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観光ロジック

◎改めて「観光」を考えてみる

「観光」について改めて考えてみました。
観光という言葉の意味をネットで簡単に調べると「他国・他郷の風光・景色を見物すること」や「近年ではその目的において多様な活動」と説明されていたり、「非日常」や「楽しむこと」という言葉と併せて説明がなされている場合もあります。
観光について勉強していくと、「観光」と「旅行」を明確に分け、「観光とは、観光行動と観光施設など、その周辺のモノとサービス全般の関連事業を含めたもので、旅行(旅)とは人が空間的、物理的に移動すること」とされています。(多くの一般的な感覚だと、ここで言う旅行の内に観光が含まれているという感覚があると思うので、なかなかピンと来ないこないかもしれません。)旅行業の実務から地域の活性化にも繋げた「観光学」というものもあります。またこの観光について、他の業界同様に「マーケティング」が取りざたされ、産業で言えば第6次産業(第1次産業×第2次産業×第3次産業)に分類されます。
このように「観光」の言葉の意味は、一般的な解釈や学問的解釈、時代の経過等によっても違いはありますが、イメージするところはだいたい同じところを指している曖昧な言葉と言えそうです。産業の観点でも、そもそも「観光は、いろいろなモノコトを包括している」と言えますから、第6次産業以上の産業と言えそうです。

 ところで、観光に関してどんなに難しいことを言ったとしても、人がそこにいなければ観光は成立しません。そうであれば一番重要なのは、「皆は何を求めているのか?」に尽きます。もちろん単純に「楽しむこと」があるでしょう。しかし楽しむことだけなら、他にとって代わるものはあります。「未知の探求」。観光は手っ取り早くそれを叶えてくれます。それらをひっくるめた上で個人個人の目的等はいろいろあるにせよ、観光では根本的に「満足や満喫」を求めていると言って間違いないでしょう。それに対して「観光地側は、何をどのように提供していくかのか?」です。従来からある名所鑑賞や、時代と共に目的やアプローチの多様化や細分化といった流れで、○○ツーリズムというものもあります。その内の何かに焦点を絞っていくのか、それとも組合せていくのかは、その地の特性やキャパシティによってアプローチの方法も異なってくるでしょう。

◎満足と満喫

観光において「満足と満喫」とはどういうことか、まず言葉の意味から入ってみます。weblio辞書では、

「満足」とは、1.心にかなって不平不満がないこと。心が満ち足りること。2.十分であること。また、その様。
「満喫」とは、1.存分に飲み食いすること。2.心ゆくまで十分に味わうこと。(goo国語辞典では、3.十分に楽しむこと。も記されています。)

とされています。
それぞれの意味から私の主観で言い換えるならば、「満足」は目的達成、100%(に近い)状態で、観光においては行きたい場所に行った、美味しい食べ物を食べた、欲しいものを買った等がそれにあたり、大方1つの事象を満たすもので、観光の部分部分を構成するものです。
「満喫」は行為そのものやプロセスによって満たされることだと思うのです。満喫の意味に(語源による)「1.存分に飲み食いすること」とありますが、それはお腹いっぱいの状態を表しているのではなく、行為そのものを表していると言えます。また、言葉の意味2・3が示すように、観光に対して皆が求めるそのものを表していると思います。観光そのものがどのような構成かにもよりますが、満足の事象を重ね(例え満足には至らなかった事象も含め)、それらを含めたモノコトに付随する、または取り巻く時間・空間・体感等の統合的感覚が満喫感を生むのだと思います。

◎観光のメカニズムを考えてみる

観光の基本的なメカニズムを考えてみたいと思います。

①欲求・目的または観光コンテンツ→探す→知る

観光の始まりは、個人の欲求や目的です。それは他国・他郷に求めることから始まります。単にすぐ近くで済ませられる食事や買い物であれば観光とは呼びません。抽象的なモノコトから始まるかもしれませんし、具体的なモノコトから始まることもあります。あるいは欲求や目的よりも先に観光コンテンツが先であることもあります。それがあるから訪れたいという欲求や目的になるということです。
次にその個人の欲求・目的がどこで達成されるか、あるいはどこが適当なのかを探します。書籍であったり、現在ではネットが中心かもしれません。そしてその地を知ることになります。

②点→線→面(エリア)

観光場所が決まったら、実際に訪れる段階です。
例えばそれが、目的が他国・他郷の美術館だとします。自宅と美術館を点として考え、結んだ線=時間経過と空間移動です。美術館に滞在した時間を含め、この段階で観光として成り立つか?と言えば成り立つと思いますが、観光と呼ぶには何か物足りなさがあります。
美術館から、その地のレストランに行ったとします。新たな点ができ、線が増えます。更なる時間経過と空間移動です。
点が増えるごとに線も増え、それが面(エリア)となっていきます。時間経過も増え、空間移動がエリア認識に変わっていき、多くを見たり感じたりするモノコトが当然増えていきます。そして観光(地)としての全体像が作り上げられます。
点→線→面(エリア)になればなるほど観光意識が高まります。そしてそれらがどんなモノコトで構成さるのかも観光としての充実感に大きく影響していきます。

③時間×空間

点にとどまってもそこから次に向かっても時間経過があります。見る・食べる等の行為の他に、聞くことだったり感じたりすることも増えていきます。同時に自分がどんな場所でどんな場面かの空間を感覚的に認識します。移動時間、移動手段、そこから見える光景や景色、そこで聞こえる声や音、匂い、印象、雰囲気等で楽しむことです。また、観光気分を高めるものとして人(観光客)の量が関係することもあります。

これらが組み合わさって、または掛け合わされたものが観光なのではないでしょうか?当たり前と言えば当たり前ですね。次に観光した後の最終段階「評価とリピート性」について記していきます。

◎評価とリピート性

自宅あるいは故郷に戻る最中やその後、観光を振り返ります。自分自身がした観光の構成はどうであったかや、訪れた先々の満足度、観光全体(総合)としては満足・満喫度が測られることになります。これは意識的あるいは無意識的であってもです。観光となれば、お金を使います。使った額に見合っていたか否かもそうですし、お金抜きにしても、単純に良かった・楽しかった・魅力的だったか否かも評価です。ここでの評価は仕事等の評価ではありませんから、観光に訪れた個人の評価は最終的に単純なそれらが常なのではないでしょうか。また複数人での観光であった場合、共にしたメンバーによっても評価が変わってくることがあります。
リピート性については、個人の評価が大きく影響します。ツーリストにとって全てが満足(パーフェクト)でなくても構わず、意識的あるいは無意識的であっても「訪れた甲斐があった」と思えたのなら、また訪れたい(リピート)と思う可能性が十分にあります。それが観光を構成する一部であっても全体であっても、吸引力=集客力(リピート力)があるということです。その最たる3つのエレメント(要素)を記します。

①新しさとオリジナリティ

「新しさ」は人にとってとても魅力的です。言い方は少々大袈裟ですが、「未知への探求心」を叶えてくれます。この「新しさ」は、今までに見たことのない全く新しいモノコト、見たことはあるけど今はないモノコト、他にはあるけど「そこ」にはなかったモノコト等、何でも構いません。ただどこにでもあるようなモノコトであると、次に言うオリジナリティには欠けてきます。
「オリジナリティ」は、目的の他、偶然に出会ったモノコトも包括したそこにしかないものか否かです。そこでしか出会えない、あるいはそこでしか味わえないようなモノコトであれば、見た目に新しく、時には発見があり、喜びや感動を呼びますが、どこにでもあるもので占められると、つまらなさや残念な思いにさせられます。観光地の世界観もこれに含まれます。

②質(クオリティ)

ここでの質(クオリティ)とは、質がいい悪いの類だけではなく、その人にとっての満足に近い平均点以上のモノコトも指します。目的達成の他、本意不本意問わず出会ったモノコトや時間・空間の中で感激があったのか、もしくは単純に素晴らしいと思えるかです。

③コンテンツ、バラエティ(種類)と量

コンテンツ、バラエティ(種類)に富んでいるというのは、いろいろな人達を包括し、時には個人が求めていたモノコト以外に遭遇する可能性があります。その上、観光の期限内(許された時間内)に全て回り切れないほどの量があれば、また訪れたいと思ってもらえる可能性が高くなります。

これら①~③は全て適っていることがベストで、逆に一つでも欠ければ評価とリピート性は低下します。

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