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2025年茨木市議会議員選挙の展望

真冬の選挙は候補者にとっても有権者にとっても非常に厳しいものとなる。
本稿では、1月19日に告示された2025年茨木市議会議員選挙の情勢を展望する。


【選挙前議会の動向】

議会構成

選挙前時点での茨木市議会は、定数28人に対して欠員1(24年10月の衆議院議員選挙大阪9区に萩原佳市議(当時)が出馬したため)となっており、現職27名が在職中である。
茨木市長は福岡洋一、非維新の市長として現在3期目を務める。
現在の会派構成としては、大阪維新の会、公明党、自由民主党・絆、日本共産党、茨木みらいの会の計6会派が存在し、このうち公明党、自由民主党・絆、茨木みらいの会が市長与党、大阪維新の会は中立的立場、日本共産党が市長野党的立場として活動している。
このほか、会派に所属していない議員(政党無所属とは異なる)が5名いる。

【選挙の背景と争点】

選挙の概要と当選ライン

今回の選挙には定数28に対して39名の候補者が出馬した。
この数字は過去4回の選挙(09年:36名、13年:39名、17年:43名、21年:38名)と概ね同程度となっており、当選ラインとなる票数は1,700票前後となることが見込まれる。

選挙の背景

茨木市議選は、統一地方選の周期からおよそ1年9か月ほど後ろにずれており、統一地方選で現れた傾向に加えて、それ以降の国や地方の政治状況が色濃く反映されるだろう。

統一地方選で目立った傾向としては、政権与党である自民党の退潮と、当時野党第一党を目標としていた維新の会の躍進であった。
特に大阪ではその傾向が著しく、各地で軒なみ維新は大きく議席を伸ばし、自民党は議席を減らすこととなった。
また、議員の若返りも進んだ。
20代・30代の議員が数多く誕生し、期数を重ねたベテラン議員が落選、あるいは出馬断念に追い込まれるなど世代交代が起こった。

以降、1年9か月が過ぎ、政治状況も随分様変わりしたように思える。
24年10月には衆議院議員選挙が実施され、最新の政党支持の状況や勢いが可視化されることとなった。
政権与党へ吹き続けた逆風はやむことはなく、ついには自公連立与党の15年ぶり過半数割れという地殻変動をもたらした。
国民民主党は前回21年の衆院選時の影の薄さが嘘のように話題を集め、議席4倍という躍進を遂げた。
日本維新の会は対照的に全国各地で議席を減らした。大阪府下では19小選挙区全勝という盤石ぶりを見せたものの、全国政党への一歩を踏み出した状態から大阪のローカル与党へと後退した印象だ。
立憲民主党は与党や維新への期待感のなさから、消極的に支持を集めた印象を受ける。議席増こそ果たしたものの、前回21年選挙時から得票数自体は伸びておらず、積極的に選ばれる政党としての地力が今後試される。

衆院選後もなおくすぶり続ける、「政治とカネ」の問題は、茨木市議選においてもボディブローのように自民党の体力を削るだろう。
石破新政権もいわゆるハネムーン期間とされる政権成立100日を過ぎ、徐々にその成果が問われる時期を迎える。
昨年臨時国会での補正予算審議や、これから始まる通常国会での新年度予算審議では少数与党という宿痾によって野党にその主導権を渡すこととなり、明るい材料は乏しいのが現状だ。
一方で維新の会も開幕を間近に控えた大阪・関西万博をめぐる批判を正面から受ける立場となり、守勢に回っているのが現状だ。
箕面市長選での現職落選や兵庫県知事選をめぐる対応のまずさ、さらには岸和田市長の不祥事をめぐる対応など、地盤の大阪近辺でも不協和音が続いており、統一地方選時の勢いは失われて久しい。

そうした勢力から流出する票をどの候補が獲得するか、要注目だ。
また、昨年元日に発生した能登半島地震などによる防災意識の高まり、昨今の闇バイトや凶悪犯罪の発生を受けた体感治安の悪化への対応といった点も注目する要素となりうる。

ローカルなトピックとしては、若干本筋からは異なるが、昨年の衆議院議員選挙大阪9区の維新公認候補者をめぐる騒動が記憶に新しいか。
維新の看板を掲げて初めて総選挙を戦った2012年以降、茨木市を含む大阪9区を活動の中心に据え、全国でも名を知られるようになっていた足立康史衆院議員(当時)が、昨年4月の東京15区補選における維新陣営の公選法違反疑惑による内紛をめぐり、6か月の党員資格停止処分を受けた。
党員資格停止処分は昨年6月に示され、そのあおりを受ける形で足立氏は10月の衆院選に無所属での出馬を模索していたが、党中央は大阪9区に維新公認候補として萩原佳茨木市議(当時)の擁立を発表、分裂含みの構図となった。
当初は維新公認候補と戦う姿勢を示していた足立氏であったが、公示直前に出馬を断念、9区の維新候補は萩原氏に一本化されることとなった。

衆院選では萩原氏が自民党の新人候補を下し、大阪9区の維新の議席は維持されることとなったものの、今回の騒動は9区内の維新陣営に大きな禍根を残した。
同じく9区内の箕面市では、維新市議7人中2人が離党、会派も分裂となった。
茨木市議や茨木市選出の府議の間でも足立派、反足立派の軋轢が表面化するなど、選挙を目前にした挙党体制構築には程遠い状況だ。
こうしたマイナスイメージや、党内での路線対立といった分かりにくいゴタゴタに対して、有権者はどのように審判を下すか、注目である。

市政のトピックとしては、中心市街地活性化の今後の方向性が焦点となるか。
茨木市はJR茨木駅と阪急茨木市駅の間のおよそ1kmのエリアを市の中心市街地と位置づけ、これまで様々なテコ入れを行ってきた。
その最たるものが、23年11月に旧市民会館の跡地にオープンした文化・子育て複合施設「おにクル」だ。
図書館や市民活動センター、子育て支援拠点を一つの建物にまとめ、複合化することで恒常的なにぎわいを中心市街地に創出し、活性化につなげることを狙いとしている。
実際におにクル前の広場、及び施設内部では連日多くの催し物が開かれ、活気あるエリアとなっており、市外からも多くの視察が来るなど、現状では市の施策は順調に進んでいるように思える。
一方で、市議の中には防災拠点としての機能強化や、おにクルを中心とした面的な市街地活性化策の推進などさらなる取り組みを求める声もあり、市民が今後中心市街地にどのような将来を見出すかが注目だ。

このほか、北摂各市で競うように打ち出されている子育て・教育支援策や、北部彩都・山間部のテコ入れ、中心部での過密・周辺部での不便地解消といった交通対策も注目を集める点となりそうだ。

選挙の争点

① 中心市街地の活性化策の今後の展開
おにクルをそのコアとして進められてきた中心市街地の活性化について、今後どのように進めていくべきか、各候補が示すビジョンに注目したい。

② 市の子育て・教育施策への評価
近隣他自治体が進める積極的な子育て支援策に対応する形で、茨木市も伴走型相談支援や、「一人も見捨てへん教育」を掲げた教育支援など様々な施策の展開を行っている。
子育て世代を支援していくべきだという方向性は、社会全体での合意事項となりつつある中で、どのような強度で、あるいはどのセクションから取り組んでいくのかといった優先順位が争点となる。
各候補の活発な議論に期待したい。

③ 北部彩都・山間部のテコ入れ
市の北部に位置するニュータウン彩都は、計画人口50,000人で箕面市・茨木市にまたがって計画されたが、大阪モノレール公園文化都市線の延伸が2019年に頓挫するなど、特に茨木市側の中部・東部地区の開発が迷走状態にある。
彩都開発は主として府の事業となるが、茨木市としてどのようなビジョンを描いていくのか各候補の展望を聞きたい。
またダムパークいばきたがオープンするなど、山間部地域の活性化も動き出している。市北部として彩都・山間部を面的にとらえ、テコ入れを図っていく必要がある。

④ 交通対策(過密・不便地解消)
市域は南北に長く、地域によって交通に関わる課題は異なっている。
市中心部(茨木駅~市役所・おにクル~茨木市駅及びその周辺)では、交通が集中し、慢性的な渋滞が問題となっていることから、公共交通機関への転移と流入削減が課題である。
一方で、市北部の山間部や、南部の駅から遠い地域では、病院やスーパー、駅など生活拠点へのアクセスをいかに確保していくかが課題だ。
公共交通の支援やコミュニティバスの充実など、創意工夫が求められる。

⑤ 茨木市政への向き合い方・国政への評価
個別の争点の他、非維新首長が担う現在の市政への評価、現在の国政の状況も有権者の判断材料となりそうだ。

【各党派・候補者の戦前評】

ここからは、各党派の候補者それぞれに焦点を当てて展望したい。
前回選挙の党派別得票順に、国政政党を党派として記載した。(敬称略)

① 大阪維新の会

大阪維新の会からは現職の円藤、長谷川、岩本、川口に加えて、新人の栗尾、浅野、岡本が出馬する。
円藤こずえ(54歳)は20年の補選で初当選、21年の一般選挙で再選を果たし、現在2期4年。
前述の足立康史の秘書を務めたことを契機として政治に関わりを持ち、生まれ育ちが茨木市という来歴から、地元密着の活動を行っている。
前回は5位。維新の女性候補の比率は前回と変わらず、円藤は今回も有利に戦いを進めることができそうだ。
長谷川浩(62歳)は12年の補選で初当選後、おおさか維新の会茨木結成メンバーとして維新に参画し、以後4期13年を務める。
24年には市議会議長を務め、維新議員団の重鎮として手腕を振るってきた。
岩本守(60歳)は日本共産党において議員活動をはじめ、のちに維新に転向したという稀な経歴を持つ。
09年の市議選までは共産党公認であったものの、13年は無所属で出馬、落選。その後16年の補選にて再び無所属で返り咲きを果たしたのち、17年からは維新公認候補として活動している。
川口元気(44歳)は24年春の補選にて初当選を果たした。
1年足らずでの再びの選挙となり、新人でもない、かといってアピールできるほどの実績を積むには短すぎる、難しい戦いとなりそうだ。
新人の栗尾憲(41歳)は甲南大を卒業後、運送会社に勤める。
浅野ゆう子(51歳)は大阪女学院短期大学を卒業後、会社員。足立康史前衆院議員の秘書も務めた。
岡本みな(53歳)は府立福井高校を卒業。音楽教室を主宰するとともに維新政治塾にて学ぶ。防災・減災や文化芸術の振興を前面に押し出す。
また、TikTokを通じて家族ぐるみの制作活動を行うなど、ユニークな取り組みを行っている。

大阪維新の会は7名を擁立。これは党派別で最多となる。
今期の維新茨木市議団は議員の出入りが非常に激しくなっていることが特徴だ。
前回21年の選挙にて当選した議員6名のうち、萩原佳は24年の衆院選出馬のため辞職、島田あきこは22年7月に体調不良のため辞職、大野ちかこは23年4月に府議選出馬のため辞職した。
また、24年4月には補選にて公認候補の川口元気が当選。
これによって現在現職は4名となっている。
今回は新人3名の擁立となったが、前述のとおり現有勢力からの上積みを狙ったというよりは、欠けた戦力の補充という意味合いが強いものとなっている。
前回選挙の直後は6名の当選により、公明党と並ぶ議会第一党の勢力を確保していたが、頭数の減によって主導権を明け渡している状態だ。
公認候補7名全員を当選させることができれば、単独第一党が確保できる。維新としては是が非でも全員の当選を果たし、思わぬ形での失地を回復したいところだろう。

しかし前途は多難だと言える。
前回選挙においては、当選者6名が10位以内と上位当選を果たしたが、現職1名の落選者を出す形となった。
政党別の得票数は他党を圧倒しているにもかかわらず、議席数では後塵を拝するというケースは維新としては珍しくない。
一定の組織票を有し、地域や候補の特性に応じて票割を行うことによって効率的な議員の送り込みを実現している他党に比べて、維新はある意味多くの死票を生みつつも、その得票数の多さでカバーしているような状態だ。
今回も同様の事象が発生する懸念は拭えず、全員の当選は困難、1人落選と見るのが私の予想だ。

他にも懸念点はある。
まずは先の衆院選から尾を引く、足立派と反足立派の対立による内部の不協和音だ。内部での対立は有権者に対してガバナンス面での不安を抱かせると同時に、実務的にも各候補の支援体制の構築に支障をきたすなど、百害あって一利なしだ。
候補の中には足立康史の秘書を務めるなど関係の深い者がいる一方で、足立氏に反旗を翻す形で衆院選に出馬し当選した萩原氏や、府議の大野氏など、反足立と目される関係者も茨木支部に同居している状態だ。
選挙に向けて一枚岩になれるかが維新としての勝敗を左右するだろう。
また、維新の候補としては現職・新人ともに若くなく、活動量がさほど多くないのも気にかかる。
候補の年齢は40代2人、50代3人、60代2人と20~30代の候補はおらず、若さと活動量の多さを武器にして戦うような候補を求める有権者への訴求が弱いのではないかと懸念する。

国政を含む維新全体としても、大阪・関西万博をめぐる運営費の増や会場の安全性、校外学習の円滑な実施に対する懸念や、兵庫県・岸和田市など首長をめぐるトラブルへの対応など、風当たりが強い状態が続いている。

それでも、初期の維新結党から10年以上が経過し、その支持層は岩盤と呼べるものとなりつつある。
維新のこれまでの府及び府下各自治体における取組みを評価する声も依然として多く、全体としての得票数は減となるだろうが党派別では最多の得票を獲得することができるだろう。
しかしながら今回は前述の懸念点等から、全員の当選は困難、6議席にとどまるのではないかと考える。

② 公明党

公明党からは現職の大村、松本、青木が出馬する。
また、新人の和田、角田、北原が出馬する。
大村卓司(63歳)は3期12年を務め、4回目の選挙に臨む。
摂津高を卒業後、専門学校を出て保険会社代理店等に務めた。
松本泰典(66歳)は創価大卒後、医療機関に勤務。
市議4期16年を務める。その経歴を生かし、医療福祉行政の推進に力を入れる。
青木順子(61歳)は4期16年。長崎県立大卒。市西部を活動エリアとする。
新人の和田美紀(56歳)は佐賀県出身、介護職を長年務めた。
角田博司(44歳)は福岡県出身、久留米大卒。
市東部を活動エリアとする。
北原正(53歳)は福岡県出身、久留米大卒。
工場を経営する。

公明党は現職3名、新人3名の計6名を擁立した。
地方選挙における公明党は「全員当選」を金科玉条とし、落ちる選挙はしないのが特徴だ。
統一地方選後半戦(市町村議選)では、公認候補者1,213名のうち1,203名が当選を果たし、結束力の固さを示した。
ただ、上記の落選10名は00年以降では最多の数字となった。
支持母体である創価学会信徒の高齢化による地力の衰えに加えて、「宗教と政治」の問題が公明党を直撃している。
近年の多党化や都市部での地方選挙への立候補者の増加傾向も、公明党の強みである地域ごとの票割りと最大効率での議員の送り込みを難しくしている側面がある。
そうした懸念点はあるが、今回の茨木市議選では特段の心配は不要だろう。
現職3名はこれまで築いた支持基盤を固め、確実に当選ラインを越えてくることが見込まれる。また、新人3名もそれぞれ今回引退する現職3名の地盤を引き継ぐ形での出馬となり、安定した戦いとなりそうだ。
いずれの候補も2,000票超を確保し、全員当選を果たすと展望している。
余談だが、今回の公明党候補は九州北部に縁のある候補が多い。
偶然か、あるいは地縁も含めての候補選定となったのか、内情が気になるところではある。

③ 自由民主党

自民党からは現職の下野、上田、永田、塚が出馬する。
下野巌(73歳)は08年の市議補選にて初当選、以降5期17年を務める。
市北部に安定した地盤を持ち、過去の選挙ではいずれも3,000票以上を獲得し、前回21年の選挙時にも自民党に逆風が吹く中3位で当選している。
今回も堅い戦いが見込めそうだ。
上田光夫(53歳)は市議5期。龍谷大中退。09年の市議選にて再当選を果たしたのち、以降4期連続で当選している。
永田真樹(46歳)は同志社大を卒業後、京大院へ進む。21年の市議選では無所属(自民推薦)で出馬し当選を果たした。今回は2回目の選挙となる。
塚理(48歳)は龍谷大、大阪市立大院卒。
07年に茨木市議を辞職し、府議選に出馬したものの落選した。その後09年に茨木市議に復帰した。
09年時は無所属であったものの、13年はみんなの党、17年にはおおさか維新の会から出馬と所属政党を変えており、21年には無所属で出馬・当選ののち、自民党会派に入会した。今回は公認候補としての出馬となる。

自民党は前回の公認3人から1名増の4名を擁立した。
前回の市議選においては、現職のみの公認候補3名のうち、2名当選、1名落選と言う惨憺たる結果に終わった。
一方で、選挙後に無所属議員と連合し会派を結成することで、会派としての議会内勢力は選挙前時点で6名と公明党に並んで第一会派の地位を得ている。

今回は、前回も公認候補であった下野、上田に加えて、前回は無所属で出馬していた永田、塚を公認候補とし、手堅く議席を確保したい構えだ。
しかし、目論見通りの結果が出せるかというと不透明感が漂う。
衆院選で吹き荒れた自民党への逆風は、石破内閣の支持率がいまだ30%台であるとの報道が多く、上向いていない状況を見ると収まったとは言い難い。
むしろ少数与党での政権運営を強いられる中で、野党に主導権を握られ、思うようなアピールができず苦しんでいると言える。

また、前回無所属で出馬した2候補への票がどう出るかも注目したい。
無所属候補にはその人柄や経歴を契機とした票のほか、既存政党から距離を置いた、是々非々の議会活動を望む有権者の票も集まる傾向にある。
今回、自民党公認候補として出馬することで、そうした票は逸走することが想定される中で、その失地を補って余りあるだけの票を得られるかが焦点だ。
永田は公認候補中唯一の女性候補、塚はこれまで多くの政党を渡り歩いてきた中でも勝ち上がってきたしたたかさを活かし、議席を守りたい。

下野、上田はこれまで培ってきた地盤を活かした戦いとなるが、伝統的な地域組織や村社会の構成員は軒並み高齢化しつつあり、それだけでは心もとないのが現状だ。
若年層や新住民など、新たな票を得られるかが焦点となる。

自民党全体としては、今回の結果は厳しいものになると考える。
3議席の獲得に留まると予想する。

④ 日本共産党

共産党からは現職の大嶺(さやか)と朝田、新人の大嶺(学)が出馬する。
大嶺さやか(52歳)は市議3期、府立福井高卒。
公共交通の充実などを訴えてきた。
朝田充(60歳)は市議7期。龍谷大卒。
大嶺学(59歳)はこれまで補選・一般選挙あわせて4回の出馬経験があり、今回5回目の挑戦となる。

共産党は現職の畑中が引退し、大嶺(学)を新たに擁立した。
国・地方問わず、共産党は「宗教と政治」の問題や、しんぶん赤旗での報道を契機として明らかになった政治資金パーティーをめぐる裏金問題、大阪・関西万博をめぐる建設・運営費用の問題などで自民党・維新の会などを責め立ててきたが、24年10月の衆院選でも議席を減らすなど、そうした動きが党勢拡大にはつながっていないのが現状だ。
今回の選挙においても、そうした苦境を反映し、共産党にとっては厳しい選挙になりそうだ。
前回2,300票余りを獲得し、安定した戦いを続けている大嶺(さやか)は今回も手堅く当選が見込まれる一方、大嶺(学)、朝田は当選ラインを争う戦いとなると展望する。
現有3議席を死守できるか注目だが、2議席にとどまると予想する。

⑤ 立憲民主党

立憲民主党からは、現職の西本、新人の仁木が出馬する。
西本睦子(55歳)は市議1期。20年の補選で落選後、21年に初当選。
大阪学院短大卒後、党職員を務めた。
仁木和芳(51歳)は大阪商業大卒、稲見哲男元衆院議員の秘書を務めた。
11年の府議選に此花区から民主党公認で出馬するも敗北。
自身の境遇を背景に、障害者・高齢者の負担軽減などを訴える。
今回は無所属・稲葉の後継としての出馬となる。

立憲民主党は現職1名、新人1名を擁立した。
前回は西本ひとりの擁立であり、新人を擁立し、2議席目を狙う。
立憲民主党は国政では野党第一党でありながら、大阪府下では維新に主役の座を譲り、存在感を示すことができていない。
先の衆院選においても、党全体では98議席から148議席へと伸長を見せた一方で、府下では小選挙区当選0、比例当選の議員2名のみがいるという形になっている。
また、茨木市議会では無所属議員の中に、リベラル~左派の指向を持つ議員が複数おり、そうした議員と票を奪い合う形になるであろうことも積極的な擁立を躊躇する理由のひとつであろう。
しかしながら、先の衆院選において、党の市内での比例票は14,000票を超えるなど、一定の支持基盤を見出すことができることから、2名の当選は十分可能だと考える。

⑥ 国民民主党

国民民主党から新人の桜井が出馬する。
桜井淳貴(32歳)は立命館大卒。関西電力に勤務し、のちに茨木市に移住。
新人候補では最年少となる。

国民民主党は前回、公認候補を擁立せず、連合大阪推薦の無所属候補の応援を行う形となった。
今回は公認候補ひとりを擁立し、着実に議席の獲得を狙う。
国民民主党は先の衆院選で台風の目となり、議席4倍の大躍進を遂げた。
また選挙後も与党との政策協議の過程で多くの露出を得て、政党支持率はいずれの調査も10%前後の数字を維持するなど、その勢いはいまだ衰えてはいない。
衆院選での市内の比例票は11,000票余りであり、着実に支持層を固めることで、トップ当選も見えてくると予想する。
懸念点としては、候補者が市内出身ではなく地縁が薄いこと、代表の玉木の女性問題に一時党が揺れたように、党中央での思わぬニュースによって浮動的な票が逸走する可能性がぬぐえないという点か。
党の施策と市の課題を結び付け、「ふわっとした民意」を味方につけたい。

⑦ れいわ新選組

れいわ新選組からは新人の森本が出馬する。
森本れいこ(43歳)はシリアから茨木市に移住したという異色の経歴を持つ。
学童保育指導員を長く務めた経験から、包摂社会の実現を訴える。

れいわ新選組ははじめて茨木市議選に公認候補を擁立した。
れいわ新選組は豊中市・東大阪市に続いて、昨年夏の箕面市議選でも公認候補を当選枠内に滑り込ませており、府内でのさらなる勢力拡大を狙う。
党が国政政党となってから5年が経過し、全国に一定の支持層を確立するに至った。
24年の衆院選では、前回の衆院選から市内の比例票を倍増させ6,800票余りを獲得、また全国でも9議席を獲得するなど、極左の支持層を着実につかんでいる。市議会議員1名を誕生させる地力は十分に有していると言える。

懸念点は、言葉を選ばずに言えば候補者の色物感が強い点だ。
シリアにいたという経験から鑑みると、理解できるものではあるが、ヒジャブを巻き駅頭に立つ姿はそうした背景を知らない一般市民からは奇異に映ると言わざるを得ない。
支持を得るにあたって、そのような先入観の払拭が必要となる点はハンデとなるだろう。
しかしながら、党が5年以上をかけて培ってきた基礎体力、また候補者も10年以上茨木市に住み様々な地域活動などを行ってきたという実績を考えると、下位とはなるだろうが当選は可能ではないかと予想する。

⑧ 参政党

参政党からは新人の片岡が出馬する。
片岡真(33歳)は阪大法卒。その後メーカーに就職。
その経歴から党の期待も厚く、これまで参院選、滋賀県議選、衆院選に次々と出馬した。

参政党も茨木市議選に初めて公認候補を送り込む。
参政党は元吹田市議の神谷宗幣が代表を務めており、いわば発祥の地の近隣である北摂各市で積極的に候補擁立を行っている。
高槻市、吹田市、箕面市などでは実際に議席を獲得し、着実に勢力を拡大させてきた。
24年の衆院選では、市内の比例票5,600票余りを獲得しており、れいわ新選組同様、議席獲得の可能性は十分ありうる。
また、候補者の経歴も良い。出生から市内で生まれ育ち、大阪大学の法学部を出たという経歴は、地元の市議会議員としては適任と言えるだろう。

懸念としては、党に帰すべき内容となる。
日本保守党などの新興勢力の勃興や、党内部での路線対立によって参政党に対するイメージがやや悪化しているきらいがある。
しかしながら、党関係者の活動への熱量は高く、2,500票前後を得て、議席獲得を果たすと予想する。

⑨ 無所属

最後に政党公認を持たない無所属候補を俯瞰する。
なお、無所属候補の中には政党推薦や支援を得ている候補がいる可能性があることに留意されたい。確認が取れた情報については合わせて記していく。

現職として、米川、辰見、西野、安孫子、山下、山本、福丸が出馬する。桂は出馬せず、市議を引退する模様だ。
米川勝利(38歳)は市議3期。同志社大卒。
現在は無会派であるが、過去にはリベラル系の会派に属していた。
辰見直子(50歳)は1期4年、京都女子大卒。
国際支援に長く取り組み、アジアを渡り歩いた経験を持つ。
21年の市議選に元市議で父の辰見登氏の後継として出馬、当選を果たした。
保守系無所属を掲げる一方で、政策面ではセーフティネットの構築などリベラルな内容が目立つ。
西野貴治(31歳)は1期1年。早大卒。自民党推薦。
24年の補選にて初当選。
地元のサッカークラブ、ガンバ大阪などでプロサッカー選手として所属していた経験から、スポーツを活かしたまちづくりを掲げる。
無所属、自民党推薦という立ち位置であるが、自民党府議や支部長が頻繁に応援に駆け付けるなど、非常に深い関係であることがうかがえる。
立候補者中最年少の候補となる。
安孫子浩子(63歳)は5期17年。08年の補選にて民主党公認候補として初当選。13年からは政党無所属で活動。
現在も立民・国民の候補と同様、連合大阪の推薦を受ける。
山下慶喜(72歳)は市議12期。また、茨木市長選、大阪府議選への出馬歴もあり(いずれも落選)、多くの政治経験を有する。同志社大卒。
当初は社会党公認候補として市議を務め、社会党が実質的に解党となった後は新社会党に所属。党HP上は新社会党の公認となっている。
山本由子(70歳)は市議1期。佛教大卒、長く教員を務めた。
17年、20年補選での落選を経て21年に初当選。
護憲を掲げ、維新政治の批判に力を入れる。
福丸孝之(53歳)は市議4期。神戸高専卒後、保険会社に勤務。
和装で街頭活動や公務などを行っている点が特徴的と言える。
市西部を中心に活動する。
初当選以来無所属での活動を継続しているが、自民党との関係が深く、会派を共にするほか、衆院選などでの応援も行っている。

また、新人として佐藤、矢島、丸吉、敷知、竹居、大西、松元が出馬する。
佐藤めぐみ(34歳)は、日本福祉大卒後、教員として働く。
無所属新人では唯一の女性候補となる。
自ら子育て中であることから、子育て・教育政策の充実を掲げ支持を訴える。
矢島秀和(44歳)は、追大卒。同門の大塚高司衆院議員(当時)の秘書を務めた。
17年、21年の市議選に出馬し、いずれも落選。
20年ごろまでは自民党に所属しての活動であったが、以後は無縁の模様。
丸吉孝文(40歳)は、政治カメラマンを名乗る。
これまで八代市、西東京市、江東区など各地の選挙に出馬しており、NHK党、政治家女子48党の公認を得ていた。
昨年の箕面市議選にも出馬、落選している。
茨木市にはこれまで縁がなく、真摯に取り組もうという姿勢は率直に言って感じられない。
敷知龍一(63歳)は、関大卒。
16年市議補選、17年、21年の市議選に出馬し、いずれも落選。
17年の市議選時には自民党推薦で出馬。今回は出馬の動きが直前となり、準備不足が否めない。
竹居かずき(41歳)は、経歴不明。
交通網の充実などを掲げる。
大西ゆづる(49歳)は、阪大卒。市職員を長年務めた。
デジタル化の推進や福祉・介護の充実を掲げる。
職員出身ではあるが、自治労等の組織の応援はうかがえない。
松元龍也(55歳)は、金沢大法卒。
産官学の連携強化等を訴える。

無所属では計14名が出馬し、これは前回の18名から4名減となった。
自民党系・民主党系の議員がそれぞれの公認を得ての出馬となったため、総数としては減少している。
茨木市議会では、右派・左派の無所属議員ともにバランスよく存在している。
多少乱暴な区分だが、辰見・西野・福丸が右派、米川・安孫子・山下・山本・桂・稲葉が左派となっている。
このうち、桂は理由は不明ながら今回の選挙には不出馬、稲葉は立民の仁木を後継として引退し、ニッチに一定の空きができる形となる。
有権者の中には、既存政党への不信感や、党派にとらわれない意思決定ができるという点から無所属候補を中心に投票先を探すという層もおり、そうした層をどの候補が取り込み当選を果たすか注目だ。

現職の米川・辰見・安孫子・山下は確固とした地盤を築いており、今回も当選は揺るがないだろう。
西野も昨年の補選での初当選組であるが、元ガンバ大阪という経歴、候補者中最年少という若さから、有利に戦うことができるのではないか。
山本は支持層の高齢化によって基礎票は減少していることが考えられるものの、桂を支持していた層を取り込むことで当選を果たすのではないかと予想する。
福丸は厳しいと予想する。自民党に逆風が吹くなか、これまで自民党との密接な関係を打ち出していたことはマイナスに作用するとともに、無所属としての出馬であるため党としてのバックアップを受けられるわけでもない。
これまでの選挙でも当選ラインからやや上での当選が多かったが、今回は底が割れる形となってしまうと考える。

新人候補はいずれも厳しい。
元来無所属候補に投票する層は、特に政党選挙化が進んだ都市部では限られる上に、今回の新人候補はいずれも準備不足と言わざるを得ない。
最も善戦する可能性があるのは、佐藤・矢島だろう。
佐藤は子育て世代の女性として、党派性にとらわれず多くの市民にアプローチできる可能性がある。
矢島は過去2回の選挙戦を経て、経験は十分だ。駅立ちを繰り返し、浸透を図ってきた。
また、敷知は過去3回出馬しており、当時の支持者が再び投票する可能性はある。
丸吉、竹居、大西、松元はいずれも泡沫候補と見るしかない。
特に丸吉は昨年の箕面市議選にも出馬しており、全国様々な自治体で出馬を繰り返すその様は政治ゴロそのものであり、糾弾に値する。
現職6名の当選と予想する。

【総合評価】

選挙結果の予想

以上を総合し、市議選の結果を展望する。
大阪維新の会は現職4名+新人2名の計6名当選、公明党と並ぶ議会第一党となる。
【大阪維新の会】選挙前:4 → 選挙後:6
自民党は現職3名の当選にとどまるだろう。
【自民党】選挙前:4 → 選挙後:3
公明党は現職3名+新人3名の全員が当選する。
【公明党】選挙前:6→ 選挙後:6
共産党は現職1名+新人1名の当選となり、1議席の減となる。
【日本共産党】選挙前:3 → 選挙後:2
立憲民主党は現職1名+新人1名、全員の当選を果たし、議席を増やす。
【立憲民主党】選挙前:1→選挙後:2
国民民主党は新たに議席を獲得する。
【国民民主党】選挙前:0→ 選挙後:1
れいわ新選組は初の議席獲得を果たすと考える。
【れいわ新選組】選挙前:0 → 選挙後:1
参政党も同じく初の議席獲得を果たすと考える。
【参政党】選挙前:0 → 選挙後:1
無所属は現職6名の当選を予想する。
【政党無所属】選挙前:9 → 選挙後:6

投票日は1月26日(日)、午後8時まで市内各地の投票所で投票が行われる。
茨木市民の選択に注目するとともに、結果が出揃ったのちに改めて総括を行いたい。

#茨木市議選

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