ホームインスペクションについて考える:住宅購入記 番外編
購入しようとしている物件の状態がどうか?専門家に見てもらうホームインスペクション。
ちょうど今、購入記が物件の内見に差し掛かっているので、ここではこのホームインスペクションについての考えが物件探しの中で、どう変わっていったのか?を記録しておきたい。
事前の勉強段階では「絶対に入れる」と決めていた
事前の勉強段階、つまり、情報収集の段階では、「自分で知識をつけつつも、必ず、ホームインスペクションを入れてから購入する」と決めていた。
ネットで調べても、
こんなに欠陥があることが多い
素人では見抜けない
見抜けたら、それを理由に値下げ交渉できる
見逃したら、あとでメンテなど大変なことになる
というような論法で、それは確かにその通りだと思った。
実家や賃貸で、ずっと家について無関心だった僕が付け焼き刃で勉強したからといって、分かる訳がない。
調べてみると、費用は1軒10万程度。
重大な欠陥が見つかったら、その金額では全然済まない。
それに、ホームインスペクションを入れたら、建物の状態がはっきり分かるのだから、契約不適合責任免責をつけて、値引き交渉をしてもいい。
だから、ホームインスペクションは必ずいれると決めていた。
※ ホームインスペクションと住宅診断の違い
住宅診断は最低限、もしくは決められた項目を見るという感じ。
ホームインスペクションは、もっと踏み込んで色々なところまで見るという感じ。
同じような文脈で使われるけれど、実際は大きく違うので、間違えないようにしたい。
ただ、ホームインスペクションはホームインスペクションで、業者ごとにそれぞれメニューが違うし、その母体や思惑も違うし・・・で、様々ということも頭に入れておきたい。
実際の物件探しの中で感じたこと
仲介業者との話
ホームインスペクションについて、話に出した時に、仲介業者さんの反応から受ける印象は様々だったけど、みな、一様に、あまりいい顔はしていなかったと思う。
まあ、仲介業者にとって得になることはひとつもないし、売買成立までにもうひと手間入るということになるからだろうと思っていたけど、仲良くなった仲介業者に、「どうお感じなのですか?」と聞いてみた。
すると、「結局、あれはリフォームにつなげるための営業じゃないですか?」ということで、嫌悪感を持っているらしかった。
「でも、まあ、4万5万くらいだから、やってみればいいんじゃないですか?」と言われたので、「えっ、10万くらいじゃないんですか?」と驚く。
ちょっと調べてみると、見る場所や報告書の詳細さなどにより、値段はかなり上下するらしい。
一週間ぐらい経って、その人とまた会うことがあって、「そうそう、この間、ホームインスペクションを入れた人がいましたよ。」という話を聞いた。
かなりの築古だったのだけど、特に問題がなかったらしく、驚いたという話だったのだけど、そのときに言っていたのが、
「でもねえ、どの項目にも、ここをうちでリフォームすれば◯円です、と書いてあるんですよね〜。結局、そういうことなんですよ。」
という疑いの言葉だった。
でも、僕からすると、「ああ、このくらいの被害額で済むんだな」という目安にもなるし、値下げ金額の目安にもなるから、逆に、それは助かることなんじゃないかな?と思っていた。
だから、この時点では入れる気持ちに変化はなかった。
なんで買い主が入れなくちゃいけないの?
これはずっと僕につきまとっていた疑問。
どんな商売でも、売る側が「こういう商品です」と証明していて、それを買い主は買うものでしょう。
何かあれば、売った側が責任を問われる。
せめて、「売る側はああ言っているけど、心配だから、買い手の自分も調査する」というなら分かる。
だけど、不動産は、「現況有姿」という言葉で、買い手にすべてぶん投げてしまう。
もちろん、以前から瑕疵担保責任が、今では契約不適合責任というものがあるけど、それだって、実際に問うには大変だ。
売り主だって、売ったあとに色々言われるのはイヤだろうから、売る前に入れればいいのに・・・と思う。
個人が売り主の場合も多いから、こういう専門的なことが分からないということなら、仲介業者がそういうことをやってくれればいいのにとも思う。
仲介手数料って、買い主から100万くらいはもらうのに、両手なら200万になるのに、そのくらいもやらないのか?と。
このあたりは最後までモヤモヤしていたが、今は売り主側が住宅診断を入れることも徐々に増えてきているらしいから、これからそれが増えることを祈りたい。でも、そうすると価格も上がりそうだけど。
どのホームインスペクション業者を選ぶか?
仲介してくれている不動産業者からの紹介、リフォーム会社もやっている会社のホームインスペクション、どんなに真面目にやっていると言われても、信用しづらい。
だから、独立系のホームインスペクションしかやっていないところを選びたいけれど、「独立系」と銘打っているところをよく調べてみると、別会社で上のようなビジネスをやっていたりする。
本当に欲しいビジネスは、喜んでお金を払いたいビジネスは、いつもこうやって、食い物にされ、信用できないビジネスになっていってしまう。
真面目にやっているところが多いとは信じたいけど、見分けがつかない。
世の常だけど、腹ただしい。
愚痴っぽくなったが、だから、業者を選ぶこと自体が難しい。
それに、みんな「見逃したら、責任を取ってくれるんだよな」という点も曖昧。
もちろん、今は大丈夫でも、1週間後に壊れた・・・ということもあるから、難しいというのは分かる。
だけど、ここを逃げるなら、ホームインスペクション自体の意味がない。
ホームインスペクションを入れた人の話を拾うと、ちょろっと見て終わりという意見もあれば、ちゃんと隅々まで見てくれたという意見もある。
だけど、結局のところ、何らかの形にしろ「見逃したら責任を取る」のなら、どういうふうにインスペクションをしようが自由だけど、そうではないなら、ちょろっと見るにしろ、隅々まで見るにしろ、どちらにしてもなんの意味もない。
だからこそ、メニューを細分化させて、「ここを見ろと言われたので、ここだけ見ました」というような逃げ道を作っているのかもしれない。
こちらが「ちゃんと見ているか?」と監視するというのも疲れるし、そもそも素人が監視したところで意味は少ないだろう。
結局、自分がメニューを選び、見てもらうなら、自分に知識が必要になってしまう。
だから、ホームインスペクションを入れることで「私達にお任せくださるなら、勉強しなくて大丈夫ですよ!」という僕が夢に描いた状態には今のところ、ならないのだと思い知った。
入れること自体の難しさ「売り主からの印象」
ホームインスペクションをいつ入れるか?というと、
買付申込みを入れる
この間にホームインスペクションを入れる
契約をする
という1番と2番の間に行うのが一般的。
この1番の段階ではまだ「他の人と競争段階」ということになる。
この買付の順番だけど、「順番を重視しないとトラブルになる」と一般的に言われているけど、実際は様々な手練手管を使って、「売り手が一番有利な人に売る」のが水面下で行われているとのこと。まあ、当たり前だよね。
※ もちろん、順番を守ると明言しているところもある。
それで買付を入れて、競争になった場合、
ホームインスペクションを入れさせてください
このままでいいんで買います
の2人がいたとして、1番の人が一番手だったとしても、売り手としては、2番の人に売りたくならない?
1番の人、うるさそうだし、面倒くさそうじゃないですか。
その他のことでも色々文句つけてきそうと感じる。
それに、物件にまだ売り主が住んでいる場合は、売り主もホームインスペクション時に家にいてもらわないといけないから、スケジュールの調整もしてもらわないといけない。
空き家の場合だって、まだ、売り主の持ち物だから、許可が必要になる。
インスペクションの時間は数時間〜10時間くらいだったと思うが、その間、ずっと誰かはいないといけないし、その間、他の人の内見もできない。
売り主や仲介業者にとっては、かなり嫌なんじゃないだろうか。
そう考えると、よほど自分しか買付を入れていない物件で、今後買付を入る可能性が低い物件とかではない限り、買い手の当然の権利とはいえ、拒否はされないだろうけど、売り主には、いい印象は与えないだろうと思う。
費用の問題 「物件探しはいつ終わるか分からない」
「ひと目見て気に入りました!ここしか考えられません!」という物件に出会ったのではない限り、ほとんどの場合は、「何軒かウォッチしておいて、同時に検討を進める」ということになるだろう。
できれば、「気になった物件すべてにホームインスペクションを入れて、状態を把握してから物件をしぼりこみたい」と思っていた。
だけど、上で見た通り、ホームインスペクションを入れるのは、「買付後」が一般的。
何軒か入れたければ、買付を乱発することになるが、それはできない。
買付で値段交渉をしたら、法的拘束力はないけど、売り主が受け入れたら、買わないといけない。そうでないと、以後、その不動産業者からは相手にされなくなってしまう。
買付をする意思を伝えて、一応、その前にホームインスペクションをしたいとかの小技も考えたけど、不動産の購入って、いい物件ほど、時間的余裕がないんだよね。
そんなこと言っている間に売れちゃったりする。
じゃあ、買付を入れる前にできるか?といえば、できるけど、売り主がウンというかは分からないし、これもそんなことをやっている間に・・・という面がある。
より大きな問題が費用。
検討している物件が4軒あれば40万くらい掛かってしまう。
10件なら100万だ。
手当たり次第やれば、ホームインスペクション貧乏になってしまうだろう。
物件を探しているときは、「物件探しがいつ終わるか分からない」状態。
今、検討している物件だって、他の人に買われてしまうかもしれない。
いつ買えるか?なんて分からない状態だ。
だから、気になった物件に、まずホームインスペクションを入れるというのは、いつ終わるか分からないのに、10万ずつ払い続けていくという先の見えない状態になってしまう。
それなら、その費用を物件獲得のために温存しておいた方がいいという観点もあった。
実際の物件、さほどひどくない。
こんなことを思いながら、物件を何軒か見て感じたことは、
「あれっ、意外と大丈夫だぞ」
ということ。
ホームインスペクションの情報収集をしていると、「欠陥住宅は思っているよりもずっと多いです」と言うし、そのように感じてくる。
だけど、物件を何軒か見て、水準器で測ったり、断熱材をチェックしたり、基礎を見たり・・・と自分でチェックしてみると、ほとんどの物件で、何も見つからなかった。
もちろん、僕が見つけられないだけなのかもしれない。
だけど、水準器の数値は嘘をつかない。
水準器であちこち測っても、そして、不動産仲介業者の人が「ここらへん危ないから、測ってみてくださいよ」と言われて、測っても、「おおー、大丈夫ですね〜」という物件ばかりだった。
他の項目もドキドキしながらチェックをしていたけど、「おおー、大丈夫じゃん!」が、だんだん「まあ、やっぱり大丈夫だね」くらいになっていったのを覚えている。
結局、どうしたか?
上記のことから、僕は、結局、以下のような方針にした。
そもそも自分である程度分からないと、物件選びもできない。
ただ、怪しい物件なら、ホームインスペクションを入れるようにする。
でも、素人の自分がチェックした箇所が怪しい物件はそもそも買わない方がいい。
それらは上級者向けと思い、次に行く。
以上がホームインスペクションについて僕がたどり着いた方針だった。