【参加レポート】とやま帰農塾2022 「立山塾」(2022/10/21~10/23)
とやま移住note管理者スタッフの「S」と申します。
富山県主催、NPO法人グリーンツーリズムとやま企画の田舎暮らし体験プログラム「とやま帰農塾」今年度は9つの塾が開催。
今回は、立山のまちの歴史を学び、伝統産業の体験ができる「立山塾」に2泊3日で参加してきました。
2022年度 とやま帰農塾の体験レポートはこちら
とやま帰農塾2022 「灘浦塾」(2022/5/28~5/29)
とやま帰農塾2022 「南砺塾」(2022/7/9~7/10)
★立山塾の主な体験メニュー★
・「立山りんどう会の名物ガイド清水さん」と行く日本一の落差350m「称名滝」を見学
・立山町瀬戸地区にて登り窯見学、陶芸体験
・和紙作り職人 川原隆邦さんと交流しながら和紙作り体験
・立山博物館を見学
・布橋灌頂会、遥望館見学
一日目【開講式】
立山町のグリーンパーク吉峰 よしみねハイツにて塾長の島さん、県職員の皆様よりご挨拶。
参加者の塾生3名より、一言ずつ自己紹介を行いました。
【日本一の落差350m「称名滝」を見学】
称名滝は日本一の落差350mを誇ります。立山連峰の水を集めて勢いよく落ちる称名滝の周辺では色とりどりの紅葉が楽しめました。
「立山りんどう会」の名物ガイド清水さんから、その昔、立山開山の頃は現在の位置より130mほど下流側にあったといいます。勢いよく流れ落ちる豊富な水が、柔らかい溶結凝灰岩を1年間に10㎝ほど削りながら後退していっているのだそう。
【懇親会---立山りんどう会 清水さんを交えて---】
称名滝をガイドしていただいた清水さん、塾長、参加者の皆さんと懇親会を兼ねた食事会。
立山町で栽培されたお米「たてやまのちから米」、立山ポークと味噌をのせた朴葉の味噌焼きなど、お刺身以外のほとんどの食材が立山町で作られたものなのだそう。
皆さんおいしいご飯を味わいながら、立山町のこと、富山県のことなど楽しそうに談笑していました。
二日目【立山町瀬戸地区にて登り窯見学、陶芸体験】
立山町瀬戸地区には430年以上の歴史をもつ「越中瀬戸焼」という陶芸があります。
この地域の里山から焼き物作りに適した良質の土が採れることから、加賀藩主・前田利長が1590年代の終わりに、この地に尾張瀬戸(愛知県)から陶工を招いて焼き物を作らせたことが、越中瀬戸焼の始まりなのだそう。
最盛期には120近くあったとも言われる窯が、現在は4軒のみ。廃窯が相次ぐなか、町や作家が一丸となり、伝統ある「越中瀬戸焼」を受け継ぐため、「陶農館」にて陶芸の魅力を発信したり、陶芸体験ができるように教室を設けたり、人々が身近に「越中瀬戸焼」に触れてもらえるよう工夫されています。
この日はちょうど登り窯焚き入れの日。
神聖なる焚き入れの行事を見学させていただき、良い仕上がりになるように祈祷と祝い酒をいただきました。
越中瀬戸焼きのお話を聞いた後は、実際に粘土に触れて、お皿かコップを作ることに。塾生それぞれが思い思いに作品を作っていきます。
手順を教えてくださる山田先生は千葉県から移住され、
陶農館で働きながらご自身の作品も作っていらっしゃる陶芸家。
一人一人丁寧に教えてくださいます。
塾生の皆さんは黙々と自分の作品と向かい合い、1時間半ほどで作品を仕上げました。
皆さん「集中して無になる時間が楽しかった!」「自分の手で粘土を形に変えていくのが楽しい!」などそれぞれの感想を聞くことができました。
作った作品は陶農館の窯で焼いてもらい、完成は約1か月後。手元に届くのが楽しみです。
【和紙作り体験】
立山町虫谷地区へ。「川原製作所」の川原隆邦さんと交流しながら和紙作り体験。
川原さんは富山県朝日町に伝わる伝統工芸、蛭谷和紙(びるだんわし)最後の継承者、米丘寅吉に師事、唯一の継承者。川原さんの手掛ける和紙作品は様々なコンクールにおいて優秀な賞を取り、世界各国から称賛されています。
川原さんと息子さんが和紙作りについて教えてくださいます。
和紙作りには二種類の植物を使用します。
まず、楮(こうぞ)という木の皮を柔らかく煮たものを木槌で叩いて繊維を壊します。
次に、トロロアオイという木の根っこを傷付け水につけておくと粘りのある液体が出てきます。その粘りが繊維同士をつなぐ役割をしてくれるのだそう。
楮の繊維、トロロアオイの粘液を水を張った水槽の中に入れてかき混ぜ、そこから簀桁(すけた)という型に流し込み、前後左右に振りながら紙すきをしていきます。
川原さんと息子さんは、一人一人に紙漉きのコツを教えてくださいました。どうしても紙が厚くなったり、繊維がよれてしまったり、薄く均等に仕上げるのはなかなか難しいようです。川原さん曰く、「多少のよれや厚みが出ても「必殺!気にしない」で良いですよ!せっかくの貴重な経験なので、美しく作ることを極めるより、いかに楽しく和紙作りができたかが大切なので、楽しみましょう!」と場を盛り上げてくださいました。
-----確かに、楽しく経験したことのほうがずっと記憶に残りますね!
漉いた和紙は、一枚ずつ重ねていき、その後圧力をかけて脱水します。
しっかり脱水した後は一枚一枚乾燥用の鉄板に貼り付けていきます。
10~20分ほどで乾くので、乾いた紙を丁寧に剥がして完成です。
自分で作った和紙を手にし、「紙が厚くなったり、よれたりしていても、それはそれで個性的な仕上がりになっているね」と嬉しそうな表情でお互いの作品を確認しあっていました。
普段、川原さんは楮、トロロアオイの収穫から私たちが体験した工程をすべてお一人で作業されているとのこと。時々息子さんがお手伝いをしてくれているそうですが、一枚の和紙を作るのには、想像以上にいくつもの工程を経て作られているのだと知ることができました。
【懇親会---川原隆邦さんを交えて---】
和紙職人の川原隆邦さんを交えて懇親会を兼ねた食事会。
川原さんご自身も千葉県から富山県へ移住をしてこられた移住の先輩。川原さんが富山へ移住したきっかけから現在の活動に至るまでの様々な経験談を話してくださいました。
「まず、自分がやりたいことを一生懸命に楽しむことが大事。また、無理に人に合わせようとしたりしないことが、地域に溶け込むコツなのかもしれないですね。」と川原さんは言います。
参加者の中には富山へ移住を考えている方もいらっしゃり、皆さん真剣な表情でお話を聞いていました。
実際に富山で活躍している移住経験者の生の声を聞くことができ、有意義な時間を過ごすことができました。
三日目【布橋灌頂会、遙望館、立山博物館見学】
立山町芦峅寺では、江戸時代に信仰の山「立山」への登拝が許されなかった女性たちが、白装束姿で白い布が敷かれた橋を渡る極楽往生を願った儀式を行っていました。
布橋灌頂会の本番の時と同様に焔魔堂から赤い橋を渡り、姥堂へ入る行程を体験しました。
赤い橋は煩悩の数と同じ108枚の板で組まれており、そこを無心でゆっくりと歩きます。かつて姥堂があった場所に建つ遙望館に入り、立山を開山した「佐伯有頼」のお話、立山の自然についてなど大型スクリーンで映像を楽しみました。映像が終わるとスクリーンが上がり、外の景色が一望できます。条件が良い日にはここから立山が見えるのだそう。
立山博物館へ移動し、学芸員の方から立山の歴史と立山信仰について学びます。
博物館のある立山町芦峅寺は、かつて立山禅定道の登山口として栄えた集落。当時は33の宿坊があったとされ、全国から来た参拝者の宿泊、登拝案内などを行っていたそうです。
その内容を大画面に描いた宗教絵画の立山曼荼羅の掛け軸や、展示物の中には国指定の重要文化財も納められており、歴史とロマンを感じる博物館でした。
【芦峅寺の郷土料理を味わう】
芦峅寺の宿坊が立山登拝する人に出していたといわれる精進料理。
当時のメニューを再現し、芦峅寺の郷土料理「あしくら御膳」として楽しむことができます。
この地域では、春に採れる山菜を乾燥させたり、塩漬けにしたり、昔から保存食として親しまれています。料理には山菜が豊富に使われており、どれも滋味深く優しい味でした。
左上から山菜の煮物(ウド、ぜんまい、ススタケなど)、ずいきの酢の物(※1)、わらびの酢漬け、焼きつけ(※2)、ウドの胡麻和え、里芋のエゴマみそがけ、きゃらぶき(※3)、白米、漬物、つぼ煮(※4)
※1 「ずいき」里芋の葉柄
※2 「焼きつけ」ヨモギともち粉、味噌を合わせてこねて焼き上げたもの。
※3 「きゃらぶき」ふきのきんぴら
※4 「つぼ煮」こごみ、にんじん、里芋、油揚げなどの具が入り、昆布の出汁が効いたしょうゆベースの汁椀
【閉校式】
最後に一人ずつ挨拶をし、感想を述べ、2泊3日を振り返りました。
富山県への移住についてまた一歩踏み出せた人、ディープな立山町の歴史や産業に触れ、ますます立山町が大好きになったなど、様々な感想がありました。
【感想・まとめ】
立山町の産業や立山信仰の歴史に触れ、知れば知るほど奥が深く、魅力的な町だなと感じました。立山町に移住し、その後の生活についてなど、移住後にどんなことで悩み、それを乗り越えてきたか、先輩移住者の生の声は参加者の皆さんにとって大変参考になる話だったのではないかと思います。
交通機関やお店の数など、都会と比べると多少の不便を感じることもありますが、どの先輩移住者も声を揃えて都会に住んでいるときにはなかった心の豊かさを感じることができるのがこの立山町の暮らしだとおっしゃっていました。
雄大な景色と自然豊かな環境、美味しい食べ物、立山信仰の歴史や産業について興味のある方、ぜひ立山町を訪れてみてはいかがでしょうか。
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NPO法人グリーンツーリズムとやま「帰農塾」
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