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ハンターハンターの世界がこじらせ女子に優しいと思う理由


 
出ましたね。38巻。
 
ハンターハンターが好きです。
最初にハマったのはコミックス6巻か7巻まで出ているくらいの時期で、そこからおこづかいを握りしめて買いそろえたヨークシン編は本当にドキドキしながら読んだのを覚えています。
この先はHUNTER×HUNTER(ハンターハンター)のことをハンタと表記していきます。(長いので)
全体にわたってネタバレをします。未読の方はご注意ください。
 
この記事のタイトルをどう入力するかけっこう迷ったんですが、
より正確に言おうとするなら、「ポリコレやフェミニズムをこじらせた視点から見たハンタ世界ってめちゃくちゃ居心地いいんだよな」になります。
 
ありませんか?少年漫画における男女の不平等やカビの生えた価値観、無意識な男性優位の差別的な描写を、わざわざ探しに行って「ほらこれだから…」と作者の意識の低さにヤレヤレしたい時期。ない?
はい。そういう「こじらせ」です。
 
ハンタ世界の、ジェンダーフリーというか、性別や年齢をいちいち意識させられずにのびのびと「居れる」感、愛しています。
 
フィクションである少年漫画の世界で、人間が建物の上までヒュッとひとっ跳びできる脚力がある時点で、もうその世界は現実離れ、人間離れしている感じなわけですよ。
それなのに現実のヒューマンの、既存の男女の力の差とか地位の差のような固定観念から抜け出せずに、かたくなに女キャラの身体能力や戦闘能力を男より劣るものとして当然!と描写するのは、なかなか興ざめがすぎるのよ。
某ピースでカリファの能力値が一番数字低かったのはマジで徹底してんな…と思ったもん。
 
別に弱い女キャラがいてもそりゃ当然だよ、リアルの人間を流用する以上はガタイの差はあるよ、だけどそれを絶対だと思い込んでいる作者の目線で描かれる架空世界って、架空度、自由度に天井があるよなって。ちょっと現実世界の既存コテコテ価値観と地続きすぎるんだよね。フィクションなのに結局そこはガッツリとらわれてるんかいって。
 
かといって過剰につよつよな女キャラが出てきてもなんか嘘すぎるというか、あからさまなアファーマティブアクション枠なのが透けて見えると鼻白んじゃう。
女だからってナメないでよね!的なのも結局ナメられ前提からの単発カウンターでしかないし。なんだかなあって。
 
ハンタを読んでるとき、そういったストレスをまあ感じないんですよね。
こう、自分の中のおうるさ難癖フェミニズムポリコレ棒を振り上げる余地が、ないんだよな。
無理やり強いて探し出すならまあ、実況やオペレーターやガイド的なキャラが軒並み女子に偏ってるかなとは思うけど、まあそれは幽白からずっと作者の趣味だしな…あと地下競売でかくれんぼでございますって言ってた人はアレ多分がっつりお兄さんだしな。
 
そもそも強い弱い、勝者敗者の基準が単一じゃないもん。
例として一人挙げるなら、コムギって、作中でもメルエムが言っていた通り、フィジカル戦闘能力は皆無で非力で、おまけにアカズであるというあまりにも最弱な存在だけど、軍儀の王者であるという点では絶対的な強者で。
もっというと、このポジション(最強人外から守られる特別な存在の少女)のキャラクターを、こんなに鼻水とヨダレでびしゃびしゃにして外見的な美しさから遠ざけまくるの、すっげえよな。なかなかできないぜこんなの。そんな感じでキャラクターの造形がとても複雑で、単一の物差しでどうこう判断しづらいことが多いなって。
 
旅団の腕相撲ランキング、あれだけでもうかなり最高。
シズクが腕相撲に挑戦する流れ、女のコが初挑戦だー!というところはわりとリアルでもありうるライン(前提として男女の腕力差は存在する世界観)からの、主人公より静かに格上、さらに利き腕でなかったというダメ押し、そんで仲間内ではぼちぼちの実力という絶妙なバランス。実にストレスがなさすぎる。
 
あと、見た目の美醜やエロさにキャラクター同士が言及することが、本当に少ないんだよね。
露出の多い服装のキャラもいて、そのカッコで動きまわるとこぼれちゃうよパクさんって読者は勝手にドギマギしちゃうんだけど、作中誰もいちいち女体に対してことさら反応しない。レオリオとビスケがややスケベなくらい。
作中で明確に女体に言及するシーン、「ビスケの筋肉に驚愕するビノールト」と「ビスケの筋肉に見ほれるウェルゲー」くらいじゃない?どっちも称賛だけどどっちもそういう文脈じゃない。明らかになんか違う。
 
作中で年齢イジり、見た目イジりをされるのはビスケくらいで、だけどあれは本人がなりたい姿でブリっ子をノリノリで楽しんでいるしババア呼ばわりされたらきちんとキルアをぶっ飛ばすので、ストレスはほぼ感じさせないかなって。読者からババア無理すんなみたいなイジりをされる年配キャラ、いなくない?(ドキドキ二択クイズのババアはいるけど、そういうガチのババアじゃなくて)
 
そもそもハンタでは老若男女、顔や体形、骨格がみんな違って書き分けられているから、キャラの個性の差別化が、単なる「美人とモブス」「巨乳と貧乳」みたいな、貧弱な二極の直線上でのプラマイの調整だけじゃなくて、バリエーション、多様性(この言葉最近Twitter上で安易に揶揄に使われはじめててほんと腹立つんだよな)がある世界なんだよなって。
そんでこのバリエーションの多さは、別にどこかに向けての配慮のためというわけでもなく、特定の何かをエンパワメントしてやろうというわけでもなく、そのほうが作品世界がバラエティに富んで豊かになって、どんな属性の人が読んでも面白いから、という感じでしょうきっと。
それが結果としてフェミニスト(という言葉もかなり悪意と嘲りを含むものになってしまった、解せない)、フェミニズムの視点からしてもかなりケチをつける隙の少ない、既存の価値観にとらわれない、開けた世界を描写しているんだよなって。
 
人類の半数は男性でもう半分は女性なんだということが、少年漫画読んでると感じられないことがままあるけど、ハンタ世界では社会にちゃんと両性が存在しているよね。ミトさんは実家でおうちを守っているし、チードルは医師で会長だしで、いろんな人がいろんなところにいろんな役割で、普通に「いる」。
 
さっきはコムギのことに触れたけど、最新刊の内容で言うと、少年誌で、センリツでラブコメするのってすごいことだと思うのよ。よくあるブスキャラの勘違い☆イベントとかじゃない、真面目に鈍感なお姉さんとしての。今後の展開をめちゃくちゃ応援しています。
 
キャラの何人かは多分、体と心の性が一致してない、またはそもそも性別不明なんだけど、それは別にそのキャラクターのメインテーマではなく、さらりとそこに在る彼ら彼女らのことを、誰もいちいち「どっちなんだ」と明らかにしようとすることはないんだよね。ちょっとした描写でもって読者の想像にお任せされている。ここもかなりいろんな属性の人にとって居心地◎ポイントだと思う。
 
なんかゴチャゴチャと書き殴ってきましたが、パッと言うと、
ハンタって、作中の女キャラが容姿や腕力差や年齢のことをいちいち言われないから、読んでてすごく楽~~!
ってことが言いたかったのでした。

まあ全然それ以外のところで悲惨な目にあったり、サクッと殺される女キャラはいるんだけど、あからさまにリョナ要員なことはなく、だいたい悲惨に殺されるのは男キャラの比率が高いので、なんというか、性的に消費されている様をほぼ感じさせないかなって。だって散り様の描写、ポンズと比べてのポックルのアレですよ。
 
週明け連載再開、うれしくてたまらないです。楽しみだなあ。

追記
コミックス発売即連載再開の流れに慣らされていましたが、再開まだでしたね。待つさいくらでもな

あと読み返すと序盤のネテロ会長も若干スケベでしたね。でもメンチにそうと悟らせないのでえらい。

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