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タイトルのつけ方はポン引きに学べ
皆さん、こんばんは。
今日は書籍につき物の、タイトルのつけ方について、皆さんと共有したいと思います。
タイトルって、そもそもなんだっけ?
まず、根源論について問いましょう。タイトルは何のためにあるのか?
本の中身を、タイトルだけで分かるようにするためですね。何のために分かるようにするのかというと、もちろん、潜在的な消費者の注意を引くためです。潜在的な消費者に一番訴えかけるもの、それは本の中身でも著者プロフィールでもなく、タイトルです。
アマゾンでのネット検索ではなく、リアル書店で消費者とファーストコンタクトする際は、タイトルと装丁がもっとも重要になります。皆さんも、本屋をぶらついたりするとき、手に取るのはタイトルと装丁に惹かれたものでしょう。
つまり、消費者と最初にコンタクトするのは、タイトルなのです。ネットでの販売の場合、さらにタイトルが重要です。特定の目的で本を買う場合は、その検索キーワードに引っかかりやすいようなタイトルにしなくては、検索結果に出ません。
タイトルが重要なのは分かった。付けるポイントは?
タイトルの重要性が改めて、理解してもらえたと思います。さて、一般的にはどんなタイトルの付け方があるでしょうか。
①メリット訴求型
②コンセプト訴求型
③問いかけ型
④恐怖訴求型
文芸は、またちょっと違う型もありますが、実用書・ビジネス書は上記のタイプに分かれます。詳しく見ていきましょう。
①メリット訴求型
例:Excel 最強の教科書[完全版]――すぐに使えて、一生役立つ「成果を生み出す」超エクセル仕事術
これは分かりやすいですね。この本を読めば、読者にどんなメリットがあるのか一目瞭然です。
②コンセプト訴求型
例:図解 モチベーション大百科
これは①よりも本のコンセプトを前面に出したタイトルです。多様なメリットや使い方が見込める際は、こうしたタイトルの方がいいこともあります。ただし、メリットが明確で無い分、魅力的なキーワードやコンセプトである必要があります。
③問いかけ型
例:なぜ、あなたの仕事は終わらないのか スピードは最強の武器である
消費者に問いかけるタイプのタイトルです。こうしたタイトル、よく書店で見かけませんか。他のタイトルの型に比べて、消費者の状態に直接訴えかけることができます。
④恐怖訴求型
例:「いつものパン」があなたを殺す: 脳を一生、老化させない食事
いわゆる健康系の書籍で良く使われるタイトル型です。○○したいなら、○○をやめなさい、という形で使われることも多いです。①の反対に、デメリットを謳い、読者の恐怖をあおる手法です。
これら①~④は、混在されていたりすることもあります。
これらを使いこなせば、タイトルが付けられる!わけじゃない!
はい。今回のこの記事のタイトルにようやくたどり着きました。さきほどまでは、4つのタイトルの型について言及しました。たしかにこれをうまく使えば、タイトル的なるものは完成します。しかし、この記事ではさらにこの向こう側に行こうと思います。それはタイトルの語呂の良さを気にしろ、という次元に留まりません。
真のポン引きは、客によって声かけを見極めている
タイトルとは、本の中身との関係性で完結するものではありません。もしそうだと考えているのなら、それは大いなる間違いです。最初に述べたとおり、タイトルとは最初に消費者と接触するコンタクトポイントです。それは、消費者に訴えかけるものでなくてはなりません。
消費者に訴えかけるためには、消費者がどんな心境や状況、UIで購入されるのかを吟味しつくさなくてはなりません。
例をあげてみましょう。今、エクセルではないデータについての抽出法と解析の方法についての書籍企画を立てているとします。ターゲットは、エクセルではないデータの利用法や抽出法に困っている、データ分析素人のマーケティング担当者です。さて、どんなタイトルにしますか。
本で紹介されている具体的な○○法というのは、専門用語です。従来の考え方でいけば、「○○方入門」などにしたくなりますね。でも、もう一度立ち止まってください。この本は、分析手法やデータ処理に詳しくないマーケティング担当者です。そういった人たちは「○○方」という単語をそもそも知っているでしょうか?たぶん、簡単にどうにかする方法名も知らないのではないでしょうか?またはおそろしく非効率的なやり口でデータをそろえているかもしれません。そういった人たちに、コンセプト直球だけでは通用しなさそうです。
では、もういちど思考の整理を。こういうときは具体的なストーリーを想像して追いかけてみましょう。書籍企画でもUXの手法はもちろん有効です。
①ターゲット:エクセルではないデータの利用法や抽出法に困っている、データ分析素人~中級のマーケティング担当者、またはデータ解析をしなくてはいけない人
②初期の状態:エクセルではないデータを解析しなくてはいけなくて、困っている。うまくやってくれるエンジニアが周りにいない。焦燥感はあるが、どうすればいいのか分からない。→今回アプローチするべきポイント
③状態から推測される二次行動:ネットでそれっぽい用語で検索する→アマゾンで調べる→うまくひっかからなかったらリアル書店へ
④UI:ネット、つぎに書店
さて、こう見ると、問題が認識されそうな場所は職場ですね。すると、ネットでまずは検索されそうです。と、するとネット検索で引っかかりそうなキーワードにするのが良さそうです。そうすると、○○方を知らなくても彼らが検索しそうな言葉を使っておけば、うまく彼らに認知してもらえそうです。
想像するに「エクセルじゃない」「データ」や、「テキスト」「解析」などで検索していそうですね。と、するとこのワードを使いましょう。
たとえば、『エクセルでは「じゃない」データを使いこなす!爆速で仕事が片付く○○方入門』などでしょうか。うまく、キーワードを盛り込みつつ、メリットも訴求しておきました。
○○方を知らない人間でも、手にとってくれそうです。
このように、最適な解は本の中身ではなく、消費者の状態から導き出されます。これは、ポン引きがうまくやっています。彼らは、通行人の状態を見分けて、声かけ法を変えています。
相手の状態を見極めて、興味を持ってもらえそうな取っ掛かりを微妙に変えているのです。ヘロヘロの人には、休んでいきませんかと優しく声をかけ、暇していそうな人には、刺激的なものがありますよといい、ものほしそうな人には、いい人そろえていますよ、という。
もちろん、書籍は人によってタイトルは変えることができないのですが、こういった姿勢が大事なのです。こんな風にして、出版業界の人間はポン引きスキルを日々磨いているのです。
いや、遠山は通りすがりの人に話しかける勇気も持ってはいないんですけどね。
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