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【428文字】チャリンチャリン太郎


「はいコレ、今日もおつかれさま!」

渡された硬貨握りしめ、僕は早足で自分の部屋に向かった。

僕の家ではお手伝いをするとお小遣いが貰える。今日はお風呂掃除をし、10円をゲットした。貰ったお小遣いはチャリンチャリン太郎に蓄えるのが日課。

硬貨を入れるたびに"チャリン"と音がするから"チャリンチャリン太郎"。僕が付けた愛称である。が、今日10円を入れた時いつもの音はしなかった。貯金箱が満タンになったのである。お別れの時がきた。


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僕は物置に行き、ハンマーを手にまた部屋に戻った。机の上の太郎と睨めっこ、表情ひとつ変えず僕を見るソレを前に、自然と手にも力が入る。手に汗握る緊張の瞬間とはまさにこのこと。ためらっては駄目だ、思い切り腕を振りかざした。


ーーガシャンッ  ジャラジャラ…


虚しくも綺麗に砕け散った太郎。始めから分かっていた結末も、いざその時を迎えると心にくるものがある。もうあの音は聞けないが、これまでの僕のがんばりが、今、机一面に広がっている。
悪い気はしない。


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