親知らずを4本抜いた。辛い。
親知らずを4本抜いた話。
右側奥の下の親知らずは数年前から年に1回くらい、うずうずと痛むことがあった。自分としては、親知らずが生えてきている証拠だと思って放置していたのだが、1月頭になって今までない痛みに襲われた。
顎のリンパ当たりまで痛くなり、右頬もビリビリ痛いのだ。これはまずいと思って高校生以来の歯医者に行き、診察してもらうことにした。
住数年ぶりの歯医者で緊張した。歯医者はいつまでたっても苦手なものである。
診察室に入ると例のあの椅子に横たわり、先生に向かって口を開ける。親知らずだけでなく、全部の歯の様子をチェックされた。
右下奥の親知らずが痛いと伝えると、レントゲンを撮ってみましょうということになり、レントゲン室に案内された。
レントゲンで親知らずが生えているところのみを撮影するので、口の中にX線を通さないための板を入れる必要がある。しかし、これが口にギリギリ入るほどの大きさで、しかも喉の奥に当たっているかのような感じがして気持ちが悪い。
子どもの頃から歯医者で口に物を入れられるのが苦手で、その板を入れられたら強烈に「オェぇ」とえずいてしまった。
先生は仕方ないと言わんばかりに、その板を指で抑え、レントゲン室にとどまり、私の親知らず撮影に付き合ってくれた。先生というものは偉大である。
無事?レントゲン撮影が終わったら、私の親知らずの様子が写し出された青白い写真が完成した。
写真を見てみると、なんと親知らずが横向きに生えているではないか。根性の曲がった親知らずである。
先生によると、「うちではこの親知らずは抜けない。口腔外科のある大きい病院を紹介するのでそちらで診てもらって、抜いてもらった方がいい」とのことだった。
親知らずの生えている箇所が唇などの神経が通っているところの近くで、精密検査をして様子を見ないといけないらしい。
ということで、次は車で2時間弱かかる隣町の病院へ行くことになった。
また初めからやり直しである。まずはレントゲンを再度撮ることになった。大きい病院で、レントゲンの機械が全然違った。家から近くの歯医者では局所的に撮るものしかなかったが、今回の病院では自分の頭を機械にセットし棒状のものが頭の周りぐるぐる回ってレントゲン撮影をするのだ。
出来上がったレントゲン写真は親知らずだけでなく、自分の歯全てが映し出されているものだった。
出来上がった写真を見て医師は「唇などにつながる神経に近い親知らずなので、CTを撮って確認する必要がある」と言われた。
次はCTを撮るためだけに片道2時間弱の道のりを行かなくはいけない。なんとも面倒である。そしてCT写真を撮った。CTを撮った結果右左下の親知らずは仲良く横向きに生えており、右左上の親知らずは変な形であるうえに下に伸びてきてしまっているから親知らず4本全て抜いた方がいいという診察結果になった。
親知らずを抜くことはわかっていたが、4本も抜くことになるなんて思っても見なかった。
親知らずを抜く手順としては、右上下の親知らずを抜き、腫れが治まったら、左上下の親知らずを抜くという段取りになった。
また片道2時間かけて、ついに右上下の親知らずを抜く日がきた。なんとも憂鬱である。
まずは、親知らずの根元に麻酔を注射で打ち込まれる。めちゃめちゃ痛い。骨に到達してるんじゃないかと思うくらい刺された。
すぐに麻酔が効いてきて、感覚がなくなる、右側の頬や舌の半分くらいが感覚がなくてえづきそうになる。しかし、もう大人になったので鼻で深呼吸をして気持ちを整える。
先生が「じゃあ始めるよー」と軽い感じで自分の頭の横に座り、ついに抜歯がはじった。先生はビニールの防護服を身にまとい、銀色をしたペンチみたいなものや、よくわからん器具を取り揃えている。これを直視してしまえば、正常な気持ちではいられないと思い、目を閉じて歯が抜かれるのをまった。
右下の親知らずは、ほとんど歯茎に覆われているので、簡単には抜けない。私が口を閉じないように、つっかえ棒を口の中に入れ、歯茎を切開し、ドリルでギュイーンと削られ、親知らずを半分に砕き、ペンチみたいなやつで、バキバキと音を立てて自分の顎から歯が摘出される。
一連の作業は見てないのでわからないが、自分の口の中で起こっていることは、容易に想像がつく。なんせ音がすごいし、すごい力で引き抜かれる。頭が持っていかれるくらいだ。ちなみに痛みはほとんどない。麻酔を開発してくれた人よありがとう。
次は右上の親知らずである。こちらはすんなり生えていたので、結構あっけなく抜けた。でも音はバキバキしていた。
抜歯後、上下それぞれ歯茎を縫合され、無事に終わった。
しかし、悪夢はこれからである。術後は麻酔が効いているので、右顎は大して痛くもないのだが、帰りの車の中で痛みが増してくる。
唾を飲み込むと喉が痛く、口を動かすと晴れた頬の内側に擦れて痛い。抜いた箇所はズキズキと痛み、飴を舐めているかのように頬が晴れる。普段からテンションは低い方であるが、よりテンションが下がる。
出血は2日間ほど続き、その間血の味が口の中を満たしていた。
口を動かすと痛いので、ものが食べられない。自分の食事はゼリー、プリン、豆腐、卵豆腐、フルーチェになった。あと、自分の子供が残した離乳食。ご飯を食べられないというのは、空腹になるし、気持ちは上がらないし、夜は眠れないし、いいことがない。いいことといえば強制的にダイエットできることくらいだろうか。実際に少し体重が落ちた。
1週間もすると、腫れもひき、食事も普通に取りことがてきるようになった。幸せな生活に戻ったと思った矢先、左上下の親知らずを抜くのだった。
そして今、食事ができない苦しみに腹を減らして耐えている。