真面目で、優しい性格です。
日常生活で助けられることもたくさんあり、いなくなったら正直困ります。

大きな支えであり、大きなストレスであると言えます。

ネットの記事で、借金を繰り返された挙句離婚した妻のブログなどを読むと、自分たちの未来を見るようで気持ちが落ち込んでしまいます。
「債務整理」や「夫、借金」などでいつも検索しているせいか、真っ先におすすめに出てきてしまうのです。

道を歩いていても、夫婦や家族連れなどを見ると
「この旦那さんは、借金なんかしないんだろうな・・」
と、つい思ってしまいます。

私が夫の隠れた借金を知るのは、いつもカード会社からの督促のハガキでした。
いつも郵便ポストが地獄への扉だったのです。
借金の発覚以来、私はポストを開けて中を確認するのが怖くなりました。

私は夫に家事をほとんどさせませんでした。
家事の割合で言えば、まさに10対0です。
ゴミ出しすら、ほとんどさせませんでした。
夫はストレスの多い職場で働いているので、せめて家ではのんびりくつろいで欲しいと思ったのです。
今から思えば、甘やかし過ぎたのかもしれません。

私がショックだったのは、普段これだけ尽くしているのに裏切られた、という思いがあったのだと思います。
夫にしてみれば、裏切ったなどという認識は無く、ただ物欲に勝てなかっただけなのでしょうが・・

借金が発覚してからは、夫は皿洗いや風呂掃除などをしてくれるようになりました。
でも、甘い顔をしているとつけあがるので、時々喝を入れなくてはいけません。

浪費癖と言うものは、直るものなのでしょうか。
「性格の先鋭化」という言葉があり、年を取ればとるほど、その人の短所が顕著になるのだそうです。
ケチな人はよりケチに、暴力的な人はより暴力的に・・

今回の借金を返済し終わった後も、私は一生、郵便ポストに督促ハガキが入っていないか怯える人生になるのかと思うと、暗澹たる気持ちになります。

50代にして酒の味を覚えてしまった私は、今日も缶チューハイのフタを開け、ひたすら酔うしか逃げ場がありません。

借金残額 令和23年1月時点 8,856,557円(概算)


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