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大きさ:お話物理:電子-陽子散乱
今回から,陽子の"大きさ"の話をしようと思う.
実験的に,目に見えない粒子の大きさはどうやって決められるのだろうか.実験的に決める方法がなければ理論的にいくら計算(予想)したところで意味がない.ただの妄想と区別がつかない.
これから話すのは"陽子の大きさ"を導入した簡単な量子力学の問題を用意して,実験的に測定できるものを計算する.その計算を実験で実際に測定したものと比べることで陽子の"大きさ"を決定する話をする(ただ,実験装置を実際に動かすことはできないので,そこは割愛する).
さて"大きさ"と括っているのはなぜか.それはそもそも大きさとは何かを決めねばならないからだ.物差しを当てて測れるものではないのだ."大きさ"を何で測るかで,その長さに対応した物理量が変わってくる.
今回は陽子の"大きさ"を電子で測ってみようと思う.
先のブラックボックスと弾丸で言えば,ブラックボックスの中身が陽子で,打ち込まれる弾丸が電子だ.
電子と陽子は電気的に相互作用をするとする.そうすれば系を指定するハミルトニアンは水素原子と同じものになる.
同じなら水素原子の知識が使えるかと思うかもしれない.しかしそう簡単には行かない.なぜなら今考えているのは散乱問題で,電子は陽子に捕まっていない.電子(と陽子の系)のもつエネルギーが大きく,陽子の電気的な引力を振り切って電子はどこかに行ってしまう.
しかし引力を受けるということは,電子は元の進む方向から,別の方向に飛ぶようになるだろう.その影響をみて電子に対する陽子の"大きさ"を決めよう.
数学的に散乱に対応した,水素の非束縛状態のSchrodinger 方程式の解を求めれば良い.しかしその数学をやるのはいささか面倒だ.なので次回からは物理屋がよく使う,近似について話していこうと思う.それは摂動論(せつどうろん)と言うものだ.
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