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落ちているのに落ちてない:お話物理:水素原子
前回は,水素原子のエネルギー固有値が,動径方向の固有値方程式の規格化可能性から,跳び跳びの値を取ることを話したのだった.
正数"n"が動径方向の波動関数から決まる,量子数なのだった.
今回は具体的な波動関数の形をみて,言えることを考えてみよう.
動径方向の波動関数は,角運動量の大きさ"l"に依る微分方程式
から決まる.昔の数学者がこの微分方程式の解を見つけてくれている.
具体的に書き下せば
となる.
ポイントは波動関数は動径方向の量子数(主量子数)"n"と角運動量の大きさ(軌道角運動量)"l"と一成分の大きさ(磁気量子数)"m"で決まるのだ.
つまり水素原子の状態を決めるには三つの整数を指定してしまえば完全に決まるのだ.
しかし数式だけ書かれても形をイメージできる人はいないと思う.なのでお絵かきをしよう.
最低エネルギー状態(基底状態)の"ψ_100"とエネルギーが少し高い状態"ψ_210"の二乗を書いてみよう.
波動関数の二乗は,粒子の存在確率(密度)を表すのだった.
まずは"ψ_100".三次元で書くのは大変なので,z=0の平面の存在確率を書く.
黄色が高く,青が低い.だから"x=0,y=0"を中心に円形の山ができている.
上の赤線"y=0"を切り抜けば
と確かに山になっている.
次は"ψ_210".
今度は二つ山になっている.
うん確かに.
イメージはできただろうか."ψ_210"は存在確率が高い部分が中心から外れた二つになっている.一方で"ψ_100"は存在確率が原点に行けば行くほど濃くなっている.
つまり基底状態,最低エネルギー状態は確率的に原点にいることが多いのである.
ん?
古典力学で水素原子を考えたとき,エネルギーを失い続けて,電子が原点の原子核に落ちて大きさがなくなってしまうことが問題だった.量子力学でも最低エネルギー状態は原点に落ちていないか?
そう.量子力学でも最低エネルギー状態は原点に電子が落ち込んでいるのだ.
それでもなぜ水素原子が大きさを持てるか,それは上の絵でも書いたように,確率の分布としてじわぁっと雲が広がっているのだ.
つまり水素原子の大きさは,量子力学的な,確率の広がりによって保証されているのだ.
水素原子の電子は,落ちているのに落ちていないのだ.
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