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妄想非化学研究書 音楽と映画を読む 誇張された非科学的現実妄想生活42
■大きな輪の中にあるとても小さなイデオロギー
ある意味今回も奥方には不向きな私の中でまごうことなきヒーローな話。
どっちが勝つと思う?と不意に先輩が私に問うてきた1995年夏のある日。
これはプロレスの事でしてこの年の10月に行われた東京ドーム興行の事。
普段からあまりプロレスに関心が無さそうな人々までも巻き込んだ興行。
新日本プロレスとUWFインターの全面対抗戦と銘打たれた特別な興行。
物心ついた頃からテレビで新日本プロレスを見ていた幼少時代もあって、
私の中では新日本プロレス一択でありそんな野暮な事を聞かんでくれと。
格闘技よりが好きな先輩方はUWFインターが勝つに決まってるだろう、
新日本が勝った場合はその時点で八百長だよ!とか息巻いておりまして。
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八百長、台本のあるショー、そんな言葉どれだけ聞かされてきただろう。
既にテレビでは当たり前にプロレスがゴールデンな時間帯に放送されて、
子供ながらに猪木や坂口、タイガーマスクや藤波を応援しながら見てて。
そこには本物とか偽物とか八百長か否かなんてどうでもよい戦いがあり。
純粋に猪木がどうだったとか藤波のあの技がどうのとか考えを巡らせて。
目の前の対戦相手との戦いだけではないギュッと締め付ける物があって。
小学校の頃はキン肉マンが周りで持てはやされてたけど私はプロレスで。
周りの連中にプロレスの話しても八百長だなんだと言われるのが面倒で、
プロレスは自分の中だけで広げては完結させてを繰り返していたような。
だから社会人になっても週刊プロレスやゴング等の雑誌を読んでたって、
その内容だったり話とか周りに共有したり付き合わせたりする事はせず。
プロレスという村社会を自分だけで行き来する事で完結させていた訳で。
プロレスが好きと言うだけで八百長なのショーなのと聞かれるのですわ。
本気な戦いが見たいなら街の喧嘩でも見ればいいじゃん?
ショーだったら何なの?駄目なの?あの汗は嘘になるの?
こんな事を言いたくなってくるし言われた方は嫌な気分にもなるだろう。
だからプロレスという村の中で自分だけひっそりと楽しむ方が一番いい。
プロレス大好きですと言ってくれる人は大歓迎だけど人に薦めはしない。
プロレスに何を見たいのか?何を期待しているのか?人によって違うし。
自分が成長するにつれ困難にぶち当たった時にプロレス見て活路見出し。
落ち込んでてもプロレスを見てまた明日からも頑張ろうと思えたりして。
日本に初めてプロレスが来た当初からこういった楽しみ方だったはずで。
いつのまにやらプロレス最強、誰にも負けない、超人的な感じになって。
レスラーの皆さんは日々練習して身体を鍛え上げ私達ファンを魅了する。
ちんたら弱音吐きながら生きながらえてる私なんかに元気や勇気を与え。
半世紀超え日本のプロレスはいつの時代も壮大なドラマを見せてくれて。
そんなプロレスをヤオだとかショーとかで片づけられたくはないのです。
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ある一定の筋書きがある壮大な叙事詩であり見る人を魅了させ続けてる。
相手の技を受けた上で相手に技をかけて、手を取り足を取り頭を攻めて。
その流れる様な応酬で向こう数カ月数年先まで続ける物語を見せていく。
独りのレスラーから派生して複数の物語を我々に提供していく様とかも。
ただそこら辺で喧嘩が強い奴リングに上がれで戦ったってドラマは無し。
そういった純粋に何かに強い人が見たいのであればプロレスじゃないと。
私は胸打つ何かだったり数年先まで続く物語を垣間見たりしたいのです。
だからこそのプロレスなのであって私のヒーローがいっぱいな訳でして。
因みに冒頭に問われた先輩へはヤオだろうが何だろうが新日本プロレス、
全八試合ある中で6勝2敗か5勝3敗で新日本プロレスと回答して笑われた。
結果5勝3敗で新日本プロレスでしたが本当は全勝してほしかったなぁと。
試合翌日、朝早めに出てスポーツ新聞購入し机の上に広げておきました。
ヤオだ何だと言っておりましたがそこから翌年の春まで、
抗争という名のドラマが続くUWFインターとの対抗戦。
流石の新日本プロレス、ドラマを続けてくれましたよね。
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勝った負けたの一勝負だったら興行として成り立たずだし一応会社だし。
東京ドームで興行打つまでに選手同士の物語が無ければ見向きもされず。
あんな事やこんな事が出来たらいいな、な空想を地で行くイデオロギー。
それを現実の物にする為に日々トレーニングを欠かさず身体を作るので。
何時の時代であってもプロレスラーは間違いなく私のヒーローなのです。
■G1 CLIMAX/新日本プロレス
私がプロレスを見始めた時は猪木が全盛期で坂口・藤波・タイガーとか、
どこをどう切り取っても興奮が止まらない金曜夜20時台でございまして。
いつの間にやら低迷し深夜の時間帯に放送時間変更となり簡単に見れず。
親の目を盗んで見たり見れなかったりの数年が続いて働き始めた90年代、
堂々と深夜帯でもテレビを見る事が出来まして(音は凄ーく小さくで)。
気が付けば世代交代が着々と進んでおり、猪木や坂口は影を潜めていて。
闘魂三銃士が藤波・長州を押しのけようとせんばかりの勢いでばく進中。
そんな中、91年から夏の両国で数日間、最強戦士決定戦が始まることに。
シングル戦で内容の濃い技の掛け合い凌ぎ合いが見れる夏の祭典であり、
新日本最高峰のベルトであるIWGPチャンピオンシップとはまた違う戦い。
シングルで真夏の連戦となる為スタミナの削り合いな所も相まって興奮。
どう連戦を戦ってファンを魅了してくれるのかの見方も出来るリーグ戦。
時にトーナメント方式で開催されたりしてたけど熱い戦いに違いは無し。
現在も続く夏の祭典は完全リーグ戦、トーナメントは春の祭典に移行し。
春も夏も誰かがそのタイミングで主役になるべく毎回熱い戦いを展開し。
その前後から各々の選手が主役になるべく戦いを通じて物語を作りつつ、
定期的に行われる大会場でのメインイベントを目指して上り詰めていく。
相手の技を受けない、一方的に攻撃に終始、これでは主役になれません。
相手の技を受けつつ劣勢の状況を自らが打開しどう勝利に繋げていくか。
こういった流れの戦い方を通じてファンは魅了されていくのかなと思う。
だからこそ八百長だの台本ある等のお話はするだけ野暮ってものでして。
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■NWO JAPAN からの LOS INGOBERNABLES de JAPON
2000年以降、暗黒期だったとか人気が低迷したとか散々な状況だったと。
ただ数十年を経て続けているプロレスは壮大なる叙事詩でもあるがゆえ、
見なかった時期や見てる時期が人それぞれにあったって構わないのです。
ギャルバンのライブで着たNWOのTシャツを見て色々と声かけられて、
あぁこの時期は猫も杓子もプロレス見てたんだなぁと思ったりしもして。
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普段プロレス見ない会社の先輩もNWOのTシャツ欲しいと通販で買い、
みんなで同じTシャツ着て仕事したこともあったりして懐かしいですわ。
これまでで試合見てないけど何となく知ってる名前のレスラーがいたり、
何となくテレビつけたらやってたから見ちゃったとかあるかと思います。
そんな所からで良いのですプロレスはブームじゃなく生活の一部だから。
長く見てれば感動や興奮が大きくなるけど一時だけでもどこかで見たら、
そのタイミングで興奮できたり気分がスカッとしたりモヤモヤ晴れたり。
最近はもっぱらLOS INGOBERNABLES de JAPONでござまして。
NWO JAPANの洗礼を受けた私は久しぶりにパーカーとか買い。
やっぱり自分を中心に置く為の物語は自分で切り開かなきゃね。
色んな迷いや葛藤があって自分の中のイデオロギーについて考え巡らせる。
大きな社会の中で自分の小さな思想や観念をどう周りと折り合いつけるか。
ある時は誰かを裏切ってるかもしれないし誰かを喜ばせてるかもしれない。
数年経って初めてその真意が理解出来るかもしれないし墓場迄もってくか。
そういった部分においてもプロレスは生活の一部になってしまってるんだ。