回る方程式:量子力学:極座標のschrodinger 方程式
前回は,角運動量の固有状態について話してきた.角運動量固有状態は角運動量の大きさ"J^2"と一成分"J_z"が決められるのだった.
上では状態のラベルとして固有値"λ","m"で書いているが,今後は
と書こう.
この固有状態で特別なことは,角運動量の大きさ"j"が0または半整数(整数/2)であること,一成分の値が"-j"から"j"までの"1"刻みでしか取れないことだ.
この二つの跳び跳びの値は,状態の規格化可能性から来るものだ.
今回から状態としてではなく,波動関数として,角運動量固有状態はどのようにかけるのかを見たい.
量子力学的には状態と演算子で取り出せる情報は過不足ないのだが,やはり人間は関数の形で目で見たいものだ.
回転不変な系のschrodinger 方程式は極座標と呼ばれる表示でかくとわかりやすい.
極座標は原点からの距離と二つの角度を用いて点の場所を表す座標だ.
今まで普通に座標と言っていた(x,y,z)は直交座標と呼ばれて区別される.
"物理法則は見る人に依らない"という物理の基本的考え方があるのだが,その"見る人"とは扱う座標系のことを言っている.物理法則は見る人つまり座標に依らないので,直交座標を使おうが極座標を使おうが同じ結果しか出てこない.
同じ結果しか出てこないのだが,人間が実際に計算するときはどの座標系を使うかで計算の簡単さが段違いになる.
そんなわけで,量子力学の運動方程式に相当する,schrodinger 方程式は三次元で
と書き直せるはずだ.ポテンシャル"V"の中身は(x,y,z)から(r,θ,φ)に書き直すだけでいいのだが,直交座標の微分を極座標の微分に直そうとするといささか面倒な計算が必要になる.
量子力学を学ぶ大学生は間違いなく授業の演習で,この直交座標から極座標へ微分を書き直す問題を解く事になる.結果はググればすぐに出て来る.まぁお話物理だから結果だけかく.
長い.こんな計算は一度はやるべきだが,二度はやりたくない.
注目するべきは,直交座標では簡単に"d^2/dx^2"が各座標の分並んでいるだけだったのに対し,極座標表示では各座標の微分の前に何かお釣りがついている事,動径方向"r"の微分と角度方向の微分"{...}"が分離できる事だ.
ポテンシャル"V"が角度に依らなければ,角度方向の微分方程式は全く分離できる.
察しがいいひとがいれば,この分離した角度方向の微分方程式の固有関数が角運動量固有状態と対応するとイメージできるかもしれない.
それは次回にやろうか.