一次創作『病ませる水蜜さん』キャラクター設定3
第二章のキャラクター
こちらでは一次創作小説『病ませる水蜜さん』シリーズの第二章『怪異対策課の事件簿 〜郷徒羊の受難〜に登場するキャラクターの設定画などを載せていきます。
ストーリーがつながっているので先に第一章の小説やキャラクター設定から見ていただくことをおすすめします。
→はじめての方はこちらから
→メインキャラの紹介はこちら
→第一章サブキャラ紹介はこちら
※ネタバレが気になる方は先に小説を読むことをおすすめします!
郷徒 羊
警察庁霊事課(別名・怪異対策課)所属。二十五歳独身。表向きは刑事のように振る舞っているが、実際は怪異案件専門の国家公務員。生まれつきわずかな霊感があり怪異対策課にスカウトされた。足りない分は人脈や工夫で補う努力家。
第五話にて、郷美正太郎の昔話に出てきた郷徒毅は彼の叔祖父にあたる。曽祖父・祖父の代で起きた『根くたり様の祟り』の罪は郷徒家全体に負わされ、一族は村を追放された。その後も祟りの影響か家庭環境は決して良くはなく、羊も自己肯定感が極端に低く謙遜が過ぎて自虐的ですらある言動をするようになった。手入れの雑な黒髪と、眼鏡の下のクマが色濃い幸薄地味顔。人から嫌われ疎まれることに慣れているが、何故か怪異には好かれる気がする。
自分が住んだことのない村の因習に興味はなく、できたら縁を切りたいと思っていた。だが水蜜の調査・監視担当になってしまったことでむしろ縁は深く結びつき、これまでの不遇な人生の一因は水蜜にもあるのではないかと憎しみを抱くようになる。
第一章ではサブキャラだったが『怪異対策課の事件簿』では実質主人公。脅威の大出世だが、サブタイトルが『郷徒羊の受難』なので色々と過酷な運命が待ち受けているのは察してほしい。
結局色々あって、身体からは男性器が消えうせて怪異を惹きつける女性器もどきがつき、さらに不老不死の怪異になるという壮絶な人生を歩むことになった。邪念を持つ怪異を誘惑する香りを放って自身を犯させ、胎内に呪いを受け入れる『好餌』という体質であることが判明し、愛溟からは『水蜜の幼体』と称される。
洗脳されて悪事に利用され、重ねた罪に一度は心を壊すも、周りの人々から支えられて立ち上がることができた。これからも怪異対策課として、怪異に不幸にされる人をなくそうと身を捧げていくのだろう。
深雪
神社で祀られていてもおかしくないほどの神気を放つ、正体不明の獣人型怪異。本名・出自等不明。本人も忘却しており、自身が武神であることしか覚えていない。人々からの信仰も途絶え、孤独に彷徨う神霊。
アルビノのように白い肌と髪、真紅の目と化粧、二メートルの身長に筋骨隆々な巨体が特徴的。人間に擬態もできるが、本性を表すと耳と手足が獣のようになる。本人曰く狼らしい。狐や犬と間違えるとかなり怒る。
記憶も信仰も無く彷徨っていたところを水蜜と出会い、一世一代の恋をした。水蜜は頑なに恋人や伴侶はいないとしているが、実質『昔の男』のような存在。少なくとも深雪は『おれの嫁』だと思っている。
江戸時代ごろはまるで夫婦のように仲睦まじく過ごしたものの、あくまで『友達』の認識を変えず深雪の求婚を頑なに受け入れない水蜜に不満を募らせていく。元々気に入らないことがあると暴力に頼りがちな性格が災いして、ある時に些細なことで激昂。怒りに任せて水蜜の首を切り落とし、今でも治らない傷跡を残す。その際呪いを返され、一時悪霊にまで堕ちた。
その後数百年の間水蜜を求めて各地を放浪し、最近ついに見つけて攫おうとしたところで水蜜の今の『友達』(実質恋人)である寺烏真礼と仲間たちに阻止された。深雪は水蜜の説得を受け、定期的に水蜜と会えることを条件に警察庁の怪異対策課に収容された。現在は他の怪異を処理する手伝いも気まぐれにではあるがしてくれるらしい。
とにかく水蜜に惚れ込んでおり、病的に執着している。水蜜にだけは甘いが、他の人間は心底どうでもよく道端のアリのようなもの。オレ様で乱暴で脳筋で自分勝手だが、自分の身の回りの世話をしてくれている羊のことは個体として認識するようになる。
羊が不老不死となった後、深雪も共に禎山寺に引き取られた。お寺の近くに神社を作ってもらい、小さいながらも兄の雷轟に干渉されない自分の領地を手に入れることができた。
人間一人一人には興味のない神様だったが、羊のことはいつしか目の離せない存在、特に守らなくてはならない人間だと感じるようになっていた。水蜜が嫁なら羊は弟か息子、家族同然のペットくらいの感覚。
水蜜
『怪異対策課の事件簿』の章では主人公ではないが、『病ませる水蜜さん』シリーズ全体で事件に深く関わる重要なポジションにいる。
独自の信仰をもつ『神実村』で『根くたり様』と呼ばれる神として祀られてきた謎多き美人。中性的な外見だが、性別は男に近い両性(男性寄りのふたなり)神様の割に強そうな特殊能力は無く、人懐っこい飄々とした性格のポンコツ怪異。近づいた人を無意識に誘惑して自分に惚れさせる制御不能の能力『蠱惑体質』を持つ。
村の名家・郷美家を先祖代々愛して見守り続けている。その一方で、村にとって都合の悪い思想を持ったり罪を犯した郷美の者は『郷徒』という名の分家として切り離した。そして罪や穢れ、嫌われ役を郷徒家に背負わせてきたらしい。そのため郷徒の末裔である羊にも嫌悪感剥き出しの態度をとり、何かにつけて働かせたり虐めたりと毒婦のような接し方をする。憎んでいるのと同じくらい執着しているようにも見えるが……いずれにせよ、羊にとっては憎悪しか抱きようのない関係性である。
羊が不老不死となってしまった後は、相変わらず意地悪ながらもツンデレ的な態度で気にかけるようになった。犬猿の仲だが腐れ縁。
寺烏真 蓮
寺烏真 礼の実兄。二十七歳妻子持ち。現在は娘一人だが将来的に三姉妹の父となる。一人称は『小生』で普段着に法衣や甚平、着物を愛用している。その反面髪型にはこだわりがあり、学生時代はロングにしたり、今はソフトモヒカンだったりと第一印象はヤンチャな感じ。
寺烏真家長男でお寺の跡取り。義理人情に厚く真面目な仕事ぶりから檀家の人々からの信頼は強い。頼れる兄貴という雰囲気で、優れた人格の人物である。あるひとつの欠点を除いては。
歳の離れた弟を溺愛するブラコン。弟の礼のこととなるとちょっと気持ち悪いくらいデレデレになる。礼は成長期を迎えるまで小柄で、兄に憧れて髪を伸ばしていたため少女に間違われることがよくあった。さらに生まれつき霊感が強く怪異に狙われやすかったため兄としては心配が尽きず、すっかり大きくなった今もその頃の感覚で過保護になってしまうらしい。
兄弟仲が良すぎて地元では有名。礼が実家を離れて大学に通うと決まったときもかなり駄々を捏ねた。一人暮らし開始早々ヤバい怪異に囲まれている礼のことはかなり心配している。できたら家に連れて帰りたいが、弟ももう大人だし……となんとか我慢している。
『寺生まれで霊感が強い』一族として怪異対策課に協力している一人。人間や動物が変じた悪霊を成仏されるのが得意。特に年齢の近い郷徒羊のことは何かと気にかけており、学校の後輩のような感じで世話を焼いてくれている。
羊は彼にほのかな恋心を抱いているが、蓮は既婚者である上、羊は『自分のような穢れた人間を彼が愛してくれるはずがない』とはじめから諦めているので気持ちは胸に秘めている。
蓮が恋愛感情を持っているのは妻の藤代だけだが、弟の礼を溺愛するなど同性(特に年下)への友愛も深い男。羊が事故により不老不死の怪異と化した後は誰よりも彼を心配して自身の実家である禎山寺に住まわせた。その後は弟のように、娘たちが大きくなると羊のことも息子のように、そして晩年は孫のように羊を愛し大切にした。
蓮からの愛情は性愛が欠けていたが、いや性愛が無いプラトニックな愛だったからこそ、羊にとっては人生を激変させる最も尊いものとなった。蓮が老衰で亡くなった後も羊の心の中には彼から大切にしてもらった恩が残り、不老不死というただの人間には長すぎる旅路を支える信仰として咲き誇り続けるだろう。
墨洋健 & 明李平太
郷徒羊と同じ職場で働く怪異対策課の警察官であり仲間。
墨洋健は経験豊富な怪異対策課のリーダー的存在で、郷徒羊と明李平太をはじめとした霊感のある人材を怪異対策課へスカウトする役割も担ってきた。拝み屋の祖母を持ち、自身も除霊技術などに優れる。危険な蠱術なので普段は隠しているが、狗神という凶暴な動物霊を操って怪異を殺す攻撃能力も持つ。
無能な課長、まだ若い部下たちのフォローと板挟みになりがちな中間管理職。『いちいち細かいこと気にしてたらもたない』と性格はよく言えばおおらか、悪く言えば雑。後輩に対し苦労する仕事を押し付けることもあるが、一方で本当に困っているときはきちんとケアしようとする。上司としては十分良い部類の人。
元々、民間で拝み屋を営んでいた祖母が経済的に苦労しながら人助けしていたのを見かねて『自分は公務員になって除霊のスキルを活かせたら暮らしが楽になるのでは』と怪異対策課に入ったのだが、苦労は大差なく給料も思ったより少なかったのでガッカリした過去がある。出世には興味がなく、今はいち早く後輩を立派に育成し早めに退職してのんびり過ごしたいと思っている。
明李平太は郷徒羊の同期にあたるが年下。社会人としては頼りなく、マナーや知識は未熟でサボり癖もあるため郷徒や墨洋に呆れられている。
しかし霊能者としての才能は確か。彼の実家は大きな神社で、本物の龍神様を祀っている由緒正しい宮司の家系。平太が家を継ぐことはないが神主としての教育は幼いころから受けており、かつ身近で龍神様(雷轟のこと。彼についてはキャラクター設定4のページで)の威容を目の当たりにしてきた。そのため神様への畏敬の念は人並み以上で、怒れる神をなだめる作法に関してなど神様に関する知識はしっかりしている。神霊を相手にする案件では突然有能になる。
神霊にはとにかく憧れを抱いており、怪異対策課で活躍中の深雪ともお近づきになりたいとチャンスを伺っている。しかし平太は、深雪が嫌う雷轟の神社の出身のためほんのり避けられているのが悩み。例えが不敬だが、憧れのアイドルを見つめているようなオタク感がある。
ついサボってしまうルーズな面や、勉強不足による情けなさはあるものの、彼の明るく人懐っこいキャラクターは周囲を和ませてくれる。悪いことに手を染めるような心の弱さは無く情に厚いので、なんだかんだで憎めない男。
Sindy il Linley
第十二話から登場。
二十七歳独身。怪異対策課の一員にして怪異の研究者、さらに医師免許も持つ多才な青年。イギリス出身で『魔女の末裔』と呼ばれる。怪異研究が本業であり最高の趣味と本人は思っており、珍しい怪異に目がない。
第九話で羊が襲われた触手型怪異を解剖した後、触手パーツを自分の身体に移植するという実験を成功させた。中性的な美青年かつ万人に好かれる振る舞いをするが、はっきり言ってマッドサイエンティスト。その異様さは勘の鋭い一部の人には警戒されている。羊の特殊な体質に強く興味を持ち、身体を治療する代わりに研究させてもらう約束を交わした。
羊のケアと検査、生活改善のために一時期シェアハウスした。シンディには人の心があんまり無く、羊に恋心を抱きかけていることに気づいていなかった。そんなとき愛溟によって羊が洗脳されシンディを誘惑。シンディも洗脳されることにより、強制的に羊との恋人生活をさせられることになる。その際羊を改造して、男性の体に女性器がついた肉体に変えてしまった。
洗脳解除後、自身の罪に悲観して自害した羊の死に際の微笑みに心奪われ、はっきりと恋愛感情を自覚した。羊を死なせまいと奔走し、ついに彼を不老不死にして治療することに成功。シンディ自身も不老不死となった。
不老不死となったシンディは怪異対策課管理の怪異として扱われ、地下の怪異収容室に住んで監視を受けながら怪異研究を続けている。多少外出に手続きが必要になった程度で、人間だったころの生活とそんなに変わらないとか。
羊に信仰のような恋愛感情を向け続けており、どんなに塩対応されてもめげずに求愛を続けている。不老不死なので、ライバル(蓮のこと)が寿命で死んでからが本番だと思っている。そういう倫理観の無さが羊に嫌われていることは理解できていない。
愛溟 風斗
第十四話から登場。
とある教団の敬虔な信者だったが独立、宗教団体『白き雛たちの夢』代表となるも親団体を裏切り行方をくらました謎の青年。
元団体では布教に熱心で、さまざまなメディアに出演しては布教活動・信者獲得で大活躍。美しく耳に入りやすい声、明晰な頭脳、端正な顔立ちを持つ好青年だったが、信仰のため無理をして全身を漂白するなど狂信者的な側面もあった。
あるとき愛溟は蕃神と出会う。彼の宗教の神でも、日本の神でもなく。どこから来たのかわからない、姿も名も不明の邪神。悍ましき神は愛溟と何らかの取引を行い、そのとき愛溟が何を願ったのかは不明だが結果として彼は死亡した。それが『怪異対策課の事件簿』本編開始前の出来事。
現在『愛溟風斗』を名乗ってる青年は、愛溟の死体を被った邪神であり生前の愛溟の人格は消滅している。教団を裏切ったり、自身で立ち上げた宗教でも信者を怪異繁殖の生贄とするなど冒涜的な行為を繰り返したが、それは邪神の意思であり元の愛溟の尊厳を著しく貶めている。しかし邪神は人間に認識できる人格や名前を持ち合わせておらず、人間はそれを『愛溟』と呼ぶことしかできない。
物腰穏やかなようで慇懃無礼。他人の嫌がることを進んでやる(嫌がらせ的な意味で)残虐な愉快犯。
最終的な目標は水蜜であるようだが、まず水蜜の子孫である郷徒羊を襲って洗脳。自身の計画に加担させた。怪異対策課に見つかって逃亡、深雪に殺されたと思われているが……
【邪神 愛豊豊】
『あいほうと』と読む。水蜜が江戸にいた頃親交のあった稲荷神の死体を愛溟が掘りおこし、原型のない蜘蛛型の化け物に改造しくつした神霊クラスの怪異。愛溟の乗り移るボディのひとつとして利用された。
愛溟風斗の『信者を増やしたい』という願いを、稲荷神の豊穣神としての力と混ぜて歪んだ形で権能化。人間男性の頭部や女性の子宮に怪異の雛を植え付け繁殖させた。
水蜜に嫌な思いをさせるために作り出した邪神なので、用が済んだら深雪を迎え撃つための捨て駒にした。
深雪によって倒された後は元の稲荷神『白雪』として供養されて、遺骨は深雪のお社に大切に収められた。
慈雨
第十六話に登場。
雷轟の弟にあたる神霊。深雪の兄でもある。深雪は末っ子。第七話で登場した倉剣村の祭神・八景様(南八景海楽)はもともと慈雨がタコの怪異を神霊に昇華させた存在であり、『八景様』への信仰は大部分が慈雨に献上されている。八景は慈雨のことをお母様と呼んで慕っているが、慈雨は男神である。女性的な言葉で話すが、神なので自身の性別のことは深く考えていない。
神同士でも、人間に対しても交流が大の苦手。人間との関わり合いは八景に丸投げ、神同士の縄張り争いは兄の雷轟傘下に入ることで避け、自身は深海に引きこもっている。
身体がとにかく大きい。最小サイズまで縮んでも腰から上だけ水面から出して二メートルの深雪を見下ろすくらいで、海を悠然と泳ぐ際は世界最大級の鯨と並ぶかそれ以上の大きさになる。巨体のせいか大雑把で面倒臭がりだが、海そのもののように弱きものを慈愛で包み込む優しさも併せ持つ。
人間の医療技術では到底説明できない超常現象的な治癒能力があり、死者ですら復活させることができる。ただし力を与えすぎると人間を不老不死にしてしまう。過去に人間に不老不死の力を与えて厄介なことになったことが何度もあり、人間を避けるようになった一因でもある。
父神と、父似の雷轟を嫌っており、彼らに虐げられていた深雪のことは気にかけている。羊を救いたいシンディの訴えについては、深雪からの頼みでもあったので聞き入れた。本来であれば、ちっぽけな人間一人を蘇生してくれなどという願いは聞いてくれないと思った方がいい。ただ、仲睦まじい夫婦やパートナーには気まぐれに加護を与えることがあるらしい。八景にも嫁を不老不死にしてやろうかと提案したことがあるが、八景が『人間は自然な寿命で海に御還しするべき』という信条のため断っているらしい。