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ギカダイ独自科目「プロジェクト研究」に潜入せよ!

豊橋技術科学大学独自の教育プログラムである『プロジェクト研究』
プロジェクト研究とは何なのか?他大学ではあまり聞かないこの科目の秘密を徹底的に取材しました!


そもそも『プロジェクト研究』とは?

普通高校・工業高校出身者も高専生と同等の経験ができる

『プロジェクト研究』とは研究室配属前の学部生が研究室に入り、プレ卒研を行う豊橋技術科学大学独自のプログラムです。(平成23年からスタート)
学部2年次の必修科目として、約5か月間、同年代の高専5年生と同等の研究経験を積むことを目的としています。
それぞれ学生は自分で研究室を選び、教員や先輩と一緒に研究しながら学びます。

今回はそんなプロジェクト研究について、学生の実際の声とともにご紹介します!

「上手くいかなかった」も大事な結果

研究と聞いて抵抗を覚えるかもしれませんが、「上手くいかなかった」も一つの大事な結果であり、全体を通して得られた考え方や知識、技術はとても大きな力となります!
試行錯誤を楽しんで、勉強以外にもまずは経験することを大切にしてください。


視覚認知情報学研究室(中内研究室)

左から:TAの呉さんから実験の説明を受ける学部生のナムさん(ベトナム出身)、神谷さん(浜松工業高等学校出身)、松本さん(野沢北高等学校出身)、澁澤さん(知立東高等学校出身)

研究室選び、その理由は?

まず最初に取材したのは情報・知能工学系の「視覚認知情報学研究室」(通称「中内研究室」)。この研究室では、視覚から得られるデータを元に脳機能や仕組みを解明する研究に取り組んでいます。今年のプロジェクト研究では6人の学生が配属されたとのこと。早速、この研究室を希望した理由を聞いたところ・・・

神谷「この大学を受験するときに、絶対に中内研究室に入りたいという強い思いがありました」

松本「研究室見学に行ったところ、雰囲気がとても楽しそうだと感じて惹かれちゃいました(笑)」

色んな思いがありつつも希望の研究室に入ることができて、皆さんとても嬉しそうです。

実験準備をする吉川さん(知立東高等学校出身)のまなざしは真剣そのもの。

プロジェクト研究の醍醐味、実験!

この日は初めての実験日。64本もの電極を付けたヘッドカバーを着用して脳波を測る実験で、慣れない作業に苦労しているようです。それでも、TA(ティーチングアシスタント)である先輩学生のサポートを受けながら、一生懸命に作業を進めています。
想像していたよりとても大変そうですが、皆さん和気あいあいと積極的に取り組んでいます。

吉川「今日から始める実験データ解析のために、MATLABというソフトの使い方を3週間勉強しました。実験がとても楽しみです!」

澁澤「MATLABは初めて使いますが、授業のプログラミング演習と違って、自分が作ったプログラムを実際の実験に使えるので、良いモチベーションで取り組めます!」

右から2番目アリさん(京都橘高等学校出身)の質問に答えているTA呉さん。楽しいだけではなく、きちんと指導する体制が整っています。

困ったときには先輩がサポート

プロジェクト研究は授業で習っていない内容が多く、大変そうですが「TAの方に教えてもらいながら実践的に学べるのはワクワクする」と、皆さん笑顔が絶えません。

神谷「工業高校の出身ですが実はプログラミングが苦手で・・・。でもTAの方が丁寧に教えてくれるので、苦労はないですね!」

松本「神谷さんの言うとおりで、TAの方が親切なので、楽しく取り組めています」

研究室のスタイルとして、上級生が下級生のサポートをする体制となっていて、普段から親密なコミュニケーションを取るように心がけているようです。TAを担当する呉さんはそんな後輩たちの姿を「皆さん積極的で楽しみながら取り組んでいて、とても嬉しいです」と優しく見守ります。

「どこの研究室にも負けないくらいうちの研究室のプロジェクト研究は楽しいと思う」と答える学生さんたち。その表情はもうすっかり中内研究室の一員です。

研究のイメージ鮮明に。コミュニケーションが楽しさの秘訣

最後に少し意地悪な質問かも、と思いながらも「今の正直な気持ちでプロジェクト研究に点数を付けるなら?」と聞いてみました。

TAの呉さんは「忖度があるといけないから(笑)」と席を外してくれた上での、今の皆さんの率直な意見。取材陣にも少し緊張が走ります。
しかし、学生さんの答えは「忖度なしに」と全員が大満足の高評価。その点数はなんと平均しても90点を軽く超えていました!お世辞抜きにこの点数、凄すぎます・・・。

吉川「正直、普段行っている実験の延長線上だと思っていましたが、実際はTAさんと同じ目線でリアルに研究を学べているし、またプロジェクト研究の内容以外にも、他の先輩の方とお話しする機会が持てるのでとても楽しいです!」

ナム「実際の研究のプロセスを経験できたことで、研究へのイメージがとても鮮明になりました」

是非、今の気持ちのまま最後まで駆け抜けてほしいです。


建築設計情報学研究室(水谷研究室)

左から:松田さん(大府高等学校出身)とTAの諸江さん。プロジェクト研究開始から約3週間後の取材でしたが既にバディ感を感じます。

ワクワクで選んだ研究室

次に訪れたのは建築・都市システム学系の「建築設計情報学研究室」(通称「水谷研究室」)。建築都市設計・計画に関連する研究と実践に幅広く取り組んでいます。

松田「元々建物や美術作品みたいな建築が好きで興味がありました。将来も建築・設計関係に進みたいと思っていたので、一級建築士の資格を持つ水谷先生の授業はいくつか受けていて。面白いな、プロジェクト研究をやるならここにしようと決めていました」

ワクワクで研究室を選んで今もそれが続いてるって感じですかね、と笑顔を見せた松田さん。夢への第1歩を踏み出した後輩をTAの諸江さんは隣で温かく見守ります。

コツコツと行う実験。地道なデータ取りがいつか答えへと繋がっていきます。

経験して初めて知る実験の難しさ

松田さんが取り組むのは、諸江さんが行っている「パーソナルスペース」の研究。コロナ禍で広まった屋外飲食施設の設計や心地良い空間作りにも関係する、まさに今の時代に必要な研究ですが、実験には多くの被験者データや地道な計測作業が求められるそうです。

松田「パーソナルスペースの計測実験では、自分が被験者に向かって歩き、不快だと思う位置で旗を上げてもらうのですが、歩き方や目線だけでも結果が変わってしまう可能性があります。被験者集めも含め、プロジェクト研究をやる前までは知らなかった実験の難しさを感じています」

やってみて実感する壁。松田さんは先輩の諸江さんに歩き方やデータの取り方、扱い方をひとつひとつ教えてもらいながら「この経験もいつか糧になる」と真摯に課題に取り組みます。

2人の話題は研究のこと以外も。好きな建築の話ではニッチな話題で盛り上がっています。

先輩と後輩。築いた関係性も財産

諸江「一緒にやりながら理解してもらえたらいいなと思います。頼ってもらえるのは嬉しいです。『僕の後輩』って気持ちになるのはマンツーマンでやるプロジェクト研究ならではですね」
松田「普通科出身なので建築に関する知識を持っている先輩に出会えたのは、ありがたいです」

そうお互いの事を話す2人。単に実験や研究の基礎を学ぶだけでなく、時に苦労を分かち合い、相談できる相手と出会える事もこのカリキュラムの良い一面なのかもしれません。
オフでの交流もある?と聞くと、「まだ行けてないけど皆で飯行く?」「マジっすか!」「あ、でも寿司なら回るやつな(笑)」と良い関係性のご様子。
設計を志す者同士通じる話も多いらしく、見ていてとても羨ましく感じました。

夢のための研究。このプロジェクト研究は松田さんにとって小さいけれど確かな、はじめの一歩です。

たかが基礎、されど基礎

最後に松田さんにも、中内研究室と同様に「ギカダイのプロジェクト研究、どう評価する?」と聞いてみると・・・

松田「マルかバツかって言われたら、花マルです。大学によってはレポートだけで通過できる授業もあると思います。でも色々経験する中で、単位数稼ぎとかのためじゃない、本当に自分が興味のある分野の知識を磨くための勉強をもっとしたいと、思うことが出来たので」

「基礎こそが一番重要」としばしば言われる建築の世界。
もし仮にこのプロジェクト研究を松田さんの夢の「基礎」と考えるならば、この経験は揺らぐことなく、松田さんのこれからをしっかりと支えてくれるのではないでしょうか。


取材を終えて

取材をする前は、高専生との差を埋めるための研究の練習、と思っていましたが、実際に取り組んでいる皆さんのお話を聞くとそれだけにとどまらず、コミュニケーションや「興味」をひたすら追求する研究者としての姿勢を学んでいるように感じました。
「上手くいかなかった」を実感すること、一人では無理でも誰かの助けを借りれば乗り越えられるかもしれないと知ること、そうして「上手くいかなかった」の一歩先へ進むこと。プロジェクト研究は、実務以外にもそんなことを経験できるカリキュラムなのかもしれません。
今回の取材では皆さんの純粋に研究を楽しむ姿に感化され、自分自身を見直す良いキッカケにもなりました。私たち取材陣も一学生として、初心に戻って楽しみながら研究を頑張ります!


企画・制作:天伯編集部
取材:嶌田 皓太
ライター:原田 亮佑
カメラマン:壷田 半蔵、柄澤 幸太郎