戻ってきた訪日タイ人観光客
7月某日、成田空港第2ターミナル。
添乗員付きパッケージツアーに限定した外国人観光客の受入が再開されて1か月。いまだ、コロナ前の到着便ラッシュ時とは比べものにならないほど隙間の多い到着ロビーで、ミートボードを掲げて待っていると、日本人に交じり、マスクをした外国人の姿を目にする。飛行機の到着から約1時間弱。水際対策の緩和後、お客様とのミートは、こちらが拍子抜けするくらいスムーズだ。
約2年、こうした空港でのお客様のお出迎えの機会から遠ざかっていたので、久しぶりに訪日タイ人ツアーのアテンドすることになった時は、さぞや感慨深いのではと思っていた。けれど、それも一瞬のこと。実際のお出迎えは淡々としたものだった。
何より、お客様自身がとても落ち着いている。久しぶりの日本、もしくは初めての日本という方であっても、特に興奮した様子はない。ただ、そんなお客様でも、空港ターミナルの外に出て、日本の空気に触れれば、皆さん「サバーイ(気持ちいい)」と嬉しそうに声をあげる。訪日タイ人ツアーによく見られる光景に、お客様が戻って来られたことを実感する。
コロナ禍で、お客様は変わった?
静かに動き出したインバウンドの現場。6月10日の受入再開後、これまでに私は3つの訪日タイ人ツアーのアテンドをさせていただいた。どのツアーも4~5人と少人数で、滞在は1週間弱。3つのツアーのうち2つは、会社訪問・視察と観光を組み合わせたツアーで、東京都内の観光や、富士山、箱根、鎌倉など、関東周辺の定番スポットを巡った。箱根の旅館では温泉に入り、浴衣を着て、食事も楽しまれた。
特に印象的だったのは、30〜40代会社員の女性4名のお客様。ディズニーのファンで、ディズニーショップでは、ぬいぐるみやTシャツなど関連グッズを、それぞれに数万円購入された。また、新宿のGUでは4名お揃いのキャップを購入されて、旅行中、ずっと着用されていた。また、イオンモールでのショッピング中には「たこ焼きが食べたい」とのリクエストがあり、フードコートの銀だこへと案内すると、「しょっぱい」とこぼしつつも、すべて平らげ下さった。
こんな風に、日本での時間を楽しまれるお客様の様子を目にしながら感じるのは、
コロナ禍においても、訪日外国人のお客様は、以前とそれほど変わっていないということだ。
感染対策など、添乗員やガイドとして気を配らなけばいけない点が増えたのは事実だ。お客様にもご協力いただかなければならない。そのことは、お客様自身も理解されている。入国にはビザの取得やその他様々な手続きが必要であるにも関わらず、それでも日本を旅先として選んで下さった方々だ。滞在中は、日々の検温や各所での手指消毒、マスクの着用にも、こころよく応じてくれている。
まだ、大きな流れにはなっていない外国人観光客の訪日旅行。けれど、インバウンドの現場は、ゆっくりと確実に前に動き出している。お客様に一番近い通訳ガイドの立場から、それを感じている。