自動販売機と訪日外国人
東京オリンピック・パラリンピックのメディアセンターに設置された五輪みやげの自動販売機が、来日した海外報道陣の間で人気となっているそうです。
タッチパネル式の画面に数回タッチするだけで、オリンピックロゴ入りのマグカップやトートバックなどの記念アイテムや、達磨、招き猫といった日本のお土産まで購入できるこの自動販売機。クレジットカード払いにも対応しています。ニュース映像を見る限り、購入したアイテムは「ガチャンと落ちてくる」というよりも「取り出し口まで丁寧に運ばれる」といった印象。しかも、きちんと箱に入っていて、物によっては包装紙に包まれています。これもコロナ禍に生み出された日本らしいおもてなしのひとつではないでしょうか。
この自動販売機を利用した海外メディアの方は、
「(お店だと)何を聞かれているか理解しなくてはいけないが、これならボタンを押すだけで商品を手に入れられる。」
「とても便利。お土産やさんだと並ばなくてはいけないけれど、これなら欲しいものをすぐに購入できる。」
とコメントしています。多くの制約がある中での来日、自動販売機を前に「どれにしようかな。」とひとときの買い物を楽しむ海外メディアの方の姿は、微笑ましく映りました。
今回のニュースからも分かるように、訪日外国人にとって、自動販売機はとても便利な存在です。コメントにもあった「言葉を交わさなくても買い物ができる」という点の他に、「小銭が欲しいときに両替代りにも利用できる」といった利点もあります。今後ますます非接触型のサービスが求められていく中で、飲み物に限らず、様々なものが自動販売機で購入できるようになっていくでしょう。それと同時に、訪日インバウンドのお客様にとっても、より使いやすい自動販売機が必要になってくるのではないでしょうか。
今回オリンピックのメディアセンターに設置された自動販売機はもちろん英語表記でしたが、日本の街角にある自動販売機は、まだ英語表示が少なく、商品も日本語表示だけのものが多いため、日本語が読めない訪日外国人にとっては分かりづらいものが多いからです。
実際、私もこれまで訪日タイ人のお客様をご案内してきた中で、自動販売機を前にこんな風に聞かれたことがあります。
「これは甘いか、甘くないか。」
「これはミルク入りか、ミルク無しか。」
「これは温かいか、冷たいか。」
「これはアルコール入りなのか、どうか。」
何気ないことばかりですが、どれも商品を買う前に知りたい大事な情報です。それが商品の外見だけでは判断できず、日本語が分からないと欲しいものが買えない、そうした訪日外国人がいるということに気づかされました。
私は日本の知らない街に出掛けたときなどに、「英語表示だけに注目して街を歩く」という遊びをしています。そうすると日本語が分からなかったら「買いたいものを買うのは大変」「目的地に辿り付くのは大変」と感じることが多くあります。今後、訪日した外国人が、日本は日本語が分からないと「旅がしづらい」という印象を持って帰ったとしたならば、日本人のひとりとして残念に思います。
視点を少し変えて、いつもの街を眺めてみる。そうすることで、日本語が分からない外国人にとっても「旅しやすい日本」へのヒントが見えてくる気がしています。