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400字のショートショート
【こわれもの】
彼女は高校のテニス部でした。試合に負け今にもこわれそうに落ち込んでいると、先輩がやってきました。「おまえは、こわれやすいからなぁ」と背中をポンとたたきます。
帰宅すると母親が笑っています。
背中に『こわれもの』のシールが貼られていたのです。先輩のしわざだとわかりました。スーパーで『半額』シールを手に入れ、先輩の背中に貼ってやろうとたくらみます。
放課後、部室にいた先輩に『半額』シールを貼ることに成功しました。先輩は気づきましたが、剥がそうとしません。生きる価値が人の半分しかねぇ俺に似合ってる。と、彼女はそう思わせてしまった自分に後悔しました。ほんとうはどこかですごく傷ついて悲しんでいると思うと涙が溢れました。
「おまえ、やっぱりこわれやすいな」
先輩は親指で涙を拭ってやります。
「こわれもので…ごめんなさい」
「こわれものじゃない…俺のものだ」
彼女はこわれるくらい抱きしめられました。