7月10日 金曜日 雨
一昨年の紅白で『Lemon』を聴いていると、貴方から「今、『Lemon』聞きながら、彼のことを想っていたよ」ってメールが来た。
その年の11月に逝ってしまった彼のことを、思い出して悲しくなったと。
「うん、私も」
そう返したけど、ごめん。あれは嘘だ。
確かに、『Lemon』で涙したけど、それは彼のことを想ったからじゃない。
確かに、彼のことは頭をよぎったけど、貴方ほど悲しみに暮れてはいない。
確かに、失った大きさに心は沈んだけれど、貴方ほど沈んではいない。
私は、その日初めて、貴方が彼を失った大きさを知った。
そして、もし、逝ってしまったのが私だったら、同じように想ってくれただろうかと。
その日から、『Lemon』は、貴方と彼の曲になった。