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スピンの源:お話物理:場の理論

前回は量子力学の粒子描像を捨て,時空の各点にある場の励起が粒子であるという立場を取ることにした.

今回は相対論的に許される場は何があるのかについて話していこうと思う.

高エネルギーの物理を考えていく上で理論が相対論的に対してよく振舞わなければならない.新しい理論を作るなら,今までの成功している理論に従う必要があるのだ.

特殊相対論は時間+空間の計四次元の回転で記述される理論だ.回転の議論は量子力学の角運動量の三次元回転で少しやった.

回転はつまるところ"掛け算"の一般化の一つだという話だった.今回はこれが四次元の回転だ.

三次元の回転は3つのちょびっと回転で全てが記述されるのだが,特殊相対論の回転,ローレンツ変換は6つのちょびっと回転で記述される.

三次元の回転は回転軸を一つ決めれば独立な回転をかけたのだが,四次元以上では"回転軸"という概念が存在しない.高次元で回転を指定するには回転する平面を指定する必要がある.四次元から平面を一つ選ぶには組み合わせ"4_C_2=6"の6つがあるのだ.

実は回転軸というのは三次元だけの特別なものだ.三次元で回転する平面を選ぶことは,残りの一つを選ぶことに対応する.だから三次元では回転軸が定義できるのだ.

してローレンツ変換の生成元:ちょびっと変化は添字の入れ替えで負号がでる"M_μν"でかける.

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Jは三次元の回転に対応し,Kは時間と空間の回転,ブーストに対応する.ブーストは観測者の速度が変わる変換だ.

これをおもむろに次の組み合わせで書く.線型結合だから生成元で見れば同じ変換を考えていることになる.

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するとちょびっと回転"A"と"B"は次のような交換関係を満たす.

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なんと"A"と"B"それぞれが三次元回転と同じ交換関係を満たし,"A"と"B"は交換するということだ.

ということはローレンツ変換はちょびっと回転で見れば,二種類の三次元回転と同じということだ.

三次元回転の議論は量子力学の角運動量でやった.固有値がn/2という半整数になるのだった.ならばローレンツ変換の組み替えで出てきたそれぞれの回転に対して半整数の固有値が割り振られるはずだ.

固有値の小さいものから(0,0),(1/2,0),(0,1/2),(1/2,1/2)...となっていくはずだ.


粒子にはスピンという角運動量の次元を持った内部自由度があるのだった.実はこのローレンツ変換の表現がそれぞれのスピンに対応しているのだ.

(0,0)は角運動量が0のスカラーと呼ばれる場が,(1/2,0)または(0,1/2)はスピン1/2のスピノル場が,(1/2,1/2)は角運動量1のベクトル場が入るのだ.

実は粒子のスピンの根源は,このローレンツ変換の表現によって規定されている.

相対論的な場の理論に行って初めて,粒子描像を捨てて初めて,粒子のスピンの根源がわかるのだ.

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touya
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