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温度計と世界の寿命:量子力学/古典力学の破綻
今日は量子力学以前の物理,(量子力学に対して)古典力学の敗北をみよう.具体例を二つ紹介しよう.
鉄の温度(Planck 分布)
産業革命を知っているだろうか.蒸気機関の発明により製鉄業が興った.鉄は今も生活にも密接に関わっているし,鉄なしの生活は考えられないだろう.
製鉄業では融けた鉄を扱う.その温度は1500度もある.鉄の炭素含有量の統制も700~900度ほどの幅がある.そのため,今の鉄の温度を知ることは重要だ.しかし鉄に温度計をぶっさすわけには行かない.1500度以上の熱に耐える正確な温度計は作るのが難しそうだ.
ではどうやって鉄の温度を測るか.それは鉄から放射される光を見るのだ.実は一定の温度を持った物体からは決まったパターンの光が出るのだ.これをPlanck 分布(プランク)という.
上の絵は温度を変えた時の理想的な光のパターンを書いている.温度は青が高く,赤が低いものを示している.注目すべきは温度の違いによって山の頂上の位置が変わることだ.これを利用すれば山の高さを見て温度がわかる.
加筆(これを利用しているのがサーモグラフィーだ.また星の色も温度によって色が変わる.)
修正前(家の中ならコンロが特徴的だ.コンロの火は青い.でも鍋に当たった端の火は赤くなる.青い光は周波数が高く,温度が高い.赤い光は周波数が低く,温度が低い.サーモグラフィーも同じ原理だ.)コンロの色はメタンの脱励起による光出そうだ.確かに青い光を出しているにしては温度が高すぎる.
これで万事解決かというとそうではない.実はこの便利なPlanck 分布は実験的に温度表は作れるものの,これを出す物理の理論が古典物理にはないのだ.目の前に現象があって,明らかに物理法則にしたがっているのに,それを説明できないのだ.
原子の寿命(電磁波の放射)
温度計はまぁいい.工業の分野ではとても使いにくいが温度の表を作ってしまえばいいのだ.
しかし古典物理の世界では我々はそもそも存在できない.この世界のほとんどを作る,原子が潰れてしまうのだ.
原子は陽子と中性子からできた原子核と,電子からできている.古典物理の範囲では,電子は原子核の周りを楕円軌道でぐるぐる回っている描像が考えられる.
しかしこの描像だと致命的な現象が予言される.電子は電荷を持っており,電荷を持った物体が動くと電磁波がでる.これは古典電磁気を信じるなら避けられない現象だ.
電磁波を出すと運動する物体はエネルギーを失う.エネルギーを失うと楕円軌道はどんどん原子核に近い軌道になっていく.このまま繰り返せば原子が潰れてしまう.
原子が潰れてしまえば我々は存在できない.でも我々は存在している.だから古典電磁気は間違っている.
余談1
原子の描像は今でこそ原子核の周りを電子が回っていると思っているが当時は色々な描像が提案されていた.潰れるのであれば電子が周りを回る描像を捨て,原子核の中に電子も入っている描像などもあった.しかしそれはスピンと呼ばれる物理量の実験と合わないなど,あっちが立てればこっちが立たないという状況だった.
余談2
また,原子に光を打ち込むといくつか特定の光の周波数だけ,よく吸収,放出されるという現象が起こる.古典電磁気の範囲ではこの特徴的な吸収放出を説明する方法がなかった.
後の記事で話すことになるだろうが,この現象を綺麗に説明するできたことが量子力学の勝利だと思う.
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