カメラの価値をもう一度考えよう.X100と過ごした9ヶ月.
今所有しているカメラは,何でもやってくれるα7R3,レフとペンタックスの色,実は優秀な高感度ノイズ耐性を楽しむK-1.ツーリング時に首にいつもかかっているE-M5II(E-M5IIは梅田の八百富で2万でした…ボロボロですがオリンパスやしまだ壊れないでしょう!また書きます),たりないところが愛おしいdp1 Quattro,そして,富士フイルムのX100(初代)です.
このカメラ,私大好きなんです.αやK-1は極論売却してニコンやパナやキヤノンに買い換えようかと考えるときがなきにしもあらずなんですが,X100とdp1 Quattroは手放す気になれない.もちろん後継機は気になりますがね!今回はX100について綴ってみましょう.
富士フイルムは,きっと日本の湿度を撮るためにカメラを開発しているではないかと思っています.欧州の写真を見ると,どうも光が硬質な気がするんです.気のせいでしょうか?プラハにいって石畳を撮ってきました!とかいう写真は,パキッとした明瞭な写真が多くないですか?ほら,DP3Merrillのカタログのような感じです.下にDP3Merrillのカタログのリンクを貼っておきますね.
もちろんユーロピアンな射すような光もいいのだけど,日本ってもっとしっとりした光で包まれた国だと思うんです.その点富士フイルムは,光の湿度まで写してくれるようでお気に入りです.このメリットに隠された性能は,フィルムをブラッシュアップした色表現,光をふわりと受け止めるレンズにあります.
富士フイルムの魅力は豊かな色表現を挙げずして語れません.フィルムシミュレーションを使用すれば,富士フイルムの伝説的なフィルムたちの色味を再現できます,とはいっても,X100に搭載されているのはPROVIA,Velvia,ASTIAと白黒フイルムくらい.あたらしいモデルならクラシックネガとかも選べるんでしたっけ?私の好みはVelviaとASTIA.Velviaの極彩色は自然写真にピッタリですし,スナップでも非現実性をプラスしてくれます.ASTIAもいいフィルム(モード?)です.ASTIAの魅力は,決して彩度が低いわけではないんだけど,どこか柔らかみを感じる写りにあります.おそらく富士の技術者はこのフィルムをポートレート用に開発されたのだと思いますが,街撮りにもピッタリです.どこか儚さが感じられて,刹那的な写りになります.
こちらはVelviaで撮影.この鮮やかな緑は,ペンタックスのそれとも全く違う魅力があります.
Velviaにて撮影.フィルムのVelviaよりもフィルムシミュレーションのVelviaのほうがコントラストは低めで,扱いやすいように思います.まるで水彩画のような瑞々しさを感じさせられる絵ですね.
X100に搭載されているレンズは,決して高性能ではありません.SIGMAのArtのように開放からピリリ解像するような代物ではないという意味です.おそらく殆どのAPS-C,MFTミラーレス用のパンケーキレンズよりも解像性能は低いでしょう.特に絞り開放時.しかし,それらのシステムでこんな写真が撮れるでしょうか?E-M5II+Panasonic 14mm F2では,ここまで光の回りのいい写真は生まれなかったのではないかと勘ぐってしまいます.(そもそもE-M5IIなら手ブレはなかったでしょうしね!)
このレンズの真の魅力は,開放時での光の表現にあります.絞りを開けると,まるで光がフレームを満たすような写真が撮れてしまいます.もちろん被写体が潰れてしまうようなことはありません.
正直X100のセンサーでは解像度云々を評価するのはナンセンスでしょう.どうせ1230万画素ですし,もちろん絞ってしまえば不足は感じません.
私的リフレクションを美しく捉えるカメラ第一位はdp1Quattroなのだけど,X100にも違った魅力があります.このカメラはガラスをちょっと緑めに写してくれる気がするんです.dpなら,まるで反射も異世界として存在しているのではないかと感じるくらいのリアリティでリフレクションを写してくれるのだけど,X100は,あくまでも反射は反射,現実は現実と分けて描写してくれるように思います.
やっぱり4対3は好きです.早く中版カメラを買わないと,次の富士のカメラはGFXですかね.αを購入するときに,もう少し頑張ったらGFXを買えるな…と頭をよぎったのですが,レンズが高いんですよね中版って.学生にはむりや.しかし,中版となるとライカ,ハッセル,富士,ペンタックスの4択ですよね.フェーズワンは無いでしょう… ペンタックスの中版といえば,最近リコー公式ストアから645Zが消えたとか.ペンタックスさん,これから645はどうするんでしょう.
ここでX100の残念な場所を一つ.本体の作りがちょっと甘いです.なんだろう,プラスチッキーで安っぽいんです…最新モデルのX100Vはきっちり作り込まれていましたから,やっぱりこういう意見が多かったのかな! 一番困るのが,本体の一番いいところに鎮座している露出補正ダイヤルがめちゃくちゃ回りやすいんです.かばんや手と擦れるとすぐに回ってしまう.そのまま気づかずに撮影してしまうと,こんなふうに露出オーバーになったりしてしまいます.いや自分で撮る前にチェックせえ!って話なのですが.でも,この写真そこまで悪くないでしょう?ハイライト粘ってくれたX100に拍手!
福岡市の公共交通機関は,主に福岡市地下鉄,西鉄天神大牟田線,主に福岡都市圏の東側と九大伊都キャンパス周辺を走るJR九州,そしてどこでもつかまる西鉄バスがあります.福岡は京都並のバス社会です.もしかすると京都市よりもバスが多いかも?地下鉄も便利なのですが,福岡はコンパクトかつ人口集中が他の都市よりもマシですから,バスが重宝されています.福岡の御堂筋的な立ち位置である”渡辺通り”をバイクで走っていると,西鉄バスに包囲されることもしばしば…
このカメラ,意外と高感度も頑張ってくれます.もちろんフルサイズセンサーを搭載しているカメラほどは期待できませんが,腐ってもAPS-Cセンサー搭載機ですから.写りは下手な一番レフよりもいいんです.レンズ交換式カメラよりもレンズフィックスカメラのほうが設計上有利でしょうしね.
めっちゃこの写真好きなんです.自分で言うのもなんですが….
いや,女性の身長ってそんなに重要でしょうかね.身長が高ければスタイルよく見えるし,低くても男性みたいに欠点にならないじゃないですか,
当然のことながら,このカメラに手ブレ補正はついていません.夜スナップをやるなら筋肉手ブレ補正を使うしかない.GR3とかには手ブレ補正がついているのにも関わらず,初代X100はおろかX100Vにも手ブレ補正はついていませんから,ここは負けています.まあ35mmですから,そこまで心配することはありません.ただ,こんなふうにバスを流したいとかをやりだすと大変です.
私です.友達に撮ってもらいました.私,手がきれいと褒められることが多いんですが,どうですか??(鬱陶しい)
うーんこの美しいボケ味.ペンタックスのリミテッドレンズにも通じるいいレンズですね.
ビニール傘が好きです.雨の日の透明感には透明なものがきっと合うんです.防水ではありませんから,雨がカメラにかからないように気をつけて撮りましょう.
最高のスナップカメラってどんなでしょうね.よくスナップシューターとして挙げられるのはGRですが,私はまだ28mmと和解しきれていませんし….28mmは苦手なんです.24や35のほうが好き.きっとGRの開発者の中にも私と同じく28mmアンチがいらっしゃって,その方が40mmのGRを開発なさったのではないかと推察しています.
αやK-1でもスナップを撮れないわけではないのですが,どうしてもレンズ交換式のフルサイズのカメラとなると,街で振り回していたら浮くんです.レンズは比較的小さいものを選んでいるし,縦グリップを装備しているわけでもないのですが,どうしても怖がられてしまいます.αを警固公園で使っていたら,警備員さんに話しかけられてしまいましたし…. となると,X100やdp1Quattro,GRといったAPS-Cコンデジが最適解でしょうか.いや,フルサイズコンデジがありましたね.いつかはライカQシリーズを使いたいなあ.しかしあれも28mmですから,早く28mmと和解しないと.
わたす!です.
まともな服を持っていなくて,冬場はいつもこのコートを着てごまかしています.そろそろ限界大学生に認定されても仕方ない.
X100の不満点をもう一つ!レスポンスがとっても悪いです.ファイル書き込み中はOVF/EVF切り替えやISO変更ができないんですが,この書き込み時間が長い.正直連写は使い物にならなくて,できれば単写,JPEGのみで使いたいカメラです.でも,それでもいいかなって思えてしまうのがこのカメラの不思議なところ.きっとこのカメラはフイルムカメラを現代技術で復元したらどうなるかな?っていう考えで使うカメラなんです.そう自分に言い聞かせましょう.フィルムコンパクトカメラは連写なんてできないし,書き込み時間(巻き上げ時間)も必要ですよね?なら,X100も同様なわけです.
福岡から関西に行くときには,大抵夜行バスに乗ることにしています.夜行バスってのは最強の移動形態なんですよ.だって夜乗って朝着くんですよ?無駄がないじゃないですか.大好きです.しかし,福岡→神戸のバスは,神戸に早めに着いてしまうバスが多いんですよね.この写真は,そんなわけで神戸の早朝を写した写真.早く快活にいかなきゃ…っていうシチュエーションです.神戸の北側も随分きれいになったとはいえ,福岡にはあまりない甲南チケットや下町感のある占いの看板がいい味を出してくれています.
X100はどういう思想で作られたカメラなんでしょうか.旅カメラ?いや,旅ならズームが使えるLX100のほうが使いやすいような気がします.私は単焦点が好きだから,これでいいですがね.少し発売当時のインタビューを読んでいたら,こんな文言を見つけました.
なるほど,X100は写真機の過去を見つめ,道具としてのカメラはどうあるべきかをイメージした結果生まれたカメラだったんですね.富士フイルムは写真の歴史を作ってきたメーカーですから,写真を,カメラを守り抜くという気概があるのかもしれません.そういえば,シグマも"写真を撮る道具としてのカメラ"を自問していた気がします.
X100が発売された2011年といえば,OlympusのPENを持ち歩く観光客が日本にあふれていた時期ではないでしょうか.オリンパスは,確かにレンズ交換式カメラを一般のものにしました.しかし,PENは後にスマートフォンのカメラに駆逐されかけることになります(オリンパスファンの方すいません.私もオリンパスのカメラは大好きですよ!).富士フイルムもシグマにはこれからカメラを持ち歩く人は減るだろうという危惧があったのでしょうし,それは2022年から考察しても,全く間違いではありません.その危惧から生まれたカメラが,X100であり,DPシリーズなのではないでしょうか.スマホとは全然違う写真が撮れる,魅力のあるカメラを作ってやろうと.証拠と言ってはなんですが,X100もdp1Quattroも,スマホカメラとは全く違う絵が得られるカメラです.どちらもデジタル感の無い絵を描くとでもいいましょうか.
X100は,先述した通り"日本の柔らかな光を受け止めるカメラ”.端的に申し上げるなら,軟水のような甘さが魅力なんです.この甘さというのは解像しないという意味ではなくて,うーん,日常をちょっとだけ美化するような遊びがあるという表現がいいかもしれません.フィルム写真はどこか温かみがありますよね.X100はデジタルであれを表現していると言っていい.
dp1Quattroは,光を律儀にすべて受け止めて,描き分けるカメラ.真面目な分ちょっと使いにくいけど,光の由来がわかってしまうような硬質な写りをします.まるで硬水のよう.しかし,面白いことにこちらもデジタルくささが無いんです.X100とdpは全くアプローチが違うカメラなんだけど,どちらもフィルムライクな写りが楽しめる.だから好きです.
この写真は彼女が撮ったもの.実は,X100は彼女とおそろいのカメラです.彼女とおそろいっていうのは,恋愛初心者の私にはハードルが高いものです.遊園地で同じカチューシャをつけるのなんて絶対無理だろうし,同じような服をコーディネートするのもはずかしい.おそろいのストラップってのも,どこにつける…?ってお話ですよね.それに,こういうものは実用性があったほうが,ものにも彼女との関係性にも愛着が生まれるように思うんです.というわけで,カメラです.パソコンやイヤホンより良いでしょう?
しかしこのカメラはちょっと気難しいので,彼女が使いこなせるか心配だったんです.フォーカスは遅いわ抜けるわ,EVF/OVF切り替えに良さを見出してくれるかもわからんわで,もう大変です.でも,どうやら最近は随分慣れたみたい.えらい!
結婚するときには,X100の後継機を交換しましょうか.それとも,ライカがいいかな.それまでに,こいつと一緒にいろんな写真を撮らなければなりません.彼女とも,X100ともです.
こういう写真はモノクロにするか迷います.富士フィルムのモノクロ写真も評判がいいのだけれど,X100はX-Trans CMOSではなく普通のベイヤーセンサーですから,あまりモノクロに強いという印象はありません.やはり私の手持ちの中でのモノクロ最強機はdp1で間違いありません.
X-Trans CMOSのノイズ耐性はフルサイズ並!とか言われていますが,あれは本当なのでしょうか.わからん.
Velviaの色味がよくわかるかと思います.この温かい色味,いいですよね.しかし風景をやるならdp1Qやα7Riii,K-1を持ち出したいという欲が抑えられません…高画素機で撮った葉は格別なんですよね.
万能すぎるカメラを持ってしまうと,他のカメラを持ち出す機会がなくなってしまうというのは贅沢な悩みなように思います.というのも,α7Riiiを導入してから迷ったらこれを選んでしまう自分がいるんです.もし,α7Riiiよりも万能型のカメラ,例えばEOS R6やα7IV,LUMIX S5を持ってしまったらこれ以上にそればかり使ってしまうような気がします.そりゃあ,どう考えてもK-1よりもαのほうがAF早いし,X100よりαのほうが連写速いし,dpよりαのほうが書き込み速いですから.αは恐ろしい野郎です.
しかしながら,カメラというものには各々明確な哲学があって,それぞれにしか出せない雰囲気があるはずです.ペンタックスの緑,富士のふんわりとした光,シグマの硬質な解像度.これらの哲学がぴったりハマった写真は,もうどの他のカメラでも追いつけないような素晴らしいものに見えます.尖ったカメラは何台あってもいいですよね!
Lightroomで現像.このカメラの写真をRAW現像するのは野暮な気もするのですが,白飛びを救い出そうとするとRAWをいじるしかありません.しかしあまりにもハイライトを復元すると,絵が絵画的に寄ってしまうんですよね.このカメラのRAWは特にそうで,悩みどころです.
そうそう,最近LightroomからCaptureOneに乗り換えたんです.学割を適用したらCaptureOneのほうが安くて,ついにAdobe税を脱税してやろうってわけです.マスク機能の使いやすさや自動補正など,利便性や操作性はLightroomに勝てませんが,絵はCaptureOneのほうが好みです.特にソニーのRAWとは相性が良いようで,αユーザーの方にはおすすめできます.
もう福岡に移住して1年半になりますが,関西の新快速電車はとっても羨ましい!新快速というのは,滋賀〜京都〜大阪〜神戸〜姫路を特急並のスピードで結ぶ普通電車のことで,大阪から神戸まで20分ちょっとでついてしまう恐ろしい電車です.三宮は好きな街です.
最後にAstiaの作例を一つ.おそらくAstiaのハズなんだけど…多分…違ったらごめんなさい.
Velviaの絵は彩度とコントラストが高くて,一種の非日常性を感じます.あれ?俺が生きていた世界ってこんなにきれいだったっけ,彩りで満ちていたっけとハッとさせられる,壊してはいけない理想郷を写したような絵です.一方Astiaというと,先述の通りどこか儚さが感じられる写り.Velviaで撮ると,こんな世界がずっと続いてくれればいいのになあと思い出にふけるような写真が出来上がるのですが,Astiaで撮った写真を見ると寂しくなる.この写真を撮ったときに存在していた世界はこの瞬間にしか存在していなくて,もう戻ることはできないのだという刹那的な感情さえ感じます.
カメラがあれば記録を残せるから,本当に彼女とおそろいのカメラを持ってよかった.私,記憶力が乏しくて.彼女とこの時この場所でこんなことしたな,といった記憶が欠落してしまうんです.でも,写真があったら思い出せる.おぼろげな記憶がVelviaで写されていたら,ああそうだ,このときは彼女のここにわくわくして,とてもいい思いをさせてもらったんだった,といったふうに感じるし,Astiaで写されていると,お互いの寂しい記憶が蘇ってくるような気がします.この写真は,お別れの時間が近いときに撮った写真だから,おそらくAstiaのイメージと合致しているはずですが.
カメラは過去を記録していて,写真を見るとまるで過去にトリップしたような気持ちになるからカメラは一種のタイムマシンだという人がいるけれども,それは多分違う.撮影モード如きで過去のイメージは改変できてしまうのだから,カメラが過去の現実を非圧縮に記録しているなんてありえないでしょう.逆に言えば,カメラは過去を改変する力があるということです.Pixel6を使用していた時,スマホカメラを進化させてきたGoogleが想うカメラというのは,ここまで過去を美化するものなのかと感心しました.彩度とコントラストが高くて,とってもきらきらしているんです.でも,寂しい色味を写すことだってきっと必要.もし分光器で測った色がとっても鮮やかでも,自分の気持ちが沈んでいたらちょっとトーンを落としていいはず.X100は,そんな余地まで与えてくれる,懐の深いカメラです.