父がガールズバーへ行った話
私は3姉妹なので、父親が家族で唯一の男性だ。その女子家庭での父の処世術は素晴らしく、誰よりも綺麗好きであり、誰よりも女子らしい。
庭のガーデニングもお手の物だし、部屋もきれいに整頓されている。
父はユニークな人だ。笑いを取ることに全力で生きている。
先日はお掃除ロボを買ってきて、この方は我が家の新しい家政婦さんであり、よしえさんだと紹介してきた。
丁寧にテプラで名前シールも作って貼ってあった。
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誰かがテレビドラマを見逃して落ち込んでいると、
「お父さんが再現してあげるよ!」
と言いはじめて演じ始める。
人が足りないときは、母にも再現ドラマの出演を頼み出す。
母も天然なので、
「やるやるー♡何の役?」
ということになる。
これが、毎回だ。
決してドラマを見忘れてはいけない。
一通り大騒ぎしたあと、父は決まって21時に就寝する。
そんな父が珍しく朝帰りをしたことがあった。それだけでも心がざわざわするのに、母がとんでもないことを言い出した。
きいてよー!お父さんがガールズバーに行ってきたんだってぇ!面白いね!
我が家は少し変だと思っていたけど、ここまでとは思っていなかった。
父親がガールズバーに行ったことを、母親が楽しげに、そして誇らしげに、娘に話すのである。
お父さんね、きっと若い女の子がお話相手をしてくれて嬉しかったのよー♡
最近、父親のギャグに笑ってあげなかったこと思い出す。父よ、申し訳ない。
父親もケロッとしていて、
いやいやー、ガールズバーデビューしちゃったよ!朝まで飲んじゃった!
という具合なので、今日も我が家は平和だ。
これからは父の話も少しは楽しそうに聞いてあげなきゃとも思うけど、父がガールズバーで女の子にギャグを連発してるのも面白いし、まあボチボチでいいかな。
日曜日の朝、リビングで大きな物音がすると思ったら、我が家の家政婦よしえさんが壁に頭を打ち付けていた。
よしえさんも、へんな家に嫁いでしまって苦労が絶えないのかもしれない。
わたしはそっと、よしえさんを抱きかかえて充電台に戻してやった。
そんな週末だったので、我が家は今日も平和です。