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400字のショートショート
【スターグラス】
天使のメガネ職人は考えました。サングラスがあるならスターグラスがあったら面白い。サングラスが光を遮るなら、スターグラスは星が心を照らすメガネにしよう。
長年の歳月をかけスターグラスは完成しました。天使は下界に降りて必要な人間にそれを与えました。
夜。崖に立っている男がいました。就活に疲れ、生きることに疲れたのです。いつのまにか彼の胸ポケットにメガネがあることに気付きました。
『star glass』と刻印されています。彼はそれを掛け夜空を見上げました。都会で育った彼には見たこともない満天の星。瞳の奥を照らします。
星の一つ一つが命を与えられたように光を放っています。自分はこの星で輝くために生まれてきたんだ。そう思うと涙が溢れました。
「生きよう」
心に刻んだその言葉は、彼のなかでいつまでも輝いていました。
彼は歳をとり、星の一つになりました。
誰かがスターグラスで彼を見ています。