メルマガ『東医宝鑑(東醫寶鑑)とういほうかん─古典から東洋医学を学ぶ─』第395号「氣生於穀」(内景篇・氣)4
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◇ 東医宝鑑(東醫寶鑑)とういほうかん─古典から東洋医学を学ぶ─ ◆
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第395号
○ 「氣生於穀」(内景篇・氣)
◆ 原文
◆ 断句
◆ 読み下し
◆ 現代語訳
◆ 解説
◆ 編集後記
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こんにちは。気の章「氣生於穀」の続きで最後の部分です。
◆原文◆(原本の文字組みのままを再現・ただし原本は縦組み
・ページ数は底本の影印本のページ数)
(「氣生於穀」p86 下段・内景篇・氣)
人身之中全具天地陰陽造化之氣得勤而用之
人年二十而氣壯節慾少勞則氣長而緩多慾勞
倦則氣少而短氣少則身弱
身弱則病生病生則命危矣
▼断句▼(原文に句読点を挿入、改行は任意)
人身之中、全具天地陰陽造化之氣、
得勤而用之。人年二十而氣壯、節慾少勞、
則氣長而緩、多慾勞倦、則氣少而短、
氣少則身弱、身弱則病生、病生則命危矣。
●語法・語釈●(主要な、または難解な語句の用法・意味)
▲訓読▲(読み下し)
人身(じんしん)の中(うち)に、全(まった)く
天地(てんち)陰陽(いんよう)造化(ぞうか)の
氣(き)を具(そな)ふ、勤(つとめ)てこれを
用(もち)ゆることを得(う)。
人(ひと)年(よわい)二十(にじゅう)にして
氣(き)壯(さか)んなり、慾(よく)を節(せっ)して
勞(ろう)少(すくな)きときは、則(すなは)ち氣(き)
長(がな)ふして緩(ゆる)み、慾(よく)多(おほ)くして
勞倦(ろうけん)するときは、則(すなは)ち氣(き)
少(すくな)ふして短(みじか)し、
氣(き)少(すくな)きときは則(すなは)ち
身(み)弱(よわ)し、身(み)弱(よわ)きときは
則(すなは)ち病(やまひ)生(しょう)ず、
病(やまい)生(しょう)ずるときは則(すなは)ち
命(いのち)危(あやふ)し。
■現代語訳■
人の身体の中には、天地の陰陽を創造した気が
完全に具わっており、極めて慎重にこれを用いるべきである。
人は年齢が二十歳になれば気が壮んになり、
慾を節制し、疲労すること少なければ、気は養われ、
穏やかになり、慾が多く、疲労が重なれば、
気は少なく減っていく。気が減ると身体が弱くなり、
身体が弱くなれば病が生じ、病が生じれば命が危うくなる。
★ 解説 ★
「氣生於穀」の項目の続きにして最後の部分です。少し長いですが一気に読んでしまいます。
同じ段落ながら前号部分の内容を受けて、また違ったことが述べられていて、テーマの穀から離れて気の総括的な内容になっています。
文章の構成としては常套手段の、
「AであればB、BであればC、CであればD・・・」と繋いでいく手法であることが読み取れますね。
この中で冒頭部分に非常に興味深いことを述べていて、原文では
「人身之中、全具天地陰陽造化之氣(人身の中に、全く天地陰陽造化の氣を具ふ」と言っています。
つまり、人間の身体には、もともと天地の陰陽が創造された時の気、もしくは万物自然の気が具わっている、と言っているのです。
これは凄いことを言っていると思い、人というのは生まれた時は天地と同じ存在で、欠けたところが何も無い、と言っていることになります。
人間が自分の存在を考える時に、欠点だらけとか、欠陥があるとか、常になにかしら不足していることを嘆きがちと思うのですが、そうではなく本来は十全な存在なのだということで、これは非常に勇気づけられ、また反対に重い言葉でもあると思います。それだけ自身の存在に責任があるということだからですね。
このような奥深い言葉をさらりと言える人物、大本の作者さんはどのような思想、体験を経てこれが言えるようになったのか興味深いものがあります。こんな何気ないところに凄い文章があるので全く侮れません。
細かい点ですが、江戸期の『訂正 東医宝鑑』では原文の「人年二十而氣壯」を「人年三十而氣壯」としています。つまり気が壮んになる年齢が、原文ではニ十歳としているところを、三十歳に変えているわけです。
原文の引用元を辿っても「二十」となっており、なぜ『訂正』が三十に変えたのか、単なる誤りなのか、それとも一定の見識の本に変更した、つまり表題のごとく『訂正』を加えた部分なのか不明です。
今までも何度か取り上げたように、『訂正』では元の原文と違っているところがままあり、『訂正』であろう部分と、反対に誤って違ってしまっている部分とが混在しており、『訂正』を元に東医宝鑑を読む場合には、やはり元の原文を参照して確認しながら読む姿勢は必要と思います。
◆ 編集後記
「氣生於穀」の続きで最後の部分です。長めですが、前号で既にひとつの段落を切ってお届けしたので、ここでは一息に残りを読んでしまいました。
次号からは次の項目「氣爲衛衛於外」に入ります。
(2020.12.06.第395号)
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