作家紹介 vol.4
'TOYAMA ICONIC'
富山ガラス アーティスト・プロファイル
vol.4
小宮 崇 Takashi Komiya
―ガラス作家の道を歩むきっかけ―
一番最初にガラスに触れたのは、僕が大学生のときでした。もともと専攻は他の学部だったのですが、美術の先生を目指そうと芸術学部に編入したときに、ガラスに触れたのがきっかけでした。溶けたやわらかいガラスを、はじめて見たときの感動と高揚感は、今でも忘れられません。ガラスは、器を一つつくるだけでもいろいろな技法があって、その技法によってさまざまな表情を見せる、非常におもしろい素材です。それだけ可能性を感じる素材を使って、まだ見たことのない表現をつくり出してみたいと思い、創作の道へと進みました。いまも変わらない思いを持ちながら、ガラス作家を続けています。
―自身の作品について―
僕が作品をつくるときに意識するのは「ガラスの質感のおもしろさ」です。見た目や手触りなど、ガラスという素材が持つさまざまな表情を感じ取ってもらえるような作品を目指しています。たとえば、ガラスの粉を表面につけてつくる「白のうつわ」シリーズは、お気に入りの作品です。内側は、ガラスの透明な質感を残しつつ、外側にはガラスの粉を使って、陶器を思わせるマットな質感に仕上げています。片口は、日本酒やドレッシングを入れて使うことを思いながらつくりました。シリーズには、ボウルや花器もあります。どのかたちにも、見た目も触り心地も、やわらかい印象で、内側には輝きのあるガラスの質感を持っている。そこに魅力を感じて、このシリーズは長くつくり続けています。ぜひ作品を手にとって、この感覚を体感していただきたいです。
小宮 崇 作「白のうつわ -片口-」
小宮 崇 作「白のうつわ -一輪挿し-」
小宮 崇 作「白のうつわ -ボウル-」
―〈富山アイコニック〉の世界観について―
今年の2月に誕生し、まだ芽を出したばかりの〈富山アイコニック〉ですが、「富山らしさ」を追求するガラス・ブランドとして進化させていきたいです。型を使わず、手吹きだけで一つひとつのアイテムをつくり上げているガラス・ブランドは、多くありません。このブランドでは、7人の作家たちが一つのチームとなって、フォルムの美しさや使いやすさはもちろん、〈富山アイコニック〉のオリジナリティを生み出すために、話し合いながら試行錯誤を繰り返し制作を進めています。その大きな柱の一つとなっているのが、ガラスづくりが盛んな富山ならではの「手吹き」の技術です。手吹きならではのガラスの質感や温かみを活かしながら、工業製品に負けない精度や仕上がりを実現して、数多く生産していける体制を築きたいと思います。手にする方たちの日常に寄り添い、心の豊かさにつながるようなガラスをつくる、そんなブランドを目指したいです。
―〈富山アイコニック〉で手掛けているアイテム―
ファーストコレクションでは、「ショートステム」というグラスと「一輪挿し」を担当しています。「ショートステム」は、吹きの作業をしながら全体をかたちづくるのですが、吹き加減や動きを計算する必要があり、難易度が高い作業が求められます。使いやすさを意識しながら仕上げた美しいラインと、シュッとすぼまった内側のフォルムは、ぜひ見ていただきたいポイントです。もう一つの「一輪挿し」は、富山の名物ともいえる「薬瓶」からヒントを得たデザインです。富山で誕生した「コシノアオ」というオリジナル色を使用したブランドの象徴的なアイテムですが、この秋には新色も加えてカラー展開しています。あらたに加わった色は、色ガラスを使うなど透過する光の色が美しく見える濃度を見つけ出しています。それぞれの色を手に取って、色ガラスの魅力を感じていただけたらと思います。
―〈富山アイコニック〉のこれから―
大切な方への贈り物として、自宅で日常の中の特別なひとときに、さまざまなシチュエーションで選ばれるガラス・ブランドにしていきたいと思います。また〈富山アイコニック〉と聞いた方たちが、「ああ、あれね!」とそのかたちを思い描いてくれるようなアイテムをみんなでつくりあげたいです。もちろん、自分自身がブランドを代表するアイテムを手掛けたいとも思います。いずれ、日本の国内だけでなく、海外でも流通するガラス・ブランドにしていきたいですね。