また特定の芸人について語る4 (ラスト)
というわけで2019年のM-1がスタートした。シードで2回戦からなわけであるが、例年通り準決勝まで勝ち上がってきた。この年のM-1は人気どころでも常連どころでも容赦なく落とされたイメージがあり、嘘ここ落とされたの!?という組が多かったため、やはり凄いなあなんて思ったりした。ただ、レポや準々決勝の評判でしかなかったが正直準々の漫才はウケとしてはボーダーという声が多かった。落とされないとは思うけれど、落とされてもおかしくない。それでも勝ち上がったわけであるが、ファンとしては不安であった。お客さんも賞レースでかまいたちが出てきたら、「お、ラストイヤーのかまいたちだ!」と構える人も多かったと思うし、期待されている半面プレッシャーもある。優勝、最終決戦どころか決勝に行けるのかも確証が持てない。そんな気持ちにかられながら準決勝の日を迎えた。
準決勝はこの年、全国の映画館でライブビューイングが実施されスクリーン越しではあるが観に行くことが出来た。かまいたちの出番はCブロック。それまでもみんなウケていたし面白いし、やっぱり準決勝の末恐ろしい程のレベルの高さを実感していた。さあ出番が来た。ネタは「トトロ」ほぼ祈るように最初は見ていたが、バッキバキの山内さんのボケに会場がウケているのが分かってきて、後半は力が抜けてゲラゲラ笑いながら見れていた。まだ残ってはいたが漫才が終わった時点で私はかまいたちの決勝行きを確信できた。決勝進出者の会見では5番目に呼ばれた。安堵と同時に会見を観ながら興奮が止まらなかった。というのも2019年の決勝進出者は正規の進出者9組中決勝経験者が2組しかいなく、去年が割と常連どころが多かったためかとても新鮮な面子になったからだ。しかも準決勝を観ていたため、その時面白いなあとかここ行くなと思った方が殆ど行った。やばい、M-1めちゃくちゃ本気だと。その中でむしろ浮いている常連のかまいたち。決勝進出者がズラッと並んだ時に親のような貫録を感じた。
さてここ数年のM-1の傾向的に初進出者が有利な印象があり、それは割と他のお笑いファンも思っていたことであった。これを踏まえ、割と多かった意見が「かまいたちは優勝できない」「最終も無理」といったものであった。確かに最近、特に去年のイメージからしたらそうかもしれないが、シンプルにそれを勝手に予想して勝手に無理だ無理だという意見を投げかけるのはあまりにも非情すぎないかと思った。というわけで私は順位予想をしなかったのだが、不安要素がなかったわけではない。というのも、なんとなく籤運が悪い気がしてならなかったのだ。トップバッターとか、めちゃくちゃウケた組の後とかに出そうだなと思っていた。
決勝当日。OPVの「俺たちが一番面白い選手権」この年の優勝は山内さん。予想はしていたけれどありがとうございます。そんな思いもつかの間、出番に関する悪い予感は的中してしまう。
2番手で「かまいたちです」と呼ばれた時は断末魔の叫びを家で上げていた。まさかこの不安が当たってしまうとは!しかもよりによってラストイヤーの年に!なんてこった!母は隣で「まだ分からないから!まだ漫才始まってないから!」となだめていた。煽りVのラスト「さあ、最後まで思いっきり楽しむが良い!」そこから繋がるあの曲。この出囃子で出てくるのを観れるのはこれで最後。焼き付けよう、絶対に絶対に忘れないように。
山内さんが「僕この間UFJに行って・・・」と始まった時は鳥肌がぶわーとたった。去年の勝負ネタ。芸人さんの口からも、お笑い好きからも「なんでこれ決勝でやらなかったの」と散々言われてきた「UFJ」まさか、最後の最後に見ることが出来るとは。出番とか、そんなこと関係なしに会場にハマる、めちゃくちゃウケる。「もし俺が謝ってこられてきてたとしたら~・・・」はM-1史に残る名セリフ。この場でこの意味が分かりそうで全く分からない言葉を聞けるとは。涙を流して笑う松本さん。嗚呼幸せ。(ちなみにこの漫才についてはこの記事にもう少し詳しく感想を書いているので是非)
https://note.com/towanonn717/n/n3bb75ced0a4f
点数発表。去年のトラウマを思い出す。ただただ私は祈っていた。審査員の名前と共に読み挙げられる点数。並ぶ高得点。叫んだ、今度は喜びの雄叫びだった。出番に左右されるって勝手に思っていた私が、彼らのことを信じていなかったことにここで気づかされました。そうだよ、かまいたちは面白いんだ。点数にもうすでに涙ぐんでいる濱家さん(そう見えた)。それを観て「まだ泣かないでー!まだ早いー!」とまた叫ぶ私。松本さんの「ええコンビやなあ。」で次は私が泣く、結局この時点で泣いている。
2番手であるが点数的にもう最終決戦行きを確信していたためこれ以降のファーストラウンドはほんの少しだけリラックスして見ることが出来た。そして7番手で出てきたのがそう、ミルクボーイ。その日一番のウケどころか歴代最高得点を叩き出す。私、この日、何度目の号泣か。かまいたちの点を上回ったからではなくシンプルに感動して泣いていた。夢ありすぎるでしょM-1!そういえばキングオブコント2017で暫定1位だったかまいたちを上回ったのも7番手のにゃんこスターでしたね。どこか繋がりを感じました。
さて暫定2位で迎えた最終決戦。出番は例年通り2番目。最終決戦の出囃子で出てくる2人。ずっと手の届かなかった2ネタ目披露。ようやく、2本目を見ることが出来る。かまいたちのM-1で披露した最後の漫才は準決勝でも見た「トトロ」。そこで見たときよりも格段に面白かったし、ウケている気がした。お客さんに手を挙げさせるところはその数ごとに展開を変えているというまさかのマルチオチ。これをM-1でできるのが恐ろしいし凄い。息継ぎの場所のところは準決勝でも腹抱えて笑ったなあ。やっぱり面白い2人だ。
結果はCMの後ででずっこける2人。これが見れるとは、ありがたや。結果発表。正直もうミルクボーイかもな、というかミルクボーイの空気だなと感じ取っていたが、最後まで祈った。あきらめなかった。審査員の票が開示されていく。「ミルクボーイ、ミルクボーイ、ミルクボーイ、ミルクボーイ」終わった。ずっと挑戦し続けた、何度落とされてもあきらめずに出続けたM-1がこうして終わった。「かまいたち」松本さんの票が入る。ありがとうございます、本当に。舞う金紙と銀紙。でもKOCとは違ってかまいたちに向けられたものではない。後ろで拍手をしている2人。その表情はどこかスッキリしているように見えた。またまた泣く私。やっぱり悔し涙じゃない、ミルクボーイが優勝して感動の涙だった。そしてかまいたちお疲れさまでしたという涙。どんだけ泣いたんだこの日。(敗者復活戦でも泣いていた)
1月にはアナザーストーリーが放送された。そこで山内さんが「濱家がM-1出たいって言った。出てよかった。ここからやね。」と言っていた。出たいと言ってくれて濱家さんありがとう。そして、かまいたち、ラストイヤーでM-1に出てくれてありがとう。大会以降、M-1を終えた2人に「今はゆっくり休んでください」という声があったが、個人的には何か死んだみたいになっていて嫌だなと思っていた。アナザーストーリーでも言っていたように、これからなのだ。芸人人生これからの方が長いはず。M-1は終わったけれど漫才師、芸人としての彼らは始まったばかりだと思う。
M-1について、私みたいな人間には到底計り知れないくらいのプレッシャーがあったはずだ。勝手に期待されて、予想されて、非難されて、幻滅されて、大変だったと思う。ファンの私でも胸がたくさん締め付けられた。これで賞レースは本当に終わり。これからはそのことに囚われない自由なネタを観れるのかと思うとワクワクが止まらない。きっと仕事の幅も広がるんだろうなあ。
そして4月24日。きゃりーぱみゅぱみゅの新曲「かまいたち」のMVに出演することが発表された。世界的アーティストとの夢の共演。きゃりーちゃんがメイキングで「タイトルを言ったときにスタッフさんが芸人さんの?って(笑)」と言っていた。爆笑レッドカーペットで銅鑼を叩いてボケていた鎌鼬は、「かまいたち」というワードを聞いて大多数の人が1組の芸人を思い浮かべるくらいに遠いところへ行っていた。
歌ネタ王決勝進出決定で「賞レースの決勝行くの初めて!」と言って手を震わせていた2人、キングオブコント2016の紹介Vで「全国の賞レースにコンプレックスがある」と言っていた2人。そんな彼らが歌ネタとコントで1番になり、漫才で2番になった。とんでもないネタの猛者になっている。さあ、あとはR-1だ(嘘です)でもこれだからお笑い好きやめられないんだろうな。
Youtubeチャンネルも始まって、自粛期間中の楽しみの一つになっています。更新も、生配信も思っていたより多くて嬉しいです。
小さい頃から知っていた芸人さんがまた一組、また一組とM-1を終えていきます。そして去年はとうとうかまいたちも。意外と、ラストイヤーを迎えるのはあっという間。この間まで、あと5回出れるな~とか思っていたのにもう15年目!?と驚きを隠せないこと多々。全国のお笑い好きの皆さん、特に応援している漫才師がいる皆さん、なるべく悔いが残らないように毎年全力で応援してくださいね。私は2018年でかまいたちが本当にM-1を最後にしていたら、確実に後悔していたと思います。もっと寄席とかたくさん行って漫才を生で観れたら良かったと絶対一生後悔していたと思います。自粛期間が終わって劇場が再開したら、時間とお金が許す限り是非たくさんライブに足を運んでくださいね。
改めましてかまいたち、遅くなりましたがM-1お疲れさまでした。たくさんの笑いと、夢と、興奮を届けてくれてありがとうございました。
そしてこれからもよろしくお願いします。