見出し画像

インフラを未来に引き継ぐための挑戦:CoolLaser®とは?

こんにちは、トヨコー採用広報です。

今回は、トヨコーが誇る「CoolLaser®」と、その販売モデルである「G19-6000シリーズ」について、シリーズで詳しくご紹介していきます。

この革新的な装置が、どのようにしてインフラの老朽化対策やメンテナンス作業を変革しているのか、そしてその開発秘話や未来展望まで、さまざまな角度からお届けします。

これから数回にわたり、CoolLaser®の秘密に迫る記事をシリーズとして公開予定です。G19-6000シリーズの構造やレーザー照射のプロセス、そして「なぜ世界一と呼ばれるのか?」といった核心部分にまで踏み込んでいきます。

まずは、「CoolLaser®」がどんな装置なのか、その全貌に迫っていきましょう。

G19-6000シリーズのシステム本体とレーザーヘッド

CoolLaser®とは

CoolLaser®は、「トヨコー独自のレーザー技術によって、橋や鉄塔からサビや古くなった塗装を除去して、その表面をまるで新品のような状態にまで蘇らせることができる装置」です。
鋼橋と呼ばれる鉄でできた橋や鉄塔は、長年使用する中で少しずつ塗装は劣化し、鋼材はサビ始めます。この状態を放置すると、サビがどんどん進んで鋼材は強度を失い、最後には倒壊するという恐ろしい結果に至ります。

2019年に起きた台湾の橋の崩落事故をご存じでしょうか。当時はニュースでも取り上げられ、その衝撃的な映像を覚えていらっしゃる方もいるかもしれません。日本でも2021年に和歌山県の水管橋の崩落事故がありました。調査の結果、どちらの事故も腐食が原因にあったと指摘されています。そのような事態を防ぐために、サビや古くなった塗装を除去して塗装を塗り直すことで、劣化の進行を止める必要があります。

出典元:https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Nanfang%27ao_Bridge_collapse_20191001.jpg

サビや塗膜の除去にはブラストという方法が長年使用されてきました。ブラストは非常に優秀な技術で、低コストかつ高効率でサビや塗膜を除去することができます。
しかし、研削材といわれる粒子を表面にぶつけて削り取っていくその方法によって、大量の粉塵が舞い、廃棄物も大量に発生する、作業者にも環境にも負担が非常に大きいという問題があります。
しかも、老朽化してメンテナンスが必要な橋や鉄塔はどんどん増えています。皆さんの身の回りにある橋や鉄塔は、数10年前に建てられたものばかりなはずです。さらに、近年の人手不足の問題が事態を深刻化しています。この大事だけれどもキツイ、汚い、危険の3K仕事を選んでくれる若手は減り、メンテナンスをし続けることも困難になっています。

奥で作業者がブラスト作業をしていますが、大量の粉塵で姿を確認するのも困難です

「今ある橋や鉄塔を未来に残していくためには、人にも環境にも優しい新しい技術が絶対に必要だ」トヨコーは、この問題を解決するチャレンジをすることにしました。10年以上の研究開発を経てトヨコー独自の技術を作り上げ、高出力レーザーを使ってサビや塗膜をキレイに除去する装置を開発しました。この装置には未来を変える力があると信じています。

それがCoolLaser®です。

CoolLaser®によってどんなことが実現できるのか

CoolLaser®には、ブラストやそのほかの従来の装置にはない、様々なメリットが存在します。

・廃棄物量を圧倒的に減らすことができます

ブラストは大量の研削材を使用し、それは使用後に廃棄物になってしまいます。一方、CoolLaser®はレーザー光を用いるので、発生する廃棄物量が圧倒的に少なくなります。その削減量は驚異の1/50です。
この特長は、古い塗装の除去の際に特に威力を発揮します。昔、橋の塗装には鉛丹塗料というものが使われていました。サビ止めの効果がとても高い塗料なのですが、名前の通り有害な鉛が含まれています。この塗装は現在でも多くの橋に残っています。さらに、古い塗装にはPCB(ポリ塩化ビフェニル)を含むものもあります。PCBはその有害性から、廃棄物の処理に厳しいルールが定められています。
ブラストでこの鉛丹塗料やPCB含有塗料を除去すると、使用した研削材も汚染され、大量の有害な廃棄物が発生しますが、CoolLaser®を使用すれば、発生する廃棄物は除去した塗装のみです。

・作業者にクリーンな環境を提供します

ブラストでは、ぶつけた研削材と除去物が飛び散り、作業場所の粉塵濃度が非常に高くなります。一方、CoolLaser®は発生する粉塵は除去物のみで、さらに速やかに集塵機で捕集することで、飛散する粉塵量を最小限にすることができます。CoolLaser®は、環境にも人にも優しいのです。

・作業者の負担を軽減します

圧縮空気の力を使って研削材をぶつけるブラストと違って、CoolLaser®のレーザーヘッドには反動がありません(光の運動量を感じることができる繊細な方を除けば)。これにより、作業者の負担は大幅に軽減されます。

・サビの元「塩分」の残留を低減します

折角サビを取って塗り直しても、またすぐにサビてしまっては元も子もありません。CoolLaser®は、ブラストでは除去しきれないサビの元となる塩分を取り除くことができます。塩分の確実な除去は、再び劣化するスピードを下げ、塗装の塗り直し頻度を下げることができます。CoolLaser®は、ときにブラストで取りきれなかった塩分の除去のために、その後工程として使用されることもあります。

CoolLaser®は、粉塵も少なく反動もないため、人にも環境にも優しい工法です

CoolLaser®は何がスゴイのか 「世界一のスピード×世界一の品質」


レーザーを使ってサビや塗装を除去するいわゆる「レーザークリーニング」技術は少しずつ広まり始め、我々以外のメーカーからも装置の販売がされるようになってきました。しかし、CoolLaser®は他社装置では実現することができない圧倒的なスピードと、圧倒的な処理品質を誇ります。

スピードの源は、レーザーのパワーです。CoolLaser®の販売モデルであるG19-6000シリーズは、レーザークリーニング装置の中で世界最高峰の出力の5,400Wのレーザーを使用しながら、手で持てるサイズ、重量のレーザーヘッドで安全に取り扱うことができます。これは、トヨコーが長年培ってきた光学設計技術、機械設計技術によるものです。

さらに、独自のレーザー照射プロセスによって、他社装置では取りきることができないサビも除去し、キレイな金属表面を出すことができます。これは、レーザーが照射され、サビが除去されるプロセスに関する深い理解と膨大な知見によって実現しています。

CoolLaser®はなぜスゴイのか 卓越した性能を支えるコンセプト

・工場で使われていたレーザーを屋外に持ち出す

レーザークリーニングという技術・業界が確立されつつある今とは異なり、開発を始めた当初は産業で使用できる高出力のレーザーは多くなく、現在我々が使用しているファイバーレーザーがやっと出てきた頃でした。
それを屋外に持ち出して、しかもレーザーヘッドを手で持って使用することなど、だれも考えておらず、またレーザーの危険性を理解している専門家からは危険で無謀だと言われてきました。
我々は、その指摘に真摯に向き合いながらもチャレンジを続け、屋外で使用できる装置を完成させました。

CoolLaser®はトラックで現場に運ばれ使用されます

 ・CWレーザーを選択するという決断

レーザーは、大きく分けてレーザー光が連続的に照射されるCWレーザーと、パルス状に断続的に照射されるパルスレーザーがあります。
高出力のCWレーザーは、あっという間に鉄板を切断する威力があります。そのため、表面をキレイにする目的であるならば、パルスレーザーを使用する方が技術的に正しいように感じられますし、大半のメーカーがその選択をしました。
しかし、トヨコーはCWレーザーを使いこなすという独自の道を進む決断をしました。
一見すると不合理な選択をしたように見えますが、結果的にそれがスピードと品質を両立するレーザー照射プロセスへと我々を導くこととなります。

・トヨコー独自の高速回転照射機構

上で述べた通り、高出力のCWレーザーは、あっという間に鉄板を切断してしまう表面処理で使用するには非常に扱いにくいレーザーです。このレーザーで厚さ数10~数100μmのサビや塗膜を除去するために、レーザー光線が1点で停止しないよう絶えず高速に動かし続ける必要があります。
レーザー光線を走査する場合、ガルバノミラーを用いるのが一般的です。レーザー加工機や、レーザーマーカーなど、数多くの機器に使用され、様々な製品が販売されています。しかし、我々は独自の中空モーターとプリズムを使用した高速回転照射機構を開発することにしました。この機構によって、小型軽量でありながら、高速にレーザー光線を移動させ続けることが可能になりました。
極めてシンプルな方法ですが、インフラメンテナンスを目指したレーザークリーニングの黎明期から開発に取り組んできた我々は、基本特許とその周辺技術に関する複数の特許を取得しており、さらに戦略的に特許網の確立を進めています。

CoolLaser®の回転照射の原理

CoolLaser®はスゴくて面白い

いかがでしたでしょうか?

ご紹介しましたように、CoolLaser®にはユニークで高度な技術がたくさん詰まっています。

今後は、これからそれぞれの技術や、開発に携わったメンバーによる対談や、未来に向けた挑戦もご紹介を予定しています。
普段はなかなか知ることのできない裏側に触れられる内容なので、ぜひお楽しみに!


いいなと思ったら応援しよう!