37.自己責任の在り方

37.自己責任の在り方
 
我が国の基層にある問題点、一度落ちたら這い上がれない事だがこれを社会は「自己責任」という言葉に置き換える。
 
フィンランドで34歳の女性首相が誕生した。女性の社会進出については今更言うまでもないことだが、我が国がいかに遅れた国であるかは多くの日本人も知っていよう。この国で30代では首相はおろか閣僚になる事すら難しい。いやその前提である政治家として議会へ行く事すら困難だ。選挙制度とかの話はいいとしてこのフィンランド首相、スーパーのレジ係が首相になったとまで言われている。
 
教育制度も国によって異なるがフィンランドの義務教育は9年。その後、我が国で言う工業高、商業高のような職業校、大学進学を前提とする我が国の普通科高校に相当する学校へ分かれる。もちろん進路変更は可能だし、そのための予備校もあってしかも「無償」だ。この首相は父がアル中で両親は離婚。母はいわゆるレズで再婚相手は同性。その実母も養護施設出身という。家族の中で我が国で言う高卒資格を得たのもその首相が初めてという、我が国で言えば「困難家庭」なワケだ。それに一度、中卒や高卒で就職して社会人となってもより上位の学府で学び直す制度も整備されている。社会人学生となってキャリアを積んでより高額の収入を得る道が当たり前のように用意されている。
 
他方、我が国では大学によっては特待生という制度もあったりするが、建前上どんなバカ学校でも「第一志望」という前提がある事から、過年度生つまり浪人などは「対象外」となる事も多い。
 
それに比べてフィンランドでは、大学院まで学費はおろか教材費も国費負担。もちろんその代償として税金などの国民負担率は高く消費税だけで24%(食品17%)。社会保険料を含めた負担率は65%近くになる(我が国は44%、米国は州に拠るがNYで37%)。どちらがいいかは歴然としているが、フィンランドなどは福祉国家として充実しており自己責任に置き換えられない社会なのだろう。
 
安倍元総理を襲撃した山上さんがこのような世界で生まれていたら、確実に自らの恨みで殺人者になる事はなかっただろう。山上さんのやったことを擁護するものではないが、殺人者にならなくて良かった社会と言うのは即ち親に経済力がなかったり、あるいはバカでも自分自身が安定して社会生活を送れる「基礎」なのではないかと感じるのだ。
 
フィンランドの首相は就任演説に際して「社会の本当の強さは、最も豊かな人たちが持つ富の多さではなく、最も脆弱な立場の人たちの幸福によって測られます」と言ったがその通りなのではないのか。
 
誰もが自らが望む教育課程へ進む事が出来る。そうした社会であって欲しいと思うが、村意識や仲間意識の歪という弊害をモロに被る習性をもつ日本においては、到底無理だと断言できる。この国は、一発で干されて終わり。そんな社会なのだ。
 
山上さんは日本で生まれていなかったら、絶望の淵に追い詰められなかったはずだ。
 
9年前に元夫に誘拐された我が子には、「この国の犠牲」になってはほしくない。一刻も早くこの国で抑圧されている我が子を救いたい気持ちは今でも変わらない。

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