見出し画像

深夜の大事件

数日前やつはふと現れた。

ハッキリと確認したわけではないが、ママは絶対にやつだと思うと声を震わせた。

ママがやつを目撃する前にちゃーちゃんとくぅの不可解な行動があった。

キッチンのゴミ箱に乗り、2匹は天井を仰いでいた。

気のせいじゃないの?

パパはスマホの画面を眺めながらママに言った。

ママは気のせいじゃないと言い張り、翌日にやつを追い詰めるべく対策グッズをいろいろ購入してきた。

ママはキッチンに入る度ビクビクしていて、ため息をつき食事を作った。

そして昨日事件は起こった。

仕事のためリビングで支度をしていたママが、りくの動きを見て叫んだ。

「りくがなんかくわえてる!!!!」。

パパは寝ぼけ眼で気のせいじゃないの?と答える。

ママは逃げるように出勤してしまった。

ママが帰宅して猫3匹を集めた。

「あなたたちは討伐隊です。りくは隊長、くぅは副隊長、ちゃーちゃんは隊員です」。

隊長のりくは動きも鈍く猫じゃらしにもあまり反応しない。

隊長は当てにならないなーと王子は呟いた。

くぅとちゃーちゃんはまだ若く血気盛んだ。

毎晩狩りの練習を怠らないし期待の2匹。頼むぞ。

りくはTV台の後ろに気配を感じるようで、TV台の右側を陣取り張り込みに入った。

左側はちゃーちゃんが見張りりくの援護を担当した。

副隊長のくぅはのんびり毛づくろいをしていた。

りくの粘りは凄まじかった。

ジッとTV台を見続け気配を感じているようだった。

そしてそのときは来た。

「いるいるいるいる!!!!」パパが叫んだ。

ママは恐怖で風呂場に逃げ込んだ。

叫び声を聞きつけ王子も部屋から出てきた。

討伐隊が活発に動いている。

ママが心配そうに風呂場から「どんな状況?」と首を出す。

1回目、やつを取り逃がしてしまった。

再び隊長のりくが張り込みを続ける。

ちゃーちゃんも警戒しながら巡回している。

そしてまたパパの叫び声。

りくがやつを追い詰め、やつが再び姿を現した。

「取った取った取った!!!」。パパが叫ぶ。

王子がキッチンペーパーを無造作に引きちぎりやつを掴んだ。

りく隊長の活躍は目覚ましかった。

やつを追い詰め誘い出し討伐に成功した。

ノルウェージャンフォレストキャットはワーキングキャットと呼ばれ、バイキング時代に船で獲物を仕留めていた。

日頃はのんびりしたりく隊長だが、ご先祖様の血は受け継いでいたらしい。

期待されていた副隊長のくぅは、最後まで活躍の場はなかった。

ママがりく隊長を撫でながら「りくは頼もしいね」と話しかけた。

やつの気配が消え、討伐隊の活動も終了となった。

深夜の大事件であった。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?