家の「買い時」について買った後から考えてみる
人口減少、インフレ、金利、株価など、様々なものと連携する不動産の価格。
実際に買うと決める、ずっと前から、情報収集だけは行ってきた。
でも、実際に動くと、やっぱり、動かないと分からないことも多かった。
そして、家を買った今、ああ、最初からこういう考えだったら違ったのになと思ったので、ここに書き記しておきたい。
市況
だいたい「不動産はいつが買い時か?」という話になると、この「市況」を指しているときが多い。
市況を動かしているものは、中央銀行の政策(金融政策)や、オリンピックなどの外部のイベント、人口減少などのファンダメンタルの状況など色々ある。
金融緩和(金融政策)
例えば、金融緩和。
金融緩和、つまり、お金を低金利で借りられるようにすれば、家も買いやすくなるから、家の価格は上がっていく。
それに、金利というのは、お金の価格という一面もあるから、お金の価値が下がる(インフレになる)のであれば、何か現物に変えておこうということになり、その候補のひとつが不動産ということになるから、買う人が増える。買う人の数が増えれば、家の価格は上がっていく。
実際、日本でもそうだった。
2013年にアベノミクスが始まって、未曾有の金融緩和が行われた。
今から振り返れば、その年を境に、不動産価格は上がっていくことになる。
ただ、この金融緩和、結果的に安倍首相が長く首相を務めたから、長く続けられたわけで、いつ終わってもおかしくなかったし、それでもデフレが続き、マイナス金利政策まで行くなんて、誰も予想が出来なかったのではないかと思う。
結果的に、2013年に不動産を買っておけばよかったのだけど、それがいつまで続くのか?どこまで金利を下げるか?なんて、神でない限り分からなかったことで、一個人が分かりっこなかったと思う。
ましてや、今後、金利が上がりそうだけど、「金利が上がれば、不動産価格は下がる」と言われる反面、「金利が上がる=好景気・インフレ」なのだから、その観点からは「不動産価格は上がる」と言える。
要はこれらの変数の駆け引きなのだけど、今、この一時点でも分かりっこないし、それぞれの変数は常に揺れ動くなのだから、1年くらいなら、いざ知らず、今後数年先の金融政策を当てるなんて無理だろう。
FRBだって、「これは一過性のインフレです」なんて言っていたのだから。
オリンピックなどのイベント
「オリンピックが終われば、不動産価格が上昇する理由が見つからない」という意見はさんざん聞いたし、僕もそう思っていた。
だから、「オリンピックが終わったら動き出せばいい」と思っていた。
結果は、オリンピックが終わった後も、不動産価格はうなぎのぼりだ。
まさかコロナが起きるなんて思わなかったし、コロナで金融緩和だけでなく、財政出動が世界中で行われ、大インフレ時代が来るなんて思わなかった。
その当時は「世界がインフレに苦しむことは今後ない」なんて経済誌に書かれていたのだ。
「世界は日本化する」つまり、デフレになるという予想ばかりだった。
だが、蓋を開ければ、今、インフレを抑えるために、アメリカのFRBはものすごい勢いで金利を上げ続け、その結果、円安は160円まで行った。
コロナが起きるなんて、誰も想定できなかったはずだし、結局、こんなことは、つまり、未来に何が起きるかなんて、誰にも分からない。
人口減
その中で、これは未来に確実に起きるといえるのが、「日本人の人口減少」。
今、10歳の子がいきなり2倍に増えるなんてことはあり得ないから、絶対に人口減少は起きる。
10歳の子が家を買う頃になる10年後20年後30年後は人数が少なくなるのだから、家を買う人自体が減る・・・というわけだ。
亡くなる人が増え、買う人は減る。
「なら、当然、家も安くなるよね」というのは・・・、分からない。
僕も「安くなる」と、ずっと考えていたし、それを頼りに賃貸で生きていたけど、実際に家探しをすると、それは少し違うのではないかと考えはじめた。
安い家、空き家というのは、ボロボロだ。
住みたい家が空くわけじゃない。
誰も住みたくないから、空き家になるのだ。
そのボロ家をリフォームして住めばいい?
僕もそう思ったけど、そのリフォームが高いのであって、リフォームをちゃんとすれば、それは新築に近い値段になってしまう上に、下手すると躯体や配管などは古いままだ。
そして、人口が減る、特に若年層が減るのであれば、働き手が減るということになる。
当然、建築会社、リフォーム会社の人件費は高くなるから、新築・リフォームの価格は上がり続けるだろう。
さらに、家の需要が少なくなるのであれば、建築会社は新築を多く作らなくなるだろう。
そうすれば、逆に新築にプレミアムがつき、新築は高くなるかもしれない。
なら、新築やリフォームの価格は逆に上ってしまうかもしれない。
家自体、土地自体は安い。けど、そこからいじると高くなる。
DIYなどが流行るようになるかもしれない。
でも、何が起きるかなんて分からない。
「日本人が減る」というのは分かっているけど、移民が入ってくれば、それは解決してしまうし、空き家は減り、家の価格は大きく下がらないことになる。
実際に統計を見ると、知らぬ間に、日本はかなりの移民を受け入れている。
都市部のコンビニなんて、外国人ばかりになったし、その実感も伴いだしてきた。
というように未来の市況というのは分からない。
常に変化し続ける多くの変数の綱引きなのだから・・・。
でも、今から振り返れば、正解は分かる。
リーマンショックの底のときに買えばよかったのだ。
でも、その時、どこまで金融危機が広がって、どこが底で、どこまで戻るかなんて、誰にも分からなかった。
リーマンのときだって、当時のニュースを振り返れば、「もう危機は終わった」と何度も言っていたのだ。
一度、危機が終わったと思ったら、また、大きな悪いニュースが出て、危機に陥る・・・、この繰り返しで、いわゆる金融危機・リーマンショックが起こった。
だから、「危機が終わった」→「買う!」、また、「危機が終わった」→「買う!」というように、危機を待っていても、その時々に買い出動してしまい、結果、高値づかみをした・・・という人も多かっただろう。
みんなが見抜けないから、「ショック」になるわけで、そんなのを自分だけ見抜けると思うほうが間違っている。
買い手側=自分の状況
では、リーマンショックのような絶好の買い時に運良く出会えたとして、たまたま、自分がそれを見抜けたとする。
特に意識せず、周りが騒いでいるから、ボーっと見ていたら、「あれ、今、大ショック中じゃない?」という感じなら、気づけるかもしれない。
それで気付けたとして、いざ、買うとしよう。
次に立ちふさがるのが、「不動産の価値を見抜けるのか?」だろう。
「この不動産にはこのくらいの価値がある」のに、「こんなに下がっている」ということの目利きが出来なければ、せっかくの買い時もいかすことができない。
周りの不動産が下がっているからといって、買う物件の値段が下がっているかどうかなんて分からない。
自分の欲しい物件だけ高いということだってあり得るのだから。
でも、そんな目利きができる人が、それまでに不動産を買っていないということがあるだろうか?
家探しを始めると、机上の勉強とは違うことがたくさんあった。
だから、実際に不動産を買う気で探さないと、相場を見抜く目、物件の目利きなんて育たない。
不動産の勉強をし続け、内見を重ねつつも買わず、じっと、来るかどうか分からないショックが来るのを何年も待つ・・・、そうすればいいのだろうけど、そんな人は「どうせ、あなた買わないんでしょ?」とすぐに不動産屋さんに相手にされなくなるんじゃないか?と思う。
資金面も同じ。
買い時を見つけても、みんなと同じように、金融危機の影響を食らってしまっていれば、買うことはできないから、資金の手当をしつつ、じっと何年も結局、来ないかもしれない危機を待つ、、、。
結局、現実的に考えてみれば、不動産投資家のような専門家ではなく、僕のような実需の人間がこういった買い時を待つというのは、まず無理だろうと思う。
待っている間の家賃
また、この「買い時を待っている間」にも、当然、家賃はかかる。
暴落は基本10年に一度と言われているけど、じゃあ、10年間待っていたとして、家賃10万なら、累計1200万+更新料・保険料だ。
暴落の結果、10年後に1200万安く物件を買えたとしても、その間の家賃が1200万掛かってしまっているなら意味がない。
こういったことも考える必要がある。
うまく行ったとして
もし、たまたま運良く、買った時が買い時にあたっていて、「おし、最高のときに買ったぜ。めちゃくちゃ値上がりしてる」という状態になったとする。
でも、実需の家(実際に住む家)を買った場合、果たして、意味があるのか?と思う。
だって、その時は、他の家も上がっている。
自分の家を売ったところで、他の家も高くなっているから、売って、その後どこに住む?ということになる。
売り時は、同時に買い時ではないのだから、家が2軒以上ないと、その恩恵は受けられない。
逆に、自分の家が下がっているときは周りの家も下がっている。
市況を見て買うなら、いつもそんな感じになるだろう。
なら、市況なんて、関係ないじゃないかと思う。
一軒だけしか家を持たずに、いい思いをするには、自分の家だけ値上がりし、他の家は上がっていない状態にならないといけない。
そうすると、それは「市況うんぬん」つまり、「今が買い時か?」というより、どんな市況でも、「自分にそういう家が見抜けるか?」という問題となり、市況は関係ないことになる。
だから、実需、つまり、自分が住む場合は、買い時がどうか?よりも、結局、自分の目利き能力次第なんじゃないかと思う。
売り手側の状況
それじゃ、運良く、市況、資金、準備、目利き能力、すべてが揃っていたとしても、さらに「欲しい家が売りに出されている」という条件が必要となる。
どんなに自分に知識があり、資金があり、買い時だと考えていても、「売っていないものは買えない」。
「こんな家がほしいな」と考えている家が売りにでていないなら、買えない。
そして、たとえ、あっても、周りが安いのにその家だけが高ければ、安くは買えない。
世間が金融危機でも、その売り手が困っているとは限らない。
困ってなければ、安く売ろうとはならない。
家の場合はどんなに理不尽な価格・条件であっても、売り手が「これじゃないと売らない」と言わなければ買えない。
結局は売り手次第なのだ。
今から過去の自分にアドバイスを贈るとしたら
以上のことを考えると、過去の自分に以下のようなアドバイスを贈りたい。
どんな市況でも、結局は、自分の目利き次第。
いちばん大事なのは目利き。それを鍛え、すぐに買えるように準備をしておく
知識・・・今まで書いてきたような相場感や、エリアなどの勉強をする。
条件を決めておく・・・上の知識をもとに、自分が狙う、もしくは、ゆずれない条件を設定しておく。
ほしい家を決めておく・・・条件とは別に「願望」を含めた「こういう家が欲しい」という家を決めておく。
もちろん、資金の手当ても考えておく。
ここまで来たら、その条件にあった家が出てくるまでウォッチし続ける。
不動産ポータルサイトなどに登録して、新着物件をウォッチし続ける。
「いつまでも待つ」つもりで、ずっと物件を待ち続ける。
この間、自分の相場感や条件に誤りがあると思ったら、修正する。
仲介からの「紹介」を受け入れてもいいけど、期待しない。
仲介さんにきちんと条件を伝えておく。
だけど、こういう方針の人や、いくつも買わない人にそんなにいい物件は回ってこないので、期待しない。
もちろん、いい物件があったら、即、内見をする
「これだ」という物件が出てきたら、市況にかかわらず、買いに行く。
不動産価格は株価の半年遅れると言われているけど、どちらも、そこが底だなんて誰も分からない。
でも、運良く、そういったタイミングに出会ったら、いつもより、積極的に動く。
資金的に冒険ができるのであれば、投資用の物件を買ってもいい
けど、その場合、株の方がやっぱりいいんじゃない?
だけど、市況にかかわらず、物件自体が優先。
という感じかな。