2024年箕面市議会議員選挙の結果総括
8月25日に投開票が行われた2024年箕面市議会議員選挙の結果を事前の展望との差異を含めて総括する。
【選挙の概要】
選挙の摘要
今回の選挙には定数23に対して29名の候補者が出馬した。
8月18日(日)に告示、8月25日(日)に投開票が行われ、投票率は49.98%(前回+0.63%)であった。
選挙の背景や主な争点は選挙前の展望の記事に記したが、改めて概要だけ確認しておきたい。
箕面市では08年から3期市長を務めた倉田氏が4期目の選挙には出馬せず、維新公認の上島氏が20年の市長選で当選した。
1期4年の上島市政及びそれを支える維新政権の是非がまず大きな争点となった。
また、北大阪急行線の延伸による交通網の再編の方向性、市民病院の建て替え、小中一貫教育の推進なども争点となった。
【各党派・候補の戦評】
ここからは、各党派の候補者それぞれに焦点を当て、結果をまとめたい。
なお、正式な結果は箕面市の公式HPを参照されたい。
今回の選挙の党派別得票順に、国政政党を党派として記載した。(敬称略)
① 大阪維新の会
大阪維新の会からは現職の武智、山根、神代、桃山、尾﨑、新人のくのい、吉田が出馬した。
武智は3,897票を得て1位となった。前回の5,000票余りからは減少する結果となったが、これは維新全体での得票自体が前回から12%ほど減少していること、候補者数が増加し、票が分散したことによるものと思われる。
いずれにせよ、これで4回連続でのトップ当選となり、強さを見せつけた形となった。
桃山が3,096票を得て2位につけた。
前回から600票程度を上積みし、維新の得票が減少する中でも独自の強みを示した。
山根は2,812票を得て5位に入った。
前回からは1,100票余り減少したが、これは女性候補が1人から3人に増加し、女性への投票が分散した結果と推察する。
新人の吉田は2,264票を得て9位となった。
小児科医として地域との関わりをアピールすることで着実に票を得た形だ。
神代は2,157票を得て10位となった。
新人のくのいが1,606票で17位。
活動量も多く、上位当選かと予想したが、票は伸び悩みボトムハーフでの当選となった。
尾﨑は1,507票で18位。
前回から1,000票程度減らし、下位での当選となった。
大阪維新の会は現職・新人合計7名全員の当選を果たした。
党派別の得票で見ると、前回の19,732票から2,300票余り、およそ12%の得票減となったが、候補者数に余裕があったことから落選候補は出なかった。
1位から6位を独占した前回と異なり、上位、中位、下位と各候補の得票数が分散したことはひとつの特徴と言える。
大阪・関西万博をめぐる懸念や、兵庫県知事のパワハラ疑惑、箕面市議会での市長のヤジなど、維新へやや逆風が吹く中で、着実に票を伸ばした候補と伸び悩んだ候補が分かれた印象だ。
各候補とも選挙直前には府内各地から議員や党員が応援に入り、充実した体制を築いていたが、日頃からの活動量や地元への浸透度によって差がついた形となった。
7名全員が当選したことで、市議会では単独第一会派となり、引き続き市政の中心的役割を担うこととなった。
しかし、同日行われた箕面市長選挙では、維新公認の現職が敗北する事態となり、これまでのように首長と二人三脚で進めるという形にはならない。
まずは新市長とどのような関係を築いていくのか、注目したい。
② 自由民主党
自民党からは現職の藤田、新人の竹内、藤井、牧野(すみ)が出馬した。
竹内が3,089票を獲得し、3位に入った。
26歳という若さや印象が有権者に魅力的に映ったことに加えて、新市長に当選した原田氏との関わりもプラスに作用した可能性がある。
現職の藤田が2,957票を得て4位。
国政の状況などから自民党への逆風が吹く中、500票程度を前回から上積みし、上位当選を果たしたことは驚きだ。
新人の牧野(すみ)は2,364票で7位。
父である前職の牧野(芳治)の地盤を継承したことに加えて、箕面ではおそらく初となる自民党の女性候補として、清新さをアピールできたか。
藤井は1,172票、25位で次々点となり涙を飲む形となった。
自民党に逆風が吹く中、各候補がそれぞれの個性を打ち出し戦ったことで、相対的に埋没してしまった印象だ。
また、選挙期間直前から期間中にかけて、コロナに罹患し、満足に活動が行えなかったようだ。終盤での追い込みがパワー不足となったことで、あと一歩届かなかった形だ。
自民党は擁立した4名中3名の当選となった。
自民党候補全体が獲得した票数では、9,582票となり、前回(7,644票)から25%増となった。
裏金、増税などに揺れる国政の状況を踏まえると、自民党に厳しい選挙になると予想していたが、前回からかなりの票を上積みしたことは驚きだ。
自民党への逆風以上に維新への反発が大きかったか、あるいは候補者個々人の資質や努力によって巻き返しを果たしたか。
今後の近隣市の選挙も含めて、どのような傾向となっているか注視していく必要がある。
21年衆院選での府内小選挙区全敗、23年統一選での府議選・各市議選での大幅な退潮など、暗い話題が続いていた大阪自民党にとって、今回の復調は同日の市長選の勝利と合わせて明るい話題となりそうだ。
一方で、議員数で見ると前職4名から1減という結果となった。
当選した3名がいずれも10位以内での当選を果たす一方で、残り1名は当選ラインに届かず。
得票のみを見れば4名が余裕をもって当選できる票数を確保していただけに、人気候補に票が集中し、結果として議員数を減らしてしまったことは今後の改善点だ。
候補者のパーソナリティをアピールする戦略と、党の公認・一体性を訴えるアプローチは一定トレードオフの関係にあるだけに、今後の近隣市での選挙においては難しい判断を迫られるだろう。
票数は伸ばした一方で議員数を減らしたことで、市議会内での影響力は抑えられる形となりそうだ。
新市長となった原田氏との連携のもと、市政与党として戦略的なかじ取りが求められる。
③ 公明党
公明党からは現職の田中、楠、岡沢が出馬した。
岡沢は1,839票を得て13位、田中は1,753票を得て14位。
楠は1,686票で16位となった。
公明党は現職3名全員の当選を果たした。
前回からは1割余り総得票数を減らしたが、完璧な票割りによって3名とも13位から16位と中位での当選となった。
擁立した全員の当選を果たした一方、得票数減の傾向は変わらず、今後の国政選挙に向けて党勢衰退の懸念は残る。
国政選挙全体では05年の衆院選をピークに得票減の傾向が続いており、新たな支持層の掘り起こしが課題として残っている。
市政では新市長の原田氏のもと、市政与党となる見込みだ。
円滑な市政運営のための働きに期待したい。
④ 日本共産党
共産党からは現職の村川と名手、新人の金森が出馬した。
村川は2,082票を得て12位で当選。
現職としての強さを発揮した。
新人の金森は1,394票で20位。
前職の神田の議席を引き継ぐことに成功した。
現職の名手は1,182票。
24位で次点に甘んじ、共産党の3議席目を失う形となった。
共産党は得票数で前回から1割弱の減となるとともに、現有3議席を2議席に減らす形となった。
国政与党である自民党や、大阪での政権政党である維新の会の失策が続く一方で、それらへの批判票の取り込みがうまくいっていない。
こうした地方議会選挙での思うようにいかない状況をどのように総括し、復調へつなげられるかが今後の焦点だ。
支持層の高齢化も進む。若い世代への訴求力向上も急務と言えるだろう。
新しい市議会では、方向性の違いから引き続き市長と対峙するポジションとなることが想定される一方、新市長の原田氏とはバス路線の再編や緑の保護など歩調をともにする政策分野もあり、維新政権であった前市長時代よりは融和的な姿勢となりそうだ。
また、議会内の党派性が近い勢力とどのように連携するかも注目だ。
元々行動をともにすることが多かった市民派クラブの現職2名に加えて、れいわ新選組が1名、無所属の浦川も今回新たに当選した。
会派は異にするだろうが、議会内での左派勢力の連携を図ることで、政策実現に向けて動きたいところだろう。
⑤ 参政党
参政党からは新人の木下が出馬した。
木下は15位、1,701票を得て初当選を果たした。
党代表の神谷宗幣が選挙終盤を含めて複数回箕面市内に入るなど、党を挙げた支援が功を奏した形だ。
参政党は箕面市議選で初の議席獲得を果たした。
市内で多くのポスターを掲示し、多くのボランティアの協力のもと積極的な街頭活動を行うなど、党特有の支持者の高い運動参加率が候補を後押しした。
参政党は22年参院選での議席獲得後、内紛や、日本保守党など新興勢力の台頭により党勢に陰りがみられていたが、各地で一定の基礎票をいまだに有していることが証明された。
議会内での立ち位置は予想が難しい部分もあるが、基本的には市長与党的振る舞いになるのではないだろうか。
今回議席を減らした自民党とは統一会派を組む可能性もあると考える。
参政党が地方議会において、他党と会派を組む場合に最も多いのは自民党だ。江東区や水戸市、旭川市、八尾市など各地で例が見られ、大枠では保守というくくりであることから、協力体制も比較的円滑に構築できるであろう。
自民党は今回議席数を減らしていることから、他党の議員を取り込んででも勢力維持を図ろうとする動きが起こることは十分考えられる。
豊中市議会においても、その力学によって連合的会派の結成が行われた。
今後の動きに注目だ。
⑥ 国民民主党
国民民主党からは現職の高橋が出馬した。
高橋は1,466票を得て19位。2回目の当選を果たした。
党や連合の支援のもと、組織票を着実に固めて当選ラインをクリアした形だ。
国民民主党は議席を失うことが懸念されていたが、党代表の玉木や府連幹部などが支援に入り、かろうじて議席を守った。
維新VS非維新の構図の中で、大阪における国民民主党は埋没しつつある。
国政では比較的自民党や維新の会と近いとみられる中で、大阪地方政治での党の存在意義を明確に打ち出すことができていない。かつて組合が強く、民主系が多かった大阪だが、その存在感も隠れて久しい。
国民民主党は次期衆院選において、箕面市に隣接する大阪8区(豊中市・池田市)に新人候補を擁立する方針を明らかにしている。
現実的には小選挙区での当選の見込みは薄く、比例近畿ブロックでの復活当選を目指した戦いとなるだろうが、その基盤となる北摂地域での足場固めは進めていく必要がある。
今回の戦いが旧民主系復調の足掛かりとなるか注目したい。
市議会では選挙前から引き続き、箕面政友会に所属することになるだろう。
原田新市長のもと、市長与党としての立ち位置となり、政策実現もやりやすくなると考えられる。
⑦ れいわ新選組
れいわ新選組からは新人の牧が出馬した。
牧は1,243票を得て23位となり、最下位での当選を果たした。
サポーターのSNSや実地での強力な支援によって、最後の枠に滑り込んだ。
れいわ新選組は参政党同様、初めての議席獲得を果たした。
昨年の統一地方選では、豊中市で議席を獲得した一方、吹田市では公認候補が落選し、近隣市でも明暗が分かれる状況であっただけに、大きな勝利と言えるだろう。
22年の参院選ではほぼ同数の2,300票前後の比例票を箕面市で獲得した参政党とれいわ新選組であったが、今回の選挙では参政党がおよそ1,700票、れいわ新選組が1,200票余りと一定票差が開く形となった。
極右と見られている参政党候補には、支持層が重複するような候補が一部の自民党候補くらいしかいなかった一方で、左派であるれいわ新選組の候補はその支持層を共産党やリベラル系の無所属候補と分け合う形となったためではないかと推察する。
れいわ新選組の新人議員が議会内でどのように振る舞うかは未知数だ。
おそらく市長野党として活動を行う中で、同じく野党となるであろう市民派クラブやあるいは他の無所属議員と会派を結成するのか、あるいは無会派単独の議員として活動するのか注目したい。
⑧ 無所属
最後に政党公認を持たずに戦った無所属候補の結果をまとめたい。
現職として、中西、大脇、中嶋、増田が出馬した。また、新人として浦川、東野、西野、丸吉、山田が出馬した。
中嶋が2,401票を獲得し、6位で当選を果たした。
地道な地域・議会活動が実を結び、前回から800票余り票を伸ばした。
中西が2,288票を得て、8位となった。
前回とほぼ同数の票を獲得し、5期20年にわたって築いた支持層の強さを示した格好だ。
大脇は2,142票、11位で当選。
増田は1,332票で21位。
前回から票を減らしたものの、しっかりと当選ラインを越えてきた。
新人の浦川が1,262票を獲得し、無所属の新人候補では唯一となる当選を果たした。
丸吉は1,161票にとどまり、八代市・西東京市・江東区議会議員選挙に続く落選となった。
東野は832票で27位。
子育て支援日本一などを訴えたが支持が広がらなかった。
西野は677票で28位。
最年少候補として若さを前面に押し出して選挙戦を戦ったが、活動量が足りず、浸透が進まなかった。
山田は654票で最下位29位となった。
現職にはいなかった無所属の保守系を名乗って戦ったが、敗北を喫した。
無所属候補は前回選挙と同数の計9名が出馬した。
現職4名に加え、新人の浦川が当選し、計5名となり、選挙前と比べて1減となった。
近年の選挙では、特に都市部を中心に、党派的選挙が進む傾向がある。
すなわち、候補者の人柄や政策以前に、まずどの党に所属しているのかが見られる傾向が強くなっているということだ。
これは地縁団体や地域コミュニティの弱体化により、公職の候補者と市民が直接面識を持ち、話したり共同作業を行ったりする機会が減少し、地方選挙において投票する候補を「知らない」有権者が増えていることに起因すると考えている。
結果として、有権者の判断材料としてはまず国政などの状況を基に政党を、その次に人柄や経歴などで候補者を選ぶという形ができてきている。
そのため、政党に所属していない無所属の候補にとっては、そもそも有権者の選択肢に入ってこない、厳しい戦いになっている。
今回の箕面市議選においても、複数期を務めている現職が全員手堅く当選を手にする一方、新人の当選は浦川ひとりにとどまった。
その浦川も、女性・30代・地元の生まれ育ち・子育て中と強みになるバックグラウンドが多くありながら22位での当選となり、無所属での戦いの厳しさを印象付けた。
無所属候補はそれぞれの判断で議会活動を行うため、議員個々の動向の予想となるが、中嶋・大脇は選挙前と同じく国民民主党の高橋とともに箕面政友会での活動を続けるだろう。
原田新市長のもと、市政与党となることが予想される。
中西・増田についても選挙前と同様、市民派クラブでの活動を継続し、市政野党として市長と対峙していくだろう。
新人の浦川については未知数な部分も多く、現時点で与党的立場を取るのか、野党的立場を取るのかは判断できない。
今後の動向に注目する必要がある。
【戦前の予想精度の評価】
今後の精度向上のため、戦前の予想との誤差も確認しておく。
なお、筆者は本記事及び事前の展望の執筆にあたって、定量的な調査等を行っているわけではないため、「予測」ではなく「予想」として記している点を付言しておく。
当落の予想と結果
各候補の当落については概ね正確に予想することができた。
高橋(国民民主)を落選と予想したが当選、東野(無所属)を当選と予想したが落選となった点が相違点である。
票数の予想と結果
一方で、票数の予想についてはいくつか大きな相違点があった。
まず、大阪維新の会の各候補の得票数の増減が想定よりも激しかったこと。
想定より1,000票以上上下にずれた候補者が複数おり、候補者ごとの差が開いている点を予想できなかった。
また、自民党の当選3候補が大きく票を伸ばしたこと。
軒並み2,000票以上を獲得し10位以内での当選を果たし、15位以下での当選と見積もった筆者の予想とは大きく離れた。
その他公明党や日本共産党、参政党や無所属の候補については概ね予想と同程度の票数となった。
【総括と今後の展開】
選挙結果の総括
以上を総合し、選挙結果を総括する。
大阪維新の会は得票数を前回よりも減らしつつも、党派別では最多の得票を得て、市議会第一勢力を確保した。
(選挙前:5 → 選挙後:7)
自民党は得票を25%増やしたが、票割りに失敗し、議席を減らした。
(選挙前:4 → 選挙後:3)
公明党は現職3名全員を当選させた。
(選挙前:3 → 選挙後:3)
共産党は得票を減らし、1議席の減となった。
(選挙前:3 → 選挙後:2)
国民民主党は現有議席を維持した。
(選挙前:1 → 選挙後:1)
れいわ新選組は初の議席獲得を果たした。
(選挙前:0 → 選挙後:1)
参政党も同じく初の議席獲得を果たした。
(選挙前:0 → 選挙後:1)
無所属は現職4名に加え、1名の新人が当選した。
(選挙前:6 → 選挙後:5)
今後の議会の見通し
改選後初めての議会は8月30日に告示され、9月6日に初日を迎える。
それまでには各会派の構成、各議員の政治的立場もおおよそ見えてくるはずだ。ここでは簡単に各勢力の動向と立場を予想しておきたい。
8月25日に市議選と合わせて行われた市長選において、維新公認の現職が敗れ、新人の原田氏が当選したことから、政権の交代が起こる形となった。
これまで市政与党の立場であった大阪維新の会はその座を離れることとなるが、もともと原田氏の掲げた政策は比較的現職のものと近く、180度の転換が行われるわけではないため、中立的立場にとどまるであろう。
市長選にて背後から原田氏を支援した自民・公明・箕面政友会の各勢力が市政与党として政策推進の中心的役割を担うこととなる。
日本共産党・市民派クラブは市長交代後も引き続き市政野党となるだろう。
小中一貫教育の推進・市民病院の建て替えなどの問題でもともとその他の勢力とは隔たりが大きく、協力的関係にはならなそうだ。
れいわ新選組も選挙期間中の主張などを鑑みるとこの立場となるだろう。
今のところ読めないのが参政党と無所属新人の浦川の動きだ。
参政党は自民党と会派を結成し、与党となる可能性がある一方、独自路線を選択し中立的立場で活動することも考えられる。
浦川は比較的市民派クラブと近いと考えられるが、会派を組むかどうかは未知数だ。
箕面市は住みやすい街としての評価を長年維持する一方、豊中市や吹田市といった自治体と比べて大阪都心から遠く、人を惹きつけ続けるには魅力的な街づくりが不可欠だ。
新しい議会構成のもと、どのような政策が選択され、議論されるか、今後も注目していきたい。