【全年齢版】『病ませる水蜜さん』第八話冒頭までのあらすじ
一次創作小説『病ませる水蜜さん』シリーズ第八話冒頭までの、R18要素なしのあらすじをまとめました。
第八話からはこれまで登場したキャラクターたちの人間関係が絡み合う長編になっておりますので、ストーリーの振り返りにどうぞ。
第八話は冒頭のみR18のため、その部分の全年齢版あらすじを掲載しております。
【第一話】
まずは第一話から。
第一話は全年齢版なので普通に読んでいただけると嬉しいですが、ダイジェスト版も載せておきます。
→第一話本編へ
十九歳の青年・寺烏真 礼は、民俗学の教授である郷美 正太郎に誘われ大学入学前の春休みにフィールドワークに同行した。行き先は郷美教授の生まれ故郷・神実村だったのだが……村では独自の神『根くたり様』を祀っており、現代に至るまで奇妙な因習が残っていたのだった! しかも、郷美の背後にはずっと首のない人のようなものが見えていた。礼は寺生まれで霊感が強かったのである。実は郷美は礼の能力を見抜いており、あることを頼んできたのだった。
なんと、郷美の背後にいる首なし幽霊こそが村の神『根くたり様』で、自身の頭部を山の怪に奪われ困っているというのである。
急な頼み事に戸惑う礼だったが、まだ雪の残る時期に薄着で頼りなく佇む『根くたり様』は神というにはあまりに儚かった。お人好しな性格の礼は思わず彼と会話を試み、彼が本当は『水蜜』という名前だと教えてもらう。健気に縋りついてくる水蜜に次第に絆されてきた礼は、山の怪退治を引き受けることにした。
翌日、意を決して山の怪に挑む一行であったが……あまりにも呆気なく解決した。怪異の正体は化け狸とありふれた悪霊が合わさったもので、実家の寺で除霊を教わっていた礼にとっては拍子抜けする弱さだった。この程度の怪異に負ける神様とは一体……。ともあれ神の首は取り戻し村の平穏は保たれた、と礼は胸を撫で下ろすのだった。この事件との関わり合いはこれで終わりだと。しかし……
「君、すごいね。決めた! しばらく君と一緒にいる。私も同じ大学に行く!」
頭部を取り戻し、喋れるようになった水蜜は神らしからぬフランクさで思いもよらぬことを言い出した。しかも、礼は水蜜が人ならざる者とわかっていながら、その美しさにうっかり一目惚れしてしまう。郷美の後押しもあり、なんだかんだで礼と水蜜が同棲しながらの大学生活がはじまってしまうのだった。
【第二話】
山奥の小さな村で神として崇められるだけの生活に退屈していた水蜜。大学教授である郷美正太郎を頼り、とある地方都市の大学で学生になって楽しむことにした。その大学に入学したばかりの一年生・寺烏真礼が一人暮らししているマンションに半ば押しかけで居候し、一緒に大学に通うようになる。
水蜜は早速サークル活動に興味を持った。しかし困ったことが。水蜜はコントロール不能の『蠱惑体質』という特殊な能力があった。人間の精神に作用し、女性ならたちまち友好的に、男性なら水蜜に惚れてしまうというものである。
特に男性への効果が深刻で、正気を失うほど水蜜に夢中になってしまい、精神を病ませ、日常生活でトラブルを起こしてしまうほどである。
その体質のせいで、サークルに入ると男性メンバーの中で水蜜を巡った争いが発生。いわゆる『サークルクラッシャー』として有名になってしまった。郷美と礼が火消しに奔走するも、泣く泣くサークルへの所属は断念。
しかし、あるサークルが懲りずに水蜜を勧誘。水蜜は喜んで新入生歓迎会の飲み会に参加するが……実はこのサークル、新入生の女子を酔い潰して集団で襲う悪徳サークルだったのだ。そのターゲットにされてしまうも、水蜜は怪異を呼び寄せる体質でもあった。サークルの今までの悪行が、過去の被害者たちの恨みを集め恐ろしい悪霊を呼び出してしまう。
そこに駆けつけたのが、寺生まれで霊感の強い礼であった。礼は悪霊を慰めて成仏させ、トラブルを解決。無事に水蜜を救い出すことができた。
この事件から礼は『入学早々悪いサークルに恋人を攫われかけるも救い出し、サークルの悪事も暴いたヒーロー』としてちょっとした有名人となった。
今後同じようなトラブルを起こさぬよう、大学内では『佐藤さん(水蜜の偽名)と礼は交際している』と公言することにした。実際恋人同士のように親密に接する二人。
しかし水蜜は独特の価値観を持っていた。友達は多ければ多いほどよく、気に入れば恋人同然に接する。しかし特定の恋人はつくらないことを貫いていた。
水蜜に本気で一目惚れしている礼は内心複雑だったが、不老不死の怪異である水蜜を、寿命で先に死ぬ人間一人が縛りつけられるものではないと割り切ることに。せめて自分だけは、本当の恋人のような義理を通すと決意。最低でも大学在学中は他の人と恋愛できなくなるのであった。
【番外編 一】
こちらは必須の話ではありませんが、第一話の舞台である神実村や郷美家についての深掘りや、礼と水蜜の関係の変化が語られています。
少し未来の話。礼は水蜜とは違う人と恋仲になり結婚するが……
【第三話】
大学の近くにある古い団地を一人で見に行った水蜜。そこで団地に棲みつく悪霊を惹き寄せてしまい、攫われて団地の中に閉じ込められてしまった。
洗脳されてしまい、悪霊の妻であると記憶を書き換えられてしまった水蜜。礼は彼を救うため、配達員の扮装をして悪霊の結界内に潜入。ちょっとした荒療治で水蜜の正気を取り戻して救出した。
水蜜は怪異であるが、他の怪異と戦えるような特殊能力など無く、力の強い男性ならただの人間にすら負けてしてしまう脆弱な存在であることが判明する回。
【第四話】
礼の幼馴染である長七仁が初登場。
礼と仁は実家も近く、幼稚園から高校時代のサッカー部、大学の学部に至るまでずっと一緒の大親友。お互いの信頼関係はかなり厚く、一人暮らしになっても互いの家に気軽に遊びに行く仲が続いていた。
礼は水蜜と同棲していることを大学では一応秘密にしていたが、仁には明かして二人を会わせることに。恋の気配ゼロだった親友に突然恋人ができており、驚く仁。恋人同士を邪魔するわけにはいかないと早めに帰った仁であったが、水蜜は短い時間で仁の真意を見抜いていた。
実は仁は長年、礼に片想いしていた。思春期のころにゲイであることを自覚し、親友として以上に礼を好いていることに気づいた。しかし礼に告白することはなく、これからも友達として側にいようとしていた。気持ちを伝えて、今の関係が壊れるのを恐れていたのである。
そんなある日、仁は悪霊に取り憑かれてしまう。その悪霊は水蜜に惹きつけられたもので、水蜜と恋人同士として振る舞う礼を邪魔に思っていた。そこで仁を焚き付け、礼とくっつけることで水蜜から引き剥がそうとしたのである。
悪霊に理性を奪われてしまった仁は、自分の部屋に礼を呼び出して襲いかかってしまう。何か色々あって(全年齢版表現)なんとか仁を正気に戻した礼だが、仁の片想いに薄々勘づいてしまう。
その後水蜜の仲介により礼と仁は和解。悪霊事件は『仁は取り憑かれて正気を失い礼に殴りかかっただけ。その間のことは記憶にない』ということで処理され、すべて無かったことになり二人は以前通りの親友に戻った。
さらに水蜜が怪異であることも正直に打ち明けた。仁には霊感はまったく無かったが、礼の話を素直に受け入れた。幼いころから礼が霊感の強さゆえに人知れず苦労しているのを見ているだけだったこと、それに共感や助力ができず悔しかったことを吐露する仁。今後も礼に協力を惜しまないと表明し、彼らはより一層絆の強い友となった。
恋愛とは違う形で特別な関係を築いた礼と仁を見た水蜜は、礼に対して無意識に執着を募らせはじめる。
【第五話】
第一話からのメンバーである水蜜、礼、そして郷美の三人で再び神実村を訪れる話。
故郷の村での郷美は、普段の大学教授としての真面目な顔とは違う一面を見せる。これまで何度も礼に助けられ、信頼を深めていた郷美。礼と二人きりになった夜、自身が九歳くらいのころに経験した忌まわしい思い出を打ち明けたのだった。
郷美正太郎は神実村の中でも筆頭とも言える名家の生まれだった。村の中で唯一霊感が強く、人ならざるものが見えることから村人たちからは『神の寵児』扱いされており、居心地の悪い孤独な少年時代を過ごしていた。
従姉の夜見桃子は優しく世話を焼いてくれたため慕っていたが、村の男尊女卑的な文化から大人の手で引き離されてしまう。正太郎はさらに心を閉ざした。
そんな中でも唯一、気兼ねなく遊べるのが水蜜であった。当時水蜜は正太郎にしか見えない存在で、毎日一人で遊んでいるように見せかけて水蜜と遊んでいた。そのことからさらに周りからは不思議な少年だと思われることとなる。
ある時、正太郎は村のお祭りで巫女役を務めることになった。正太郎は普段から神秘的な美少年であり、彼が花嫁にも見える巫女装束を着せられると絶世の美女のようになった。彼の巫女行列は、村人たちに畏怖すら抱かせる美しさとなった。
その姿に魅了されてしまった年上の少年がいた。彼の名は郷徒毅。中学二年生で身体もほぼ大人の男性に育っており、ガキ大将的な存在であった。村の学校は小中一貫の小さなもので、毅やその取り巻きが年下の子どもたちを威圧し虐めていた。
そんな毅にも臆せず反抗していたのが正太郎であった。小柄で中性的な顔立ちの正太郎は女のようだと虐められたが、屈することなく生意気な言動を繰り返していた。名家の御曹司でもある正太郎を普段から妬み、特に目の敵にしていた毅。
そんな彼が、女装した正太郎に煽られてついに歪んだ感情を発露してしまう。お社に正太郎を一人で呼び出し、体格の優る中学生数名で取り囲んで従順にさせようとしたのだ。それでも抵抗する正太郎に暴行はエスカレート(全年齢版表現)いよいよ怖くなった正太郎は心の中で水蜜に助けを求めるが……。
しばらく記憶を失い、正太郎が正気に戻った時に見たものは。郷徒毅ら数名が『神の祟り』に遭い、見るも無惨な姿で死んでいる光景であった。あまりのショックでまたも記憶を失い、従姉の桃子が助けに来るまで呆然としていたという。その凄惨な現場は、六十歳を過ぎた現在も正太郎と桃子にとってのトラウマとなっている……
その後しばらくして正太郎は両親と共に村を離れることになるが、水蜜と一時の別れをする際『必ず戻ってくる。村の忌まわしき因習を解き明かし、もっと良い村に変えていく』と誓った。それが現在の民俗学者・郷美正太郎に繋がっているのだという。
一連の話を聞き、水蜜や神実村には想像以上の闇が潜んでいることを知った礼。しかし礼はこれからも水蜜に関わり続けると言い、郷美のこともできる限り支えると申し出た。危険な行為であるとはわかっていたが、礼はどうしようもなく水蜜に惚れていたのだ。
【第六話】
大学四年生の先輩・豊島が初登場。
郷美ゼミ所属の学生を取りまとめるゼミ長の豊島は昨年の冬ごろから母親の故郷であるアメリカに行っており、礼たちが入学してしばらく経った初夏に戻ってきた。
豊島が不在の間に、まだゼミ生でもないぽっと出の一年生(礼)が郷美と親しくなっており、二人で旅行にも行っていると聞いて許せなかった豊島は礼を呼び出し詰問する。豊島は特に郷美を尊敬しており、その熱心さは崇拝レベルだった。その勢いに圧倒され返答に困る礼だが、通りかかった水蜜の機転で救われる。
その後郷美も交えて冷静に話した結果、豊島も霊感がある側の人間であると判明。豊島の母方の祖父は悪魔祓いの系譜に繋がっており、豊島はその伝承を受け継いではいないものの怪異に関する危険察知能力に優れていた。その能力を活かして郷美の危機も何度か救ってきたという。礼は素直に水蜜のことを話し、礼と郷美の事情は理解される。
さらに水蜜の思いつきにより、豊島も巻き込んで神実村の観光事業を手伝うサークルのようなグループ『神実村おこし協力隊(仮名)』を設立しようということになったのだった。
そうして豊島が仲間に加わった後、ある怪異が水蜜を頼ってやって来た。
玻璃鏡と名乗るその怪異は定まった姿を持たず、ターゲットとした男性(ただしイケメンに限る)の心を読んで『その人が最も恋愛的魅力を感じる人物』に化けることができると語った。その話を信じない豊島にムキになった玻璃鏡は、豊島のことも夢中にさせてみせると挑戦状を叩きつける。
どうせ自分をその気にさせることなどできないと思っていた豊島であったが、その日の夜に自宅に訪問してきた玻璃鏡の姿に驚愕する。本物と寸分違わず記憶や性格まで再現された、郷美正太郎のコピーになっていたのだ。そう、豊島は郷美を尊敬しているだけでなく、決して叶わぬ恋心も抱いていたのである……(この後の展開は全年齢版では省略)
郷美の素顔は意外とヤンチャでちょっぴり不思議だったこと、郷美は第五話の事件から大きな男性に組み伏せられることにトラウマを抱えていること、豊島は郷美に対してのみ忠犬のようにふるまうことがわかる回。
【第七話】
夏休みになり暇を持て余す礼に、仁から海辺でリゾートバイトをしないかとの誘いが入った。水蜜は別行動することになり、礼と仁の二人だけで小さな島にある漁村『倉剣村』の旅館で二週間働くことに。
礼たちは旅館で共に働く地元の女子高生・伊藤マキと親しくなり、彼女の兄・栄が海で遭難しかけてから様子がおかしいことを知る。その後礼たちは偶然、栄らしき男性が何かに操られるように夜な夜などこかに向かうところを発見した。後を追ったところ、栄が巨大な蛸の化け物に攫われている現場に遭遇し慌てて逃げ出すこととなる。
大蛸の正体は、倉剣村で古くから信仰されている神様こと『八景様』であった。人間に信仰されて力を得た『神霊』はただの悪霊や怪異とは格が違い、ただの人間では太刀打ちできないと語る礼。
栄を救出することがかなわなかったことに無力感を感じる二人であったが、せめてバイトは最後までちゃんとやろうと話し合う二人。
しかしそこに八景様が襲撃、危うく礼まで攫われそうになってしまう。そこで仁が決死の覚悟で神霊に対峙することとなった。霊能力などの無い一般人にも関わらず、仁はある機転で八景様の説得に成功。第四話から繋がる二人の絆のおかげで、礼は無事に解放される。
結局八景様に対しては見逃してもらうよう祈るしかなく、攫われた栄は戻って来ず。ほのかな無力感を抱きつつ島を去ることになった二人。しかし一番辛い立場のはずのマキは、二人が出来る限りのことをして励ましてくれたことに深く感謝した。そして秘密のお土産に、特製のお守りをプレゼントしてくれたのだった。
大体の怪異はワンパンで倒せる礼でも、神霊には無力であることがわかる回。あと、仁が礼に向ける感情がかなり重いこともわかる回。
【第八話】
一『甘露花魁と白魔』全年齢版あらすじ
時は江戸時代、水蜜が吉原の遊郭で遊女『甘露花魁』となって過ごしていたときのお話。
乱暴者で人を傷つけることで恐れられている身の丈七尺ほどの大男、通称『白魔』が水蜜のもとに押しかけて来た。
白魔は、自分の本当の名前も出自も忘却しており、人間からの信仰も失って孤独に彷徨う武神であった。彼が求めていたのは、永久に寄り添ってくれる美しい伴侶だった。『甘露花魁は刀で斬られても一晩で元通りになった』という噂を聞きつけ、真相を確かめに来たのだ。そしてそれは真実だった。甘露は……水蜜は、不老不死の怪異だったからだ。
水蜜は白魔のことを気に入り、新たに『深雪』という名前をつけて可愛がった。深雪もすっかり水蜜に惚れ込んでしまい、求婚するが断られた。水蜜は特定の恋人や伴侶はもたない主義だからである。ただし友達としてはぜひ遊んでほしいこと、一緒に遊びに行くために遊郭から連れ出してほしいことを深雪に頼むのだった。
「いいだろう。何度でも攫ってやる。ここに閉じこもっていようが、どこに逃げようが、な」
こうして生まれてしまった怪異コンビは、しばらくの間江戸の街をお騒がせすることになる。
遊女であるのに町娘に扮装し、遊郭を抜け出して遊びに行ってしまう破天荒すぎる花魁。強引に乗り込んできては、堂々と花魁を攫っていく異形の侍。連れ立って歩く姿はどう見ても人間ではなかったが美しく、仲睦まじく遊びまわる噂が江戸中のあちこちで聞かれた。春の陽だまりのような蜜月であった。
しかしある日突然、不思議な花魁も白い怪物も、忽然と姿を消してしまった……
そして、物語は現代に戻る。
第八話へ続く
(二『武神襲来』から読んでください)
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