2023.10.17 旭川日帰り観光 研修レポート
研修目的
旭川の観光といえば、メディアなどの影響で旭山動物園への日帰りバスツアーが最も人気があるようである。
それ以外には上野ファームや男山酒造などがあり、こちらはガーデン街道のバスツアーなども出ている。
しかし旭川は北海道第二の都市であるにもかかわらず、インバウンドに人気の富良野、美瑛方面への乗り継ぎのための通過地点という位置づけで市内近郊の観光地は意外と知られていない。
大都市のためバスでのアクセスが容易な場所が多く、十分日帰りで楽しむことが可能と思われる。
近年ドラマなどの聖地めぐり、ロケ地めぐりが人気を集めており、今年はNetflixのドラマ「初恋」のロケ地マップが作成され観光案内所でも配布された。
旭川の北鎮記念館では人気の漫画「ゴールデンカムイ」に登場する旧陸軍第七師団の資料を見ることができる。
川村カ子トアイヌ記念館は日本最古で唯一の私立のアイヌ資料館で今年リニューアルされたばかりである。
アイヌ関連の博物館というと日高や胆振地方のものが有名で自分も上川アイヌについてはあまり知らない。
旭川博物館にもアイヌ関連の展示があるようなので一緒に見学し知識を深めたい。
北海道は広く、自然豊かな観光地に行くためにはアクセスが不便なところも多く、日帰り旅行をお勧めできる場所も限られている。
新たな日帰りコースの可能性を探り今後の案内業務に活かしたい。
研修日程
往路:札幌7:30→旭川8:58(特急宗谷)
復路:旭川17:00→札幌18:25(特急ライラック36号)
研修内容
① 北鎮記念館
② 川村カ子トアイヌ記念館
③ 旭川市博物館
今回旭川へは日帰りの研修のため、JRの特急列車を利用することにした。
特急だと所要時間1時間25分で到着する。
行きの特急宗谷のアナウンスによると、車内販売や自動販売機はないという。英語のアナウンスでは、JRパス利用時に車内で指定席が買えないと案内されていた。
当日は雨の予報でJRが遅延や運休しないか心配していたが、大丈夫だった。
JRが冬期間は大雪などで運休が出るのは北海道ではよくあることだが、最近はちょっとした雨などでも運休することがあり、日程に限りがある観光客の立場で考えると旅行計画が狂ってしまうので困ったことである。
ここ数年は気候も変動し、激甚災害が増えている傾向にあるが、天候の問題は仕方がないとしても、故障のための点検などでの遅延運休も増えているように感じる。
JR北海道は安全に運行することはもちろんだが、社会インフラとして定時運行をすることも重要ではないか。
無事に定時に旭川駅に到着したので、事前に調べておいた北鎮記念館に行くバスに乗ることにした。
旭川市内で運行しているバスは道北交通と旭川電気軌道の2社のみで、大都市で普及している交通系ICカードに対応していないのがなんとも不便である。
旭川市内で使えるバスカードはこの二社共通で、共通で乗れる一日乗車券は1200円で販売されている。
旭川市内のバス運行状況は「バスキタ!旭川」というアプリで確認することができる。
札幌ではめったにバスに乗る機会がないので使ったことがなかったが、札幌でリアルタイムの運行情報を検索するには、バス会社ごとに中央バスナビ、バスキタJHBなどのアプリがあるようだ。
ただ、この手のアプリは非常に使い勝手が悪く、出発地と目的地の名称を正確に入力しないと検索ができない。
例えば今回旭川駅前からバスに乗るのだが、駅前のバス乗り場はいくつかあり、名称も旭川駅前、1条8丁目など変わってくる。
北鎮記念館の最寄りの「護国神社」を通るバスは多いようで、旭川駅前発で検索した情報に出て来た28番春光循環線に乗ることにした。
アプリは所要時間、料金、乗り場番号が出てくるので便利である。
旭川の観光マップにはバス乗り場の番号が乗っていて、事前に確認していたので乗り場はすぐに分かった。
北鎮記念館へのアクセスはバス乗り場、バス番号などHPに分かりやすく書かれている。
護国神社の向かいにあるが、バス車内から大きな鳥居が見えたので見つけやすかった(旭川駅から約15分乗車)。
中に入ると簡単な受付があり、どこから来たか、年齢、性別をカウント機器のボタンを押すようになっている。
写真撮影は他の見学者が映らないならOKだが、売店撮影と動画撮影は禁止と説明をうける。
北鎮記念館の運営管理は陸上自衛隊旭川駐屯地業務隊が行っており、屯田兵や旧陸軍第七師団の歴史、陸自第2師団の活動などに関する資料を展示している。
陸上自衛隊の広報施設としては埼玉県朝霞市の陸上自衛隊広報センターに次ぐ展示規模を誇り展示物の数が多く見学には最低でも1時間は必要である。
人気の漫画「ゴールデンカムイ」に登場する旧陸軍第七師団の資料を見ることができるため幅広い年齢層の見学者が訪れていた。
こちらの漫画は来年1月実写化映画が公開されるので、今後も注目を集めそうだ。
個人的には漫画を読む習慣がないが、今回の研修のために漫画アプリで無料の範囲で「ゴールデンカムイ」を読んでおいた。
作者が北広島出身で、道内各地を題材としアイヌの文化についての豆知識的なものが多く出てくる。
子供たちのアイヌ文化の理解のきっかけになるし、道内観光にも興味を持ってもらえそうである。
撮影禁止の売店には、多くのゴールデンカムイのグッズが販売されていて、若い女性店員がファンと思われる客と推しが誰かで盛り上がっていた。
次の目的地、川村カ子トアイヌ記念館へのバスは旭川電気軌道の24番バスのみで1時間に1本。
事前に乗り場が旭川駅近くの1条8丁目ということは調べていたが、バス乗り場がはっきりわからなかったので旭川駅構内にある観光案内所で聞くことにした。
観光案内所の正式名称は、旭川観光物産情報センターというらしい。
営業時間は下記のとおりとなっている。
6月から9月 午前8時30分から午後7時まで(当面の間:お土産店は午後6時まで)
10月から5月 午前9時から午後7時まで 年末年始(12月31日~1月2日)は休館
カウンターには職員が2名いたが、机の上にEnglishと中国語というプレートが置かれており、日本語で説明が聞けるのか少し戸惑ったが、日本語で話しかけると中国人の職員が対応してくれた。
観光ボランティアのおじさんが一人いたので、日本人はそちらで聞く感じなのかもしれない。
ひとしきり、川村カ子トアイヌ記念館へのバス乗り場、時刻の情報を聞いた後、事前に準備していた疑問をぶつけてみることにした。
HP上にレンタサイクルと手荷物の預かりのサービスについて記載があり、詳細は旭川観光コンベンション協会のホームページで確認とあり、
※電話、対面、現金決済等の連絡・決済方法での予約は受け付けておりません※ とあったので、窓口では申し込めないのか確認してみた。
すると、中国人の職員の応対だったのでこちらの意図が伝わっているか微妙だったが、予約ではなくその場での利用は窓口でもできるようだった。
午後5時まで700円で預かってもらえるが、コインロッカーのほうが安いと案内された。
旭川観光物産情報センター内には、パンフレットのコーナーはもちろん、地場産品展示販売コーナーや飲食コーナーもある。
お昼時ということもあり飲食コーナーは賑わっていたが、観光案内所は誰も人がいなかった。
JR旭川駅は数年前にリニューアルされたようで、特産の木材が多く使われた温かみのある駅だった。
札幌駅のコンコースにあるような雑然とした待合椅子ではなく、旭川家具と思われる大きな木の机とテーブルが置いてあり、座れる椅子もたくさんあった。
駅にはイオンモールが直結しており買物にも便利である。
バス出発までまだ少し時間があったので、駅のKIOSKに売っているJUNDOGで昼食を済ませる。
JUNDOGは旭川のローカルB級グルメで、エビフライなどの具材をご飯で筒形に巻いたライスバーガーである。
さすが米どころの旭川、使われているお米がとてもおいしい。
KIOSKでは電子レンジで温めてくれるので熱々をほおばるのがお勧めである。
川村カ子トアイヌ記念館へのバスの始発乗り場1条8丁目は、旭川駅から北に5分ほど歩いたツルハドラッグの前だった。
1時間に1本しかないバスなので何人か並んでいたが、運よく座ることができた。
最寄りのバス停「アイヌ記念館前」までや乗車時間約15分。
停留所の名前がアイヌ記念館なので目の前にあるのかと思ったら、バスの中からも降りてからもそれらしき建物が見当たらず。
一緒に下車した女性にアイヌ記念館はどこか聞いたら、その女性は東京から来た観光客で、わざわざGoogle Mapで調べてくれて一緒に向かうことにする。しばらく歩いてもそれらしき建物が見つからず、近くの郵便局で道を尋ねた。
どうやら道の反対側を進んでいたらしく、住宅街を一周しやっとアイヌ記念館に到着。場所は北海道教育大学旭川校の向かいだった。
観光客の女性と、停留所の名前が「アイヌ記念館」なのに全く近くじゃないよねと話していたが、実は停留所からとても近かった。
あいにくの天気でスニーカーは雨が染みてぐしゃぐしゃになった。
道内では何ヶ所かアイヌ記念館を訪れたことがあったが、こちらには初訪問。
アイヌの旧家出身で測量技師だった川村カ子ト氏によってアイヌ民族文化の正しい伝承を目的として大正5年に開設された。
アイヌ出身者の唯一の私設の資料館なので、他の博物館などとは違い、説明文にはアイヌ目線のものが多く興味深い。
1Fはアイヌの文化や習慣を伝える生活用具などが展示されており、2Fは測量技師時代の資料の展示及び木彫り熊コレクション、砂沢ビッキ氏の作品などの展示がある。
やはり国立アイヌ博物館などと比べると規模は小さい。
今年リニューアルされたばかりで建物は真新しかったが、入場料が800円に値上げされている。
屋外には、ササ葺きのチセが一つあるが、倉庫として実用的に使用されているようで、灯りなどの設備はない。
チセを見たい場合はウポポイが体験もできるのでおすすめである。
川村カ子トアイヌ記念館での体験メニューは団体向けで予約制なので個人客には参加しにくいかもしれない。
敷地内の売店の品ぞろえは思ったより少なかった。
帰りのバスも来た時と同じく、1時間に1本なので、見学時間は次のバスに合わせると良い。
バスで旭川駅まで戻り、寒さで体が冷え切っていたためイオンモールのスターバックスで休憩してから次の目的地、旭川市博物館へは徒歩で向かうことにする。
Google Mapでは徒歩15分と出てきたがクリスタル橋経由で徒歩10分ほど。
橋のたもとで地元住民に旭川博物館への道を聞いたが、知らないようだった。
東京の観光客の女性の方の話でも、東川町で道を聞いても地元の人はバスに乗らないのでわからないと言われたらしい。
旭川市内は道路の幅が広いので信号を渡るにも距離を感じた。
旭川市博物館は、大雪クリスタルホールという複合文化施設の中にある。
博物館以外に会議場、音楽堂があるようだ。
6月~9月は無休で開館しているが、それ以外は第2・第4月曜日と年末年始が休館となっている。
常設展示室は1階展示室と地階展示室に分かれており、1階展示室では、アイヌの歴史や生活習慣の紹介のほか、日本以外の北方民族の生活文化の紹介もあり、展示物が豊富でとても見ごたえがある。
紙に印刷された説明資料があり持ち帰ることができるのが便利だった。
子供目線の高さで見やすい展示物や随所に漫画でのアイヌ文化の紹介があり、子供向けの研修施設としても向いていると感じた。
地階展示室では、旭川とその周辺の地質、地形、気候、生態系などが模型や動植物の標本を使って説明されている。
量は多くないが陸軍第七師団を擁する軍都としての資料も置かれていた。
北鎮記念館へ行く時間が無い方には、こちらをおすすめできそうだ。
全体的に思っていたより展示面積が広く展示内容も豊富なので、350円で見学できるのはとてもお得な感じがした。
旭川市博物館のすぐそばに道の駅あさひかわがあるので立ち寄った。
お菓子などのお土産のほか、旭川で有名な熊の木彫り「くまぼっこ」も販売されていた。
お土産に上川大雪酒蔵の甘酒缶を購入した。
今後の案内業務にむけて
実際にJRや路線バスなどの公共交通機関を利用して日帰り研修を行ってみたが、旭川までの特急は本数が多く、観光地までのバスも乗車時間15分ほどなので、十分日帰りで楽しむことが可能だった。
北鎮記念館には、漫画「ゴールデンカムイ」のファンが楽しめる要素があり、実際若年層の観光客を見かけたので、聖地巡礼の観光客にはぜひご紹介したい。
川村カ子トアイヌ記念館は規模が小さいので、展示内容、行きやすさ、体験メニューの豊富さなどを考慮するとウポポイの方がすすめやすいかもしれない。
旭川市博物館は、アイヌ文化の展示物が非常に充実しているので旭川観光で時間があり、アイヌ文化に興味がある方にはぜひ行ってみるようおすすめしたいと思う。
(Reported by M.H)