あゝ真夏
2024.07.10
うだるような暑さが続いている。
カンカン照りの日と分厚い雲に覆われた日が白白黒と碁石のならぶ規則数列のようにやってくる。不安定な気候に振り回される。夏だ。
わたしは夏が好きだ。
グラスにお茶を注ぐ時の、カランと氷の揺れる音は毎年うれしい。むわっと広がる畳のにおいも心地よいし、扇風機の微かな唸り声もずっと聞いていられる。とはいえ年々増していく酷暑ぶりに生き延びれるのかと本気で心配になる。わたしたちの世代がおばあちゃんになる頃には、「夏眠」なんて文化ができるんじゃないかしら。何もしない。食べられる時に食べこんで、あとは眠るだけ。なつみん。
先日、仲の良い友人と高島平の植物園に行ってきた。両者が思わねば成立しない親友という関係性をわたしたちが口にしたことは一度もないのだけど(たぶん臆病だから)、たぶんもう、そう。植物園は兼ねてから行きたかった板橋区立の施設で、メインは植物園なのだが、こぢんまりとした水族館もある。あまり見かけない古着の柄のような魚や、やたら首の長いスッポンのような、うむ、なんだかおっかないカメもいた。カレールウ色をしたエイがひらひらと身体を翻し、ガラス越しに友人を沸かせたりもしていた。あれはエイのファンサービスだろうな。
涼しい水族館のゾーンを抜けると、まるで東南アジアな植物園にすっぽり閉じ込められる。
湿度を帯びているのが視認できるほどじめじめしていた。濃い緑色の、背が高いなんてもんじゃないくらい伸びた植物を見上げながら歩いていると、樹木医さんと思しき方が目の前の木に実がなっているのを教えてくれた。人の頭一個分くらい大きな実。今年は一段と大きいのだそう。あれが落ちてきたら相当痛いんだろうな、死ぬかもしれないな、ぼけっと思った。
植物や水の生き物の名前をおぼえるのが苦手なわたしも、今日こそひとつふたつはもって帰ろうと意気込むが、奮闘虚しくすっかり忘れてしまった。すべては暑すぎるせい。ちなみに序盤でお財布も落とした。気温と湿度の高い場所で正気を保ってなんかいられないな。
ふたりしてぜえぜえ言いながら逃れられない太陽を浴びた。甘味の気分でわざわざはしごした巣鴨は、この日はほんの1時間に満たない滞在だったが、どこかでリベンジしたい。わたしたちの大好きな可笑し気のある愛らしい街のはずだ。
8月は何をしようかね。