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病ませる水蜜さん 第十話余談一【R18】

はじめに(各種説明)


第十話の二『初詣に、また神霊』直後のおまけシーンです。読まなくても本編には支障のない場面なので番外編的に分けました。R18を避けたい方は飛ばして頂いて大丈夫なお話です。

【特記事項】
・普段は攻めの深雪が受けになる話です。デカくてガチムチ俺様攻め男が、もっと強い雄に組み敷かれる肉厚なお話……のはずなのに、雷轟視点なので深雪が可愛い受けな気がしてくる小説ならではのバグが発生しています。
・R18シーンは雷轟×深雪のみですが、深雪×羊要素もあります。
・第十話を読んでいること前提で書いています。
・今後もこの一次創作BLシリーズはCPも受け攻めも固定しません。好きな組み合わせの小説を選んでね!
・このオリジナルシリーズは私の性癖のみに配慮して書かれています。自分の好みに合うお話をお楽しみください。

ご了承いただけましたら先にお進みください。

縦セタ着せたかっただけの絵


余談一『雷轟と深雪』


 明李の実家に泊まることになった郷徒は風呂を借りた後、夕食の団欒は丁重に辞退して社殿へと向かった。目が覚めたらすぐにでも郷徒のもとへ来るだろうに、気配を感じない深雪を案じてのことだ。
(まあ、起きたら俺のところ来るだろうなって考えは驕りかもしれないけど……あんな目に遭ったんだから、どれだけ荒れてるかわからないな。気が重い)
 明李に借りたスウェットだけでは寒いので自前のコートを羽織り、誰もいない境内を歩く。
「……あ」
「何だ、愛車が心配で見にきたのか」
「いや……」
 車を預けた場所から、ちょうど出て来た雷轟と鉢合わせた。できれば雷轟とは顔を合わせずに、深雪の様子だけ見たかったのだが。
「今にも壊れそうな儚さがあったからなあ。そこがまたそそるのだが」
「壊して……ないですよね?」
「壊れそうな美を壊すような野暮はすまい。むしろそのへんの怪異は近寄っただけで消し飛ぶくらいにしておいた。何かあったら車に逃げ込むが良い。お前も犯されずに済む」
「ありがとう、ございます……」
 当然のように、怪異に陵辱されている日常を見抜かれている。ついでにお宅の弟さんにも定期的に犯されてますよ、とはとても言えなかったが素直に御礼を述べておいた。
「心配しているのは深雪の方だな」
「……」
「お前も人間でありながら随分……神に寄り添うような真似をするのだな。昼間の小僧といい」
「礼さんは……あの少年は、悪霊に堕ちかけた深雪さんの暴走を鎮めて、今のように怪異対策課に居てくれるように説得するきっかけを作ってくれた人です。彼のお兄さんと一緒に」
「ほう」
「人間ごときが不敬だと思われるかもしれませんが、彼なりに深雪さんを助けようとしてくれていました。もう一柱の神霊、水蜜さんの方がお察しの通り性悪なので、振り回される男同士で思うところがあったんじゃないでしょうか。それに加えて、今日は深雪さんのお兄様まで現れた。礼さんたち兄弟も人間としては歳が離れていて、幼い頃から大層可愛がられて育ったと聞いています。今日雷轟様に申し上げていたことは、そういう背景があってのことかと」
「成程、随分お人好しな小僧だったわけだ」
 少々冷たくあしらいすぎた。だがこの程度は大人になる前に経験しておくべきかと独り言のように呟く。
「そしてお前もお人好しだな。霊力の強い人間ほどよくいる性格だ。何もかも背負おうとするな。一昔前であれば神子だの神の花嫁だのと担ぎ上げられ、都合よく使われた挙句生け贄にされる運命だぞ」
「現代も似たようなものですよ」
「それなら余計に改めた方が良い。平太くらい能天気になれ」
「明李さんは能天気すぎると思いますがね。それで……深雪さんは、まだ目覚めていないようですね」
「そうだな。他の神霊が攻めて来るかもしれんという時に悪いことをした。今晩は吾がみておくから、お前はもう休め。人間には寒いだろう」
「いえ…………はい。ありがとうございます。明朝改めて伺います」
「うむ」
 郷徒が白い顔で身震いしたのは、寒さのせいだけじゃない。急に、妙な優しさを見せた雷轟のしぐさには嫌というほど覚えがあって。何か、他の悍ましいものを隠しているときの。取り繕った優しさだと思った。郷徒に兄弟はいない。しかし、雷轟が深雪に向ける視線は異様だと思った。
(深雪さんほどの神様を、俺なんかが心配するなんて不敬にもほどがあるんだけど……このまま自分だけ何もなくやり過ごすなんて、なんか、すごく、嫌だな)
 込み上げる吐き気に、夕食を辞退しておいてよかったと安堵しながら。厭な酸味を押し戻して、郷徒はとぼとぼと元の道を歩くのであった。

 静寂に包まれた社殿の中。神主やその関係者しか入ることを許されない奥深くに、神は座す。夜が深まれば人間は完全に締め出され、厳かな神気で満たされた空間にいるのは神霊のみとなる。
 うっかりやりすぎた、と人間にはふざけておいたが。敢えて深く傷つけた。こうして、社殿に囲うために。一晩と言ったが、あわよくばこのまま置いて行って欲しかった。そのくらいのつもりで雷撃を加えた愛弟は未だ目を開けず、布団の上に丁重に寝かされている。
「深雪」
 誰よりも古い付き合いのはずなのに、今日初めて知った彼の名を呼ぶ。
 腰にある結び目の端を摘んでゆっくり引っ張ると、雪の結晶柄をあしらった袴がはらはらと解けていく。次いで腕の防具等も消え、真白な着物だけ身に纏った状態になった。神霊の装備は、基本的に神霊自身の気で練り上げられている。ゆえに格上の神が干渉すればこんなこともできるわけだ。もっとも、誰かの服装を勝手に変えたり脱がせたりするなど無礼極まりないのは人間も神も変わらない。意識のないうちに、こういうことを躊躇いもなく行う。それが雷轟の、深雪に対する扱いということになるわけで。
 防具がなくなったことで、片肌脱いだ右肩から胸にかけてが露わになる。窓から注ぐ月の光は冬の空気に冷やされ、白い肌を妖しく照らす。
 人間の目には見えないだろうが、深雪の首筋には大きな傷跡があった。うなじからばっさりと切り落とされて、それを乱雑にくっつけた歪な痕跡。そこに舌を這わせて、唾液で濡らす。傷跡は、綺麗さっぱり無くなってしまった。
 神霊の体液には、人智を超えた力が秘められている。顎をとらえて上向かせ、首周りが綺麗になったのを確認してから、そのまま半開きの唇を食んだ。
「……ッ!」
「やっと起きたか。いいぜ、このまま舐めるといい。血の方が効率がいいからな」
 目を開けた深雪は、殴りかかった瞬間で時が止まっていたかのように即座に攻撃性を取り戻した。口にある不快な感触に反射的に噛み付いていた。下唇に傷ができて血が流れたが、雷轟は構わず息がかかる距離のまま囁いて再び唇を奪った。深雪は抵抗することができなかった。自然と口腔内、そして喉奥へとぬるい血が流れる。失われていた全身の感覚がじんわりと戻ってきたが、次に襲ってきたのは『感覚はあるが、まともに動かせない』という絶望であった。
「まだ動けないのか? 相当深いところまでやられていたようだな。あの雷撃で、腹の中の呪いを全部焼いてやったからな。はらわたごと」
「焼いた? 呪いを……?」
 呪いとは、水蜜の首を切り落としたとき仕返しにもらった蛇のことだ。口から腹の中に滑り込んで、内側から凄まじい激痛を深雪に与えた。その苦痛と、水蜜を逃さないという執念の果てに深雪は堕ち、危うく悪霊化するところだった。百年余り抱えて苦しみ続けていた宿痾を、たった一撃で焼き尽くしたというのか。
「それ以外も巻き込んだがな。だが神性は増した気がするだろう? 中身はスカスカだが、純度は取り戻したからな」
「おまえは、なにを、かんがえて……」
「そりゃあ、可愛い弟を治してやりたいに決まっているだろう」
「まだそんなことを」
「お前こそ。血の味でわかったな? 自分のもののように馴染む神気で確信しただろう。紛れもなく、吾等は兄弟神だよ。吾はお前に足りないものを、欲しているものを持っている」
「勿体ぶった言い回し……慈悲深き神ではないことだけはわかった」
「記憶が戻ったか? いや、ここまでがっついていれば子供でもわかるか」
 見通した深雪の軽蔑するような眼差しには開き直り、未だまともに動けずにいる肢体に覆い被さる。雷轟自身も軽装になりながら、深雪の腰に触れ帯を解いて着物の合わせを完全に開いてしまった。
「血を飲ませるよりも、雪の肌を味わいながら精を注いでやるほうがさらに捗る」
「下衆が……血の繋がったきょうだいであると、宣った同じ口で言うことが……っ、」
「記憶を失くしても生意気な口はそのままだな」
 先ほど治したばかりの首を鷲掴み、みしみしと音を立てて締める。
「きょうだいの中で一番小柄でか弱いお前。強がって反抗してばかりの口から、負け犬の啼き声しか出なくなるまで可愛がってやるのが快いんだよ。業腹だがそこは親父と同意見でな」
 されるがまま苦痛に呻く声には満足げに手を離し、屈辱に震える頬を愛おしげに撫でる。
「何、一通り楽しんだら全身治すし、前より元気になるから安心しろ。陰陽寮の若い神霊に遅れをとりたくはあるまい」
 深雪を見下ろす雷轟の表情は昼間とは別人のようだった。人間にはああして愛想を振り撒いておきながら、愛欲を向ける獲物へは斯くも凶暴な目を向けるのか。
「何が、目的なんだ……」
「言っているだろう。お前を抱きたい。そのために、呪いで歪んだ肉体は前払いで治してやったし、さらに『吾が力を分け与える』と餌までぶら下げている。口説いているのがわからんか?」
「理解できんな」
「うぶだなあ。記憶を失くしてからは初めて犯されるのか? 吾は運が良いな」
「……」
 話が通じない、わからないと判断したのか、深雪はそれ以上何も言わなかった。気に入らないものを殴りたいにしても、全身力が入らず起き上がるのがやっと。それも雷轟に覆い被さられているので敵わず。反撃の機会を狙う目だけは鋭く、肢体は無防備に投げ出した。
「それでいい」
 人のかたちをしていてもあくまで龍なのか、深雪の肌を撫でる手の感触はひんやりと滑らかだった。心底嫌そうに歯を食いしばっていたが、下腹部まで至った指が陰茎に絡められればたまらず息を呑んだ。
「……っ、は……」
「相変わらず人の形を作るのが下手だな。手足の末端から白雪の如き毛並みが生え揃ってきているぞ。これはこれで抱き心地が良いから構わんが……それ、少し気を抜くとまた変化が綻ぶ。ここもな」
 普段は人の形状に合わせている陰茎が、深雪本来の魂のかたちに近い狼の……イヌ科のそれに変化している。大きく変わったのは根元が膨らんだ亀頭球で、勃起するとさらに大きくなる。雌に挿入してから、簡単に離すまいと膨れて喰らいつくそこは長時間にわたって交合することを強制する。深雪に抱かれ慣れている水蜜すら『こっちはかなりキツい』と泣き言を漏らすほどだった。
 そんな女泣かせの男根が今は雷轟の手の中、発情させて具合を良くするための性感帯として弄ばれている。根元のふくらみを、膣を模した指の輪で締め付けながら扱き上げるとあっけなく勃起し、なす術なく射精する。
「お前は魔羅にいたるまでなめらかで良いな。色も淡くて美しい。どうにも吾のは不格好で……」
 絶頂させられて荒く上下する深雪の腹の上に、雷轟の怒張が投げ出された。見慣れないその形状の悍ましさに顔を歪めると、雷轟が嬉しそうに笑った。
「何だ、初めて見たような反応をしてくれるな。ああ、初めて見たのか。忘れているから。好いな、ここまで初心とは」
 蛇の陰茎は二本ある。雷轟のものもそれに倣っていて、深雪並みに立派なサイズのそれが二倍、二股に生えてそれぞれはち切れんばかりに勃起していた。それだけでも異様な様子であるのに、表面は無数の棘のような突起で埋め尽くされグロテスクな色で脈打っている。
「一本ずつ交互に使えば三日三晩は余裕で抱けるんだが……今晩はもう数刻しか猶予が無いからな。それに他でもないお前だ。二本一遍に喰わせてやる」
 ここまで入るな、と心底楽しげに見下ろしながら。赤黒い魔羅が白い腹に擦り付けられる。イボ状の無数の突起が生え揃った肉棒で亀頭球を挟まれ擦り上げられ、一度射精して落ち着いていた性器も否応なく反応する。
「こんな、薄汚いもの……」
「なんだ、腹が破れそうで怖いか? 大丈夫入るさ。二本まとめたところで親父の魔羅のが立派だった。あれも咥え込んでいたのだからこのくらい余裕だろう……身体は忘れていないだろうしな」
悪態をつく深雪の身体を軽々裏返す。うつ伏せの姿勢で尻を高く上げさせると、ゆっくりと怒張の先を擦り付けた。
「尾も隠しきれなくなったか。お前は本当に愛いな」
 怒りや戦いで昂ったとき、露わになる尻尾や耳の付け根を嬲ると悦く締まる。そういうことを知り尽くすほどに抱いてきたが、ついに手に入らないまま儚く散ったと思っていた。緊張で毛のふくらんだ尾を鷲掴んで引き寄せる。途方もない時間、行き場を亡くしていた欲望を力任せに捩じ込んだ。
 一途な愛情、しかし苛烈で独り善がり。嫌というほど兄弟はよく似ていた。それがこの神霊一族そのものの性なのか、雷轟から深雪へと刻み込まれた傷なのかは定かでない。
「やはりお前が一番快い。柔く温い肉でありながら、思う存分犯しても壊れんからな」
 互いに強靭な肉体を持つので、慣らしもせずにまぐわっても即座に傷が塞がってしまう。捩じ込んだ側も痛みを感じない。一本ですら十分巨根なのを二本使われて、本来ならとっくに裂けているくらい肉壁は伸ばされきっている。薄く敏感になった胎内を、無数の突起がぞりぞり擦り上げる。流石の深雪もこの拷問が如き責めには俯いてひたすら耐えるしかなく、二人の荒い息遣いと深雪の喉奥で微かにうめく声だけが静かな社殿内に響いていた。
 一切の無駄を削ぎ落としたような、見事に彫り上げられた彫刻のような。その美しい背中を見下ろす。そう、一切の無駄が許されない中で、彼は戦うのに最も適した肉体を練り上げ保ってきた。名を奪われ打ち捨てられた後、自然の中のわずかな神秘を啜って生き延び、人間を暴力で支配して日銭のような信仰をかき集めた。誰にも弱みを見せることなく、威容を誇り続けた。
 『自分は狼のかたちの武神である』それだけが、彼に残された記憶であったから。孤独であっても美しく、気高く、誰よりも強く。その立ち姿も生き方も、機械仕掛けじみて冷たく完成されていた。
 その完成された美を地にねじ伏せ、人間の前で敗北を突きつけた。哀れな過去を暴き、弱さを曝け出してやった。無力さを覚えさせ、更なる力をチラつかせて最後の抵抗も奪い取った。今、苦しげに呻くばかりの獲物となった彼を犯している。
 呪われ黒く変色していた臓腑を神雷で焼き尽くし、虚になった腹の中に雷轟の神気を注いで埋める。一時は悪霊にまで堕ちかけた深雪の肉体は、本来の神霊らしいものへ戻っていく。その代償と言わんばかりに、彼の尊厳は陵辱されているわけだが。
 『深雪』という名を得て、ただ誇り高き武神であれと新たに生まれ育ってきた彼の自我が濁る。失った記憶を慰めるように積み上げてきた、健気な意志を踏み躙る。お前は生まれたときから神を殺すための神だったのだと、怨みを孕ませる。時間はかかるが、何もかも元通りになる。都合のいいところだけは、雷轟の望み通りに捻じ曲げられながら。
「もう、親父に復讐する必要はなくなっているがな」
 白く柔らかな髪の合間からのぞく尖った耳に囁きかけ、毛並みが薄く桃色の柔肌が見える内側を蛇のような細長い舌が舐る。
 存分に憎めばいい。氷のかんばせを笑顔で綻ばせることが叶わぬのなら、怒りで溶かす。
 窓から薄らと光が差し込むころ、雷轟は一息ついて身体を離した。夢中になりすぎたか、という手応えでも気絶だけはしなかった深雪の根性には素直に感嘆した。床に手をついて下を向いていた深雪の顎を掴んで引き寄せ、最後の仕上げは口移しで与えてやる。先程より強く噛みついてきた獰猛さには、満足げに目を細め血塗れの唇を歪めて笑った。
「好きなだけ飲んでおけ」
「その余裕、後悔しても知らんぞ」
 ここまでやられたのならとことん奪ってやろうと開き直ったようで。雷轟の紅く染まった唇へ、深雪から口をつけることに躊躇う様子は無くなっていた。

 雷轟が社殿の外に出ると、入り口の門前で羊が蹲っていた。しゃがんで、膝を抱えて、顔をマフラーに埋めて俯いている。静謐を裂く、雷轟の足音と気配にはすかさず身を震わせて飛び起きた。
「まさか、夜通しここに座っていたのか」
「少しだけ早く、着いてしまっただけです……いつが『明朝』なのか、わからなくて」
 人間など小さすぎていちいち見てはいない。だが、梅の木に訪れる鶯を愛でる細やかさくらいはある。
 親を待つ子のような。酷く震えているが、これは深雪を返すまで頑なに此処に居続けるのだろう。憐れさを塊にしたような姿に雷轟は目を細めた。
「佳い供物だった。お前、名前は」
「あ……」
 羊が咄嗟に言い淀んだところで。
「言うな」
 雷轟の後ろから、深雪が現れた。すっかり身支度は整えられていたが、その表情は普段より物憂げだった。
「帰るぞ」
「……はい」
「またいつでも遊びに来い。歓迎する」
「次に顔を合わせるときは、おまえを殺す時だ」
「それは良い。また遠慮なく愉しめる」
「……」
 深雪はそれ以上は何も言わずに、羊へ手を伸ばした。いつか峠道で車が壊れたときにされたことを思い出し、羊は地面に転がるように逃げ慌てて手荷物を掴んだ。案の定深雪は羊を小脇に抱え、車を神社に置いたまま自身の足で帰路についてしまった。雷轟の手垢がついたことが余程嫌だったようで、車は後日明李によってこっそり送り届けられることになる。

「深雪さん」
「……舌を噛むぞ。黙ってろ」
「陰陽寮から返答がありました。月極さんはじきに動きます。よろしくお願いしますね」
 できるだけそっけなく、いつも通りに振る舞おうとしている声は猛烈な風の音に混ざっても妙に良く聴こえた。
「言われずとも。蜜の害になるものは、何であろうと叩き斬るだけだ」

第十話 本編へ続く

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