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【イベントレポート】とよなか地域創生塾第8期 DAY1キックオフ!開校式開催

「とよなか地域創生塾第8期」が今年度も開校されました。今期の塾生はなんと42名。実は、数日前から台風の影響で天候が危ぶまれていましたが、当日は無事に現地開催ができました。これも、今回関わるみなさんの“晴れパワー”が集結したおかげですね。

さて、このレポートでは、9月1日(日)に開催された、記念すべきDAY1の「キックオフ!開校式」の様子をお届けします。少しでも、まちで何かしてみたい・まちに関わってみたいという想いがある方に、ぜひ読んでいただけたらいいなと思います。 

文:多久島まい(たくしま・まい) 

とよなか地域創生塾とは?

詳しい内容や今後のことについては公式Facebookページをご覧ください。

とよなか地域創生塾とは、大阪府北部に位置する豊中のまちをフィールドとして、「地域」を「創」り「生」かしていくための考え方と仲間が得られる、豊中市主催の連続講座(ゼミナール)です。各回では、様々な分野で活躍するローカルプレイヤーから地域・社会活動を実践する上でのヒントをインプット。加えて、塾生同士のワークや最終発表に向けた実践など、アウトプットの要素も盛り込まれたプログラムとなっています。今期は昨年度実施した第7期に引き続き、「株式会社ここにある」(以下、ここにある)が企画運営をお手伝いしており、さらにアップデートした講座を企画中です。

今期も2つのコースに分かれて実施しますが、第7期とは異なる2コースが登場。

その名も…

 A「『わたし』からはじめるまちづくりコース」
B「目の前の人からはじめる課題解決コース」

何かアクションを起こすとき、自分の中にある楽しいこと・できることをきっかけにする場合もあれば、課題・ニーズをきっかけにする場合もあると思います。そこで、塾生のみなさんが自分に合う・関心のあるコースを選択できるように、上記の2コースを設定。みなさんが地域でアクションを起こすとしたら、何がきっかけになるでしょうか? 

ちなみに、とよなか地域創生塾第7期のレポートは過去のnoteにも掲載されているので、前回の様子も知りたい!という方は、ぜひこちらも覗いてみてくださいね。

ワクワクと少しの緊張感で包まれた、キックオフ!開校式

いよいよ迎えたDAY1。豊中市の庄内コラボセンター「ショコラ」(以下、ショコラ)1階の広場を会場に、キックオフ!開校式が行われました。ショコラについての詳細はこちらから。

受付に並ぶ塾生たちの姿。中には浴衣で参加する塾生も、、!

そんなショコラに集まってきたのは、10代の高校生から60代以上の方まで年齢層も職業もバラバラのみなさん。ワクワクした表情と少し緊張感をまといながら、ついに開校式の始まりです!

まず初めに、塾長こと橋本慶(はしもと・けい)さん(庄内コラボセンター長)からご挨拶をいただきました。「天候が心配な中で無事開催できたことを喜ぶとともに、バラエティ豊かなプロフィールの塾生のみなさん同士が、楽しく、和気あいあいとやっていけたら!」と一言。

橋本 慶(はしもと・けい)氏
南部ブラザーズの兄で、豊中市役所勤務。生まれも育ちも庄内。庄内歴50年のエリート。誰よりも庄内のことを愛し、庄内のことを知り尽くしている。 

庄内歴50年を誇る橋本さん自身、豊中庄内を中心にまちに関わる活動をされており、豊中のまちを盛り上げている第一人者です。実は、橋本さんは今回DAY2のゲストとしても登壇される予定。どのようなお話が聞けるのか、次回も楽しみですね。 

今回の聞き手は、ここにある代表の藤本遼(ふじもと・りょう)さんと佐藤瞳(さとう・ひとみ)さん。DAY1では、実際に地域・社会活動をされている3名をゲストに迎え、ローカルでの活動のお話や活動をスタートしたきっかけなどをお聞きしていきます! 

ゲストの方のお話の前に、まずは塾生のみなさんの自己紹介から。 

初めまして同士の方も多い中、積極的に会話をしている塾生のみなさん。

 筆者もみなさんの自己紹介タイムにお邪魔してみると…あるグループでは、「将来大学で地域創生について学びたいので、そのための経験値を上げたい」と話す高校2年生や、川西市でまちづくり関係の事業に携わっているという社会人の方。もうじき還暦を迎える起業家の方に、第7期生のOBの方の姿が。一つのグループだけでも、これだけ様々な人たちが集まっていることが分かりますね。 

他の塾生の方を見てみても、とよなか地域創生塾に参加したきっかけや背景が色々あって面白いなと感じます。 

「来年、本格的に活動していく予定の事業がある。地域に住む方にとって現実的に喜ばれるサービスを考え、実行していきたい」

「現在の職業であるコンサルという立場だけでなく、自分が地域の1プレーヤーとしても本格的に軸足を置いていきたい」

もうすでにご自身で何か活動をされている方、今の仕事にもやもやがある方、これからの将来を考えている方など…それぞれに想いのあるみなさんの力が集まれば、もっと面白い化学反応が生まれそうな気がします。 

そしていよいよDAY1ゲストの方のお話へ!

同じ思いを持つ人がいると気づいたから、話すことができるようになった。

 今回のゲストお一人目は、一般社団法人wreath代表理事の下村真代(しもむら・まよ)さん。下村さんは、大学卒業後、教育系の公益財団法人にて子どもの発達支援に携わったことで社会的価値の発信に関心を持ち、総合広告会社のマーケティング部署に転職されました。現在は休職中で、セルフヘルプグループのプラットフォームづくりに携わっています。

下村 真代(しもむら・まよ)氏
一般社団法人wreath代表理事。大学卒業後、教育系の公益財団法人にて子どもの発達支援に携わる。そこで社会的価値の発信に関心を持ち、総合広告会社に転職。現在はマーケティング関連の部署に所属し、戦略策定などの業務を行う。20代後半に自身がセルフヘルプグループを必要としそこで助けられた経験から、セルフヘルプグループを必要としたときにつながれる仕組みづくりができたらと会社を休職し法人を設立。参加したい人と開催したい人をつなぐセルフヘルプグループのプラットフォームづくりを行っている。 みなさんは、セルフヘルプグループという言葉を聞いたことがありますか?セルフヘルプグループは「共通の悩みを持った当事者の集まり」と言われていて、自助グループ、ピアサポートグループ、当事者会、家族会、患者会と表現されることも。下村さんは、悩みや生きづらさを抱えた方がセルフヘルプグループを必要としたときにつながれるように、セルフヘルプグループのプラットフォームをつくる活動をしています。

下村さんがこの活動を始められた背景にはご家族のことが関係しています。家庭の問題ということで、周りと比べたり打ち明けたりすることが難しい中、それが「社会の問題」でもあるということに気付けなかったり、辛い経験をしたりしたこともあったのだとか。 

そんなときに「セルフヘルプグループ」に関するチラシを見つけて、同じ思いをする人が地域にいることを知ったのです。

「同じように悩む地域の人たちと出会ったことで、少しずつ人にも話せるようになった」

家庭の中にある問題は、周りから見えにくくなる構造にあります。同時に、自分自身も周りのことが見えなくなることも。だからこそ、セルフヘルプグループを広げていく下村さんの活動には問題を抱えている人・問題を抱えていることに気付けていない人が少しずつ救われるきっかけになるという大きな価値があると感じます。

大切なことだけど、儲からない

一方で、様々な壁にぶつかることもあったと言います。特に「大切なことだけど、儲からない」という問題は事業を成り立たせるためには大きな課題でした。そんな中、支援してくれる一般財団法人との出会いや、クラウドファンディングで知らない人からの思いがけない支援を転機に、乗り越えることができたのだそうです。下村さんは、今でも大変な部分はあるけれど、下村さんの活動を大切なことだと信じて支えてくれる人たちのおかげで、今も活動を実践できています。

今回参加した方々の中には、同じような問題や問題意識を抱えている方がいたのではないでしょうか。その身近な課題感がどのようにして実践につながったのかを、今回下村さんのお話から考えることができたのではないかと思います。 

体現している思想をそのまんま掲げ体現している会社がなかったから、自分で始めました

ゲストのお二人目は、一般社団法人Deep Care Lab(以下、DCL)代表理事・公共とデザイン共同代表の川地真史(かわち・まさふみ)さんです。フィンランドでCoDesignの修士課程を卒業後、フィンランドにて行政との協働やソーシャルイノベーションを研究した後、現在はエコロジーや人類学、未来倫理などを横断し、あらゆるいのちへの想像力とケアの実践を探求されています。

川地 真史(かわち・まさふみ)氏
一般社団法人Deep Care Lab代表理事 / 公共とデザイン共同代表。Aalto大学CoDesign修士課程卒。フィンランドにて行政との協働やソーシャルイノベーションを研究の後、現在はエコロジーや人類学、未来倫理などを横断し、あらゆるいのちへの想像力とケアの実践を探求。渋谷区のラボ設立伴走、産むを問い直すデザインリサーチ「産まみ(む)めも」、應典院「あそびの精舎」構想/運営、「多種とケア展」開催などプロジェクト多数。論考に『マルチスピーシーズとの協働デザインとケア』(思想2022年10月号)、共著に『クリエイティブデモクラシー』(BNN出版)。應典院ディレクター。

川地さんが代表理事を務めるDCLには、身近な人々のみならず、祖先や未来に生きる子ども、自然など、あらゆる生き物への思いやりを実践するという想いがあります。そこに必要なのは想像力で、それは目に見えないものを見る、まだ存在しない未来を描く力だと。

DCLが誕生する背景には、川地さんの海外での経験が関係しています。学部時代のスウェーデンでの留学や社会人としての経験を経る中で、経済的価値と社会的価値の対立を実感することがあったのだそう。未来の豊かさの仕組みづくりをデザインする会社を立ち上げたいと、”逃げる形”でフィンランドに渡りました。フィンランドの自然や考え方に触れる中で、人だけでなく、森やお日様など色々な蠢き(うごめき)によって生かされている感覚、楽さに気づいて、「もっと寄りかかって生きていいんだ」と思うようになりました。

「ここで得た感覚、思想を体現したい」

しかし、そう思っていた当時、そのままを体現している会社が見つからなかったことから、ご自身で会社を立ち上げることになりました。それが、DCLの始まりです。 

自然とも過去未来ともつながる実感を得て、ケアしながら鮮やかに生きられる世界を目指していく、という視点は地域づくりとも共通していると感じます。地域での活動にも、目に見えないものを見る発想と根気が必要ですし、ケアする対象は人だけではありません。地域創生塾の塾生が今後活動を始めるにあたって、大きな枠組みで考えたときに、根本的で重要な部分に気付かされたように思います。そして川地さんからは、「今ないものを自分自身で始めてみること」の勇気ももらえたような気がしますね。

雑談したいなぁと思っていたら、たこやき屋さんと教師を両立していました!

最後は、「たこやき先生」の愛称で親しまれる川人佑太(かわひと・ゆうた)さん。実は『子どもは無料のたこやき屋さん』を営まれています。午前中は通信制高校の数学教師、午後はたこやき屋さんという一見異色なコラボレーションの川人さんですが、「たこやき先生」の愛称で親しまれるのも納得、とてもエネルギッシュでチャーミングな方です。

川人 佑太(かわひと・ゆうた)氏
たこやき先生。『子どもは無料のたこやき屋さん』を運営。午前中は通信制高校の数学教師をしているため、SNSでは「たこやき先生」と名乗っている。"子どもがタダ"に関して説明すると、オンライン上のnoteというプラットフォームで月額サポーターを募集しており、その売上を子どもたちのたこやき代にしている。これまで3年間で50000個以上のたこやきをのべ10000人以上の子どもたちに配った。各種メディアからの取材もあり、現在は600名を超える方が100円たこやき公式サポーターとしてサブスク契約をしてくれている。YouTube、Instagramの取材動画は500万以上再生。

驚くことに、なんと川人さんは「たこやき屋さんにも教師にもなりたいと思ったことは一度もない」のだそう。 

元々教師として働いていたところ、コロナ禍で様々な制限がかかる中「雑談したいなぁ」と思い、始まったのがこのたこやき屋さん。当時、川人さんが住むまちには友達がいない上に、子どもたちが集まれる場所もなかったのだとか。そこで、雑談できる場所をつくるとしたら何がいいだろうと考えた結果…

「よし、たこやき屋さんをしよう!」となったのです。 

川人さんは、たこやき屋さんのことを「ローカルで雑談する場」だと話します。地域に紐づく文脈に依存していて、広くみんなに理解されるものではなく、目的のないもの、必ずしも統一的で綺麗に整理されたものではない。グローバルである「コンビニ」ではない空間をつくりたかったと。 

川人さんはご自身の活動に対して、「経済合理性はない!」と言い切ります。でも、現代にはインターネットがあるから何とかなると思っていると。実際に、川人さんのたこやき屋さんを成り立たせているのは、川人さんのnoteのサポーターたちで、月額100円からサポートしてもらっているのだそう。ちなみに、サポーターたちには利益という利益は発生しません。「おもろいからやる。子どもたちにたこやき食べてほしいからやる」そういうスタンスの方々がサポーターになってたこやき先生の活動を支えているのです。川人さんがつくった、というより自然に形づくられた仕組みは、いつの間にか、たこやき先生のことを知らなかった遠くの人たちにも知られています。 

川人さんのお話を聞いていると、何かに課題を感じていてそれを解決するために活動するのではなく、社会のために行動するのでもなく、「ただ楽しいから」や「雑談したいから」というすごくシンプルな動機で実践されていると感じました。活動するきっかけや目的は様々であると思いますが、自分自身がやっていて楽しいと思うこと、おもろいやんと思えることであるかという観点もとても大事だと、川人さんのお話から気付くことができました。

三者三様の活動があることを知れたDAY1 

今回のゲスト3名の地域・社会活動もきっかけや発想にはグラデーションがあって、みなさんの活動を実践例の一つとしてまずは知るということに意味があるのかなと思います。

ゲストのお話を聞いた塾生の感想には、 

「みなさん小さい行動をたくさんしているのが印象的」「行動を開示していくことが大切だと感じた」「どうやるかより、大事にしようとしていたら形になっていたのだと思った」

 大きなインパクトを感じたり、共感したり、自分のことを見つめ直したりと、それぞれで感じることがあって、感想を共有し、自分なりにお話を解釈されていました。ぜひ、今後のアクションに繋げていってほしいですね。

地域創生についてどう思っていますか

ゲストのお話が終わってからは、藤本さん・佐藤さんを聞き手に迎え、塾生からの質問を交えながらトークするパートへ。

興味深い質問がたくさん出た中で筆者が特に印象に残ったのが、「地域創生についてどう思っていますか」という質問。

トークセッションで、聞き手や塾生からの質問に答えるゲストの3名。

下村さん:社会的に省かれてしまいそうな人をいかに取り込んで地域で生活していくかということだと思います。

川地さん:「日常」があるところにある種の地域が存在していると感じますが、日常の中で顔が見える関係として繋がっていないこともある。日々の中で日常的に、自然の生態系も含めた多様なつながりを実感できるようにすることが、自分にとっての地域を作るということだと思います。

川人さん:地域創生をやりたいとは思っていないですね。たこやきを焼いていたら、地域の人が集まってくる。太陽があって、そこに人が集まる。たこやきを無限に配っていたら、子どもたちが集まって、雑談できる場がある。あり続けるだけでいい。

3名の回答を聞いた藤本さんは、「地方創生と言う言葉には、地方をどうするか、産業・商いをどうするかという意味だけでなく、地域社会の中に今まで登場しえなかった人たちがどういうふうに登場できるのか、人間がどう生きていくのかという意味も含まれると思う。今日3名の話を聞いて、自分自身がどういうスタンスで地域や未来に繋げていきたいのかを問われたような気がした。」と話します。

聞き手の藤本さん、佐藤さんも真剣にゲストと対話していました。

3名とも活動の種類や感じている問題意識などは様々で、対象としている人が悩みを抱える人だったり、あらゆる自然だったり、子どもたちだったりと異なっている部分はありますが、結果としてそれらの人たちが個々を尊重した上で包摂していくことに繋がっている点は、共通する部分なのかなと思いました。

地域創生についてどう思うかという問いをはじめ、今回考えさせられた様々な問いを踏まえて、今後の地域創生塾に参加していけたらと思います!

Youはなにしに地域創成塾へ?

後半では、グループになって①どうしてこのプログラムに参加したか、②半年間で何をやってみたいか・何を学びたいか、③半年後の自分はどうなっていそうか・どうなっていたいかについて話すワークを行いました。ゲストの話を聞いて、さらに地域創生塾へのモチベーションが高まった塾生たち。今後のプログラムも楽しみだと、生き生きとした表情で語っていました。

後半のグループワーク。塾生同士で感想を共有したり、今後の意気込みを話したりする場面も。

キックオフ!開校式を終えて

4時間にわたり開催されたDAY1のキックオフ!開校式は、惜しまれながらも無事に終了。ゲストのお話や聞き手とのセッションパート、塾生同士の交流、全てにおいて内容の濃い時間になったのではないでしょうか。  

今回を通して、何かを始めるのに明確な原体験があってもなくても良くて、これから見つけていけばいいのかもしれないということに気づいた人も多かったのではないでしょうか。藤本さんや橋本さんがおっしゃっているように、今後のとよなか地域創生塾を通して、100人と出会う中で、目の前の人の課題や困りごとからきっかけが得られることもあるかもしれません。DAY2以降、実際にまちに出ていく中でさらに見つかるかもしれないと期待しつつ、次回を楽しみに待ちたいと思います。 

開校式の後に開催された懇親会でも、みなさん積極的に、本編では話せなかった人やもっと話したい人のところに行って話す姿が印象的でした。この熱量の高さとユニークな人が集結しているところが「とよなか地域創生塾」の面白いところだと改めて思います。

DAY2は、ショコラを飛び出して、豊中市内を北部と南部に分かれてまち歩きをします。まち歩きの様子も含め、今後も引き続き「とよなか地域創生塾」の様子を発信していきますので、ぜひチェックしてみてくださいね! 

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