"帰る場所"が変わった話
久々に実家で何日か過ごした。
「久々」と言っても、夏に一泊したから、感覚は何も変わらない。ぐうたらの極みである。
寒いからホットミルクでも飲もうと思って、カップに牛乳を注ぎ、レンジに入れて、スイッチオン。
……したところで、はっとした。
お砂糖、どこにあるんだ?
食器棚の下?
台所の戸棚?
それとも、ダイニングテーブル……
どこにもなかった。
変な目で見られるのを覚悟で父親に聞いた。
(案の定)お砂糖は、数年前と少しも変わらない場所にしまってあった。
要するに、帰る場所が変わったのだろう。
私が砂糖を探した場所は、みんな 今の住まいで調味料が置いてある場所だったから。
分からなかったことはショックだった。
多分、父親も少なからず驚いたと思う。家を出て数年の、(しかもかなり頻繁に帰ってくる)娘が、砂糖の場所を聞いてきたこと。
いつの間にか、
「行ってきます」ではなく、
「ありがとうございました」と言って家を出るようになった。
実家はもう私にとって"出掛け先"になっていたのだ。
少し寂しいが、誇らしくもある。
私が、家を離れてちゃんと、自分の生活を送れている証拠だと思うから。
年末年始、また帰る。
お砂糖の場所を忘れても、ぐうたらでも、
「ただいま」と帰れば「おかえり」と迎えてくれる
あの家を大切にしたい。