
露出を極めれば写真は7倍オモシロイ
いつも見ていただき感謝です。
オートバイで旅をする写真家 立澤重良です。
先日、よく走るツーリングルートなのですが、千葉のとある場所で今まで氣が付かなかった所に神社を発見しました。なんとなく呼ばれた氣がしたので参拝すると、その神社は本殿しかなく拝殿がありません。本来の拝殿の場所に基礎だけ残っているのです。
張り紙によると房総半島を襲った令和元年台風で木が倒れてきて、拝殿が倒壊してしまった・・・とのことです。
主祭神はアメノミナカヌシ様。北極星の神であり「いまこの瞬間」の神さまです。私はバイク乗りとして、写真家として「いまこの瞬間」を尊び生きています。アメノミナカヌシ様には何度助けられた分かりません。
自分がいただいた功徳を考えると、とても見過ごすことはできませんでした。拝殿修復のための義援金を帰宅してから振り込みました。
その夜、なんだか奇妙な夢をみました。スーパーカブに乗ってクレーターだらけの薄暗い荒地を走っているのです。そこはとても幸せな場所であると同時に、なんだか奇妙で退屈な場所でした。
目が覚めると・・・うまく説明できないのですがメッセージ的なものを受け取った気がして。それが小さなことでも良いから今すぐ誰かの役に立つことをしなさい・・・とあったのです。

と、いうことで今回は写真のお話を書いてみます。題して【露出を極めれば写真は7倍オモシロイ】でございます。
以前、写真教室をやっていた頃、生徒さんの多くが何年も写真をやっているのに露出の感覚を全くもっていない人が多かったのを覚えています。とても勿体ないことです。
これはカメラのAE機能(自動で露出を決めてくれる測光機能)に任せて撮るのが一般的なのが原因だと思われます。
しかし露出を感覚として養うことで真の写真のオモシロさが見えてくるのです。コンピューターにお任せして決めてもらったものより、自分の意志で決めたものの方が楽しいに決まっている!といえばお分かりいただけるでしょうか?
それに自分の意志で決めた露出には不思議な発見もあるのです。

独自の視点で露出を解説
最近読んだある本で、自分の長所を身近な人に聞いてみる・・・とあったので職場の後輩にそれとなく私の長所って何?と聞くと次のように返ってきました。「物事を変わったアプローチで説明してくれて、それが分かりやすいんですよね。難しいことも理解しやすいです」と教えてくれました。
それを信じて写真の露出たるを「変わったアプローチ」で説明してみたいと思います。

世界は光の雫たちが乱舞している
私たちが存在しているこの世界は、光によってその様子が明らかにされています。
太陽光、炎、稲光、ホタル、電気などの人工的な光。これら光源によって物体や生き物や自然などのカタチ、色などが明らかにされ、ヒトは視覚を通して認識するのです。
物理学者はこの世の全ては素粒子で構成されていると言います。木々はクォーク、ヒトの生命はバイオフォトン、重力はグラビトン、一見して何もない空間には量子真空、太陽光は光子の大群です。
光の粒子達は普段は波の様子をしていて、ヒトの意識が観測することで粒に変化するそうです。何だか超能力みたいでワクワクしますね。
しかし話が脱線するので詳しくは割愛しますが、ご興味のある方は【二重スリット実験】というワードで調べてみてください。

カメラの中は真っ暗な箱だ
カメラの中は普段は真っ暗な箱です。
外部の光が一切遮断された闇になっていて、貴方がシャッターボタンを押した瞬間だけパシャッと幕が開いて、外の世界の光たちをレンズを通して取り込みます。
箱の中にあるイメージセンサー(またはフィルム)が外界の光に露出され、現実の様子が二次元の画として焼き付けられるのです。
外の光にどれだけ露出したか?という意味で露出なのですね。
写真を完成させるまでのプロセスとして、光の粒たちをどれだけ取り込もうか?という考えが露出です。

そこに光の雫たちがどれだけいるか?
まず最初に、貴方がそこで写真を撮ろうと思った場所、レンズを向ける先にどれだけ光が存在しているか?その様子はどうなのか?の確認です。
心静かに祈るように、光たちに意識を向けてみましょう。
彼らは非常に繊細です。
風があれば太陽は雲に隠れたり、木々のゆらめきで差し込む様子が変化したり、空間の水分などの粒子に反射や吸収などの反応を起こすので、刻々と変化します。
気温や湿度なども関係します。
もっとも光たちが美しくなるタイミングを観察してみましょう。
これら光の雫たちがこの世界に降り注いで、世界は反応(反射、吸収、透過、散乱など)しているのです。例えば虹は雨粒に太陽光が当たったときの散乱によるものです。

どれだけ光たちを取り入れる?
適正露出という言葉を聞いたことがありませんか?あたかも「正しい露出」と言わんばかりの響きですが、正しい露出なんてものはありません。
あえて言うなら適正露出というのは貴方が決めるものです。
ただしカタログに掲載する製品写真や履歴書に貼る証明写真など、説明的な業務写真を撮るのであれば、実際の明るさを忠実に再現した露出が適正露出です。でもこれはAEでできるので覚えなくて良いです。
貴方が撮りたい!と胸中に描いたイメージが、アーティーであれドキュメンタリーであれ、実際の明るさを必ずしも忠実に守る必要はありません。
実際より暗い写真(ローキー)でも良いし、実際より明るい写真(ハイキー)に仕立てても良いでしょう。貴方の意志で自由に決めてOKです。
そうと分かれば、目の前にある光たちをどれくらいカメラの中に取り入れて、どんな明るさの写真に仕上げるのか?で露出が決定されます。

露出を決める2つの要素
カメラの説明書に書いてあることですが、ここで少しだけ書いておきます。露出を決めるのは絞りとシャッター速度の2つです。この両者は目の前の光たちの量をシェアしあう関係であり、暗い場所などで折り合いがつかない場合、苦肉の策でISO感度を調整します。
絞りはレンズの中の穴ポコの大きさを調整することです。穴を大きく開く、小さく絞る。これによって光の量を調整できます。
シャッター速度はシャッターが開いていた時間です。シャッターが開いて閉じての動作が「カシャッ」と早ければ光は少し、「カ・・・・シャ」と長く開いていれば、光は多く入ります。

絞りとシャッター速度にはそれぞれ異なる役割があります。
絞りはピントの合う範囲(被写界深度)の調整、逆に言うと背景や前景のボケ具合の調整ができます。被写体を浮き立たせるように魅せたり全ての範囲にピントを合わせて奥行きを表現したりします。
シャッター速度は瞬間やスピード感といった具合に写真に時間的要素を加えるときに調整します。
いづれも表現の手法ですね。絞りとシャッター速度のそれぞれの詳細は次回以降に詳しく解説します。ここではどちらも光を取り入れる役割のものだと覚えてください。

どうやって露出値を決める?
冒頭にも書きましたが多くの人が露出を感覚として身につけていない原因はAEです。なんでもお任せでやってくれるオートモードが写真を退屈にしています。しつこいですが露出は自分で決められる能力を身につけましょう。
撮りたいと思ったイメージが胸中でかたまったとき、そのイメージの露出がいくつか?数値ですぐ出てくるようにするのです。よし!F11の1/125でいこう!とかF2.8の1/1000でいこうといった具合です。
目の前の光たちの量を見抜き、それを受けてイメージの明るさを実現するにはF値はいくつでシャッター速度はいくつか?すぐに数値が出てくるように。
これが露出の感覚を身につけるということです。

露出の感覚はどうやって覚える?
カメラの撮影モードは以下のようないくつかの種類があります。
・絞り優先 → 絞り値は自分で決めます 明るさはAEにお任せ
・シャッター速度優先 → シャッター速度は自分で決めます 明るさはAEにお任せ
・プログラムオート → ぜんぶカメラにお任せ
・マニュアル → 絞り値もシャッター速度も(つまり明るさも)自分で決めます。
このモードの中から、思い切ってマニュアルモードを選択して試し撮りをしてみましょう。
では…最初にどれくらいに設定するのか?
屋外の日中で太陽光を遮るものがない場所の場合、基本露出のF16/ISOというのがあります。地球上でどこにいても太陽光下なら明るさは同じという理屈です。
ISO100ならF16で1/100です。試してみてください。すこしいつもより暗いかな・・・という写真が出来上がります。そこに光たちの様子が見えてきます。
ここを基本にしてAEを使う場面であっても、シャッターを反押しした際に表示される露出値(F値とシャッター速度)を読み上げる癖をつけましょう。
いつでも数値を意識するのです。

感覚を身につけるとは反復練習です。
ピアノやゴルフが上達するのはどうするか?実際にたくさん練習するのが一番ですよね。感覚は体で覚えるものです。5m先のゴミ箱に紙くずを投げ入れるのに、どうしたら良いか言葉では教えられないのです。
ある程度やっていると 1.そこにどれくらい光の雫たちがいるのか 2.それをどれくらい取り込んだらイメージ通りいくか が分かってきます。
近道はありません。途方もない数の失敗を積んでください。その先に光たちをコントロールできている自分を想像しましょう。それは表現者として素晴らしい喜びの世界です。
カメラに撮ってもらう・・・をやめて私が写真を撮る。という意図のある能動的な活動に変わるのです。これはキャリアの中で劇的な成長となります。
次回は絞りについて詳しく書いてみます。
ありがとうございました。
いいなと思ったら応援しよう!
