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2024年衆議院議員選挙大阪8区(豊中市・池田市)の結果総括

年をまたいでしまったが、昨年10月27日に投開票が行われた第50回衆議院議員選挙大阪第8区の結果を事前の展望との差異を含めて総括する。


【選挙の概要】

選挙の摘要

大阪8区では定数1に対して5名の候補者が出馬した。
今回の衆議院議員選挙は10月15日(火)に公示、10月27日(日)に投開票が行われ、投票率は全国で53.85%(前回-2.08%)であった。

なお、大阪8区のうち、豊中市では55.90%(前回-3.85%)、池田市では56.42%(前回-2.48%)となった。

選挙の背景や主な争点は選挙前の展望の記事に記したほか、報道各紙においても詳述されているため、概要のみの確認にとどめる。
全国的には、2021年以降政権を維持した岸田自民党が政治資金パーティー収入の不記載(いわゆる裏金)、旧統一教会との関係、物価高などによる生活苦といったマイナス材料によって9月に退陣を余儀なくされ、総裁選で新たに選出された石破首相が信任を得られるかが最大の争点であった。

地域的なトピックとしては大阪国際空港の利活用や、大阪都構想を含む都市統治構造の改革、そして10年以上続く維新府政と密接なつながりをもつ維新国会議員団を引き続き大阪から送り出すかが問われた。

【各候補の戦評】

ここからは、各候補者の結果を簡単に振り返りたい。
なお、正式な結果は豊中市の選挙管理委員会のHP及び池田市の選挙管理委員会のHPを参照されたい。
今回の選挙の小選挙区の得票順に記載している。(敬称略)

第50回衆議院議員選挙大阪第8区結果(小選挙区)

① うるま譲司(漆間譲司)日本維新の会・50歳

大阪維新の会からは現職のうるまが出馬した。
うるまは50歳、慶大商卒。
銀行勤務ののち、大阪府議3期を務め、前回21年の衆院選で初当選を果たした。
84,503票を獲得し、2期続けて小選挙区での当選を果たした。

② こうらい啓一郎(高麗啓一郎)自由民主党・44歳

自民党からは新人のこうらいが出馬した。
高麗は44歳、早大政経卒。
三井住友銀行にて勤務後、練馬区議1期、豊中市議2期を経て前回2021年の衆院選直前に前職の大塚高司が不出馬を表明したことによって、急遽出馬した。
66,582票を獲得したが小選挙区での当選は叶わず、比例票でも次点となり、初当選はならなかった。

③ 平岩まさき(平岩征樹)国民民主党・44歳

国民民主党からは新人の平岩が出馬した。
平岩は44歳、同志社大を卒業後、京大公共政策大学院を出る。
衆院議員(長安豊)秘書を務めたのち、貝塚市議3期。
40,552票を得て3位に入り、比例近畿ブロックにて復活当選を果たした。

④ 平川せつよ(平川節代)日本共産党・76歳

共産党からは新人の平川が出馬した。
平川は76歳、大教大卒。長年教員を務めた。
小選挙区では24,277票を得て4位、比例重複立候補は行っておらず、そのまま落選となった。

⑤ 谷浩一郎 参政党・43歳

参政党からは新人の谷が出馬した。
谷は43歳、大阪音大卒。オペラ歌手として活動する。
2023年の豊中市議選にも出馬したが、落選している。
谷は15,272票を得て5位、比例近畿ブロックにも重複立候補していたが、当選はならず。

【戦前の予想精度の評価】

今後の精度向上のため、戦前の予想との誤差も確認しておく。
なお、筆者は本記事及び事前の展望の執筆にあたって、定量的な調査等を行っているわけではないため、「予測」ではなく「予想」として記している点を付言しておく。

当落の予想と結果

小選挙区での漆間当選については的中、また各候補の順位についても的中となったが、比例の動向を見誤った。
比例復活を果たすと予想した高麗は比例近畿ブロックの次点となり、落選した。
一方、平岩は国民民主党への追い風もあり、小選挙区で40,000票余りを得たうえで、比例近畿ブロックで国民民主党が2議席を獲得したことから、当選を果たした。
投開票直前での自民党のさらなる失速と、国民民主党へ吹く風の強さを予想に反映できなかった形となった。

第50回衆議院議員選挙大阪第8区(小選挙区)予想と結果

票数の予想と結果

票数の予想については、漆間・高麗については誤差5,000票以内と、概ね正確に予想できたと考える。
一方で、平岩については候補者の知名度、大阪における国民民主党のプレゼンスが大きいものではないことから、得票数を少なく見積もっていたが、予想の2倍以上の得票と大きく乖離することとなった。
共産党・参政党に関しては事前の予想より健闘した印象だ。
またそもそも、総得票数を過少に見積もっていたため、票の合計が予想を上回っている点は反省しなければならない。

【結果総括】

選挙結果の総括

以上を総合し、選挙結果を総括する。
大阪8区における比例票も合わせて確認していく。

第50回衆議院議員選挙大阪第8区(比例近畿ブロック)結果

維新は当初、大阪8区を含め府内の選挙区で接戦となっている区があると報じられたが、結果としては府内19選挙区すべてで小選挙区当選を果たし、強さを見せつけた。
大阪8区では、豊中市単独の選挙区であった前回選挙における得票数を下回りつつも、豊中市・池田市それぞれでトップを得票を獲得し、自民党候補に比例復活を許さない安定した戦いを見せた。
日本維新の会の大阪8区における得票数は64,000票余りにとどまっており、漆間が小選挙区で獲得した84,000票と乖離が生じている。
維新支持層のみならず、比例は異なる政党に投票した有権者からも一定の支持を得て小選挙区で当選を果たしたことが見て取れる。
党勢による得票のみならず、こうした他党支持者からも票を得られるような個人の人柄を活かした選挙ができるのは強い候補の証だ。
大阪8区はこれまで国政のいわゆる「風」に影響されたような選挙結果が多く見られたが、2021、2024の選挙を経て、漆間が個人として一定の地盤を築いたと言ってよい状況となったのではないだろうか。

一方で、自民党にとっては厳しい選挙結果となった。
前回の総選挙直前に前任の支部長であった大塚隆司が急遽立候補を取りやめ、ピンチヒッターとして準備が整わないままに出馬した高麗にとっては、今回の選挙がじっくりと準備をしたうえで臨める初めての選挙であった。
しかし、蓋を開けてみれば、見た目上の得票数は増えたものの、大阪8区のエリア変更(豊中市単独→豊中市+池田市)による増であり、地盤としてきたはずの豊中市では得票数減(53,877票→52,051票)となるなど、惨憺たる結果となった。
この票の伸び悩みが響き、比例近畿ブロックでは次点で涙を飲むこととなった。
国会開会期間中、東京に張り付かなければならない現職に比べ、新人あるいは落選中の候補は地元活動に専念することができるため、ある種優位な立場にあるとも言える。
実際、高麗も駅立ちや地域まわりなどの活動を精力的に行ってきた印象であったが、結果には結びつかなかった格好だ。
自民党支持層が相対的に少ないと想定される大阪8区においては、自民党(公明党)支持層のみならず、他党支持者からもその人柄や政策などで個人として得票を集める努力が求められる。
漆間が維新の比例票+20,000票を小選挙区で獲得したのに対し、高麗は小選挙区において自民の比例票+公明の比例票とほぼ同数の票しか得ることができなかった。
所属政党・友党以外からの個別の支持を集めることができたかが勝敗の分かれ目となったと言えそうだ。

比例得票数3位の立憲民主党は今回は大阪8区に候補を擁立しておらず、支持層がどのような行動を取ったかは小選挙区の結果を左右した可能性がある。
最も近いのは国民民主党、次いで日本共産党と考えられるが、小選挙区と比例の結果を鑑みるに、日本維新の会の候補にも一定の票が流れたと考えられる点は興味深い。
連合・労組系の票の多くは国民民主党の候補に流れたとみられ、比例復活ではあるが、民主系12年ぶりの議席獲得につながった。

日本共産党は、比例得票14,000票余りから小選挙区では10,000票程度を上積みした。
支持層が近く、かつ小選挙区に候補を擁立していない立憲民主党、れいわ新選組、社民党から一定の票が流れたとみられる。

参政党に関連する票の動向は図りかねる部分があるが、比例で10,000票、小選挙区で15,000票余りを獲得したことを考えると、一定選挙区内で党と候補者の浸透が進んだとみられ、今後の地方選などでの動向に注目していく必要がある。

結びに

今回の選挙は15年ぶりに自民党・公明党の連立与党の議席が過半数を割る歴史的な結果となった。
全国的には国民民主党・立憲民主党といった旧民主系の政党が伸長する一方で、日本維新の会が改選前の議席を割り込む地殻変動が起きた。
しかし、大阪府では前回の対自民15戦全勝に続き、全19小選挙区で勝利を果たすなど、盤石ぶりに磨きがかかっているようにも思え、この地域の特殊性を認識せずにはいられない。

不安定な少数与党のもと、3月の通常予算審議、7月の参議院議員選挙といったターニングポイントにおいて再び衆議院議員選挙が行われることも十分考えられる。
今回当選した候補はもとより、落選した候補も引き続き、緊張感をもって日々の活動を続けることを強いられるだろう。
各候補が次にどのようなステージを目指すのか注目していきたい。

また、今回の選挙の開票時には、豊中市において不在者投票にて投票された525票が職員のミスによって開票されず、無効となる事案が発生した。
不在者投票が無効となるミス 大阪 豊中市と富田林市|NHK 関西のニュース
民主主義の根幹たる選挙の執行においては、言うまでもなく厳密な事務の実施が求められ、ミスを犯した職員と選挙管理委員会には猛省を促したい。
今回は無効となった票によって小選挙区・比例の結果が覆る事態は想定されないため、選挙結果自体への影響はなかったものの、得票のスケールが小さくなる地方選挙においては大きなインパクトを持つ票数であり、看過することはできない。
選挙事務に携わる職員の意識の向上と、ミスを防止するための組織的なルールの徹底が急務だろう。

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