「花束みたいな恋をした」の感想は映画の感想ではなかった。
『花束みたいな恋をした』
はっきりと「展開が」とか「台詞が」など明言できないのだが何故か心に残る作品でした。
ストーリーとしては、本当に単純で衝撃的な設定や仕掛けがあるわけでもないがだからこそ多くの人に共感を与えたのではないだろうか。
誰しもが持った事のある恋愛へのあこがれや失恋の辛さ、それを映画を観て思い出した人は多いと思う。過去の恋愛の楽しかった思い出、失恋の時に味わった感情の起伏が心の中にぼんやりと呼び起こされて映画を観終わった後に残る。だからこれは映画の感想ではなくて自分自身の気持ちなんだ。間違いなく映画を観たからこそある感情なのだが、映画の主人公やヒロインがどうのこうのという事ではなくてあの時の自分の気持ちが今この胸の中にあるのだ。
だから、映画の感想として聞かれると言葉にすることが難しい…
過去の恋愛をふと思い出してみるのもいいかなと思わせてくれるそんな映画です。
細かくここのシーンでどう思ったかなどはあるのでそれを書いていこうと思います。
・サブカル好きの二人について
麦と絹はまさに自分は一般とは少し違った感性を持っていて、王道を好きな人を馬鹿にして斜めから見る『変わった存在』と思いたい人たちである。
「ショーシャンクの空に」を自慢げに玄人気取りで話す他人を馬鹿にしているが、実際には同じ穴の狢である事に気づいていない二人には映画を観ながらあれやこれやをついつい言いたくなってしまう。
「人と同じことはしたくない」と自分は個性的であると思っている人がいるが、「人と同じことはしたくない」と考えている人は山のようにいてその考え自体はごくごく普通の当たり前の事である。
この映画を観て「全く共感できないわ~、普通の人は共感してエモいとか言ってるんだろうね」とか言ってる人も麦とかと一緒で、一般とは違うと思い込んでいる自分に酔いたいだけ。就職する前の麦達もそんな会話をしているんじゃないかな。
・押しボタン式の信号でのキスシーン
赤信号がなかなか青にならずに二人での時間が延長された事によりキスをした。
赤信号を待つ中、何台か車が通ったがあそこはあえて通らないでほしかった。深夜に周りに人が誰もいない状況で車一台も通ってなかったら正直赤信号を待つ意味もない(信号無視は駄目だけど)。だから本当は信号なんて関係なく渡ればいいのに赤信号を理由にもう少しだけ二人でいたいって気持ちを表すのであれば車は通らなくてもよかったかなと思う。そしてキスをしている間に「青信号に変われ!変われ!」とめちゃくちゃ思っていた。というのも演出として、もう青信号に変わったのであればキスを止めて信号を渡ればいい状況になったにも関わらずキスを止めずに続けたいという感情を出してほしかったのだ。そしてキスしている間にまた赤になって「あ…また赤になっちゃったね」(台詞はなくとも)みたいな照れ感を出してもいいんじゃないかなと妄想をしてしまいました。
・シガテラ
麦の家の本棚に「シガテラ」があった。「行け!稲中卓球部」が大好きだった私は古谷実が好きになり「僕といっしょ」「グリーンヒル」「ヒミズ」「シガテラ」…と古谷実作品は一通り持っている。古谷実ファンの一人として麦くん稲中は実家にあるのかな?とか思いながらも「シガテラ」だけ読んで古谷実語んじゃねーよ!とか『仮面ヤイバ―』は「YAIBA」でスギ花粉ソルジャーとの一戦で涙とくしゃみで戦いにならないから刃がさやかのビキニを顔に装着して勝ったってエピソードがあってこれは前作からのファンのための青山先生のサービスなんだよ!ナマコ男も知らねーでコナン読んでんじゃねーよ!「まじっく快斗」と「4番サード」読んでから出直してこい!婦女子が!(本作とは関係ない事を書いてしまい申し訳ありません)
シガテラも冴えない主人公が美人でボインの女子と恋愛に発展してもうこれは運命!これ以上の幸せはないって思っていたけど結局二人は別れて新しい幸せを手に入れたっていう現実を見せる終わり方だったからそこも重ねてる部分があるのかなと思う。
・魔女の宅急便
実写版を馬鹿にしたりで登場した「魔女の宅急便」ですが、麦くんと絹ちゃんが居酒屋でいい感じになり盛り上がっていた時に麦くんの好きな人と大学の人とたまたま遭遇して一緒に飲みましょうか~みたいな流れになったけど絹ちゃんが怒って帰っちゃうシーンは魔女宅のオマージュ展開で元ネタ(小説は読んでません)へのリスペクトはあるんだなと思いました。キキとトンボがプロペラ付き自転車二人乗りして事故って吊り橋効果も手伝っていい感じになったけど、トンボの友達が来て急にトンボは私だけのトンボじゃなくてむしろ仲のいい友達がいて、でも自分は仲のいい友達はここにはいないしって嫉妬と孤独と焼きもちから恋心を視聴者に感じさせる大事なシーンと同じ展開で興奮。トンボは友達と一緒に飛行船の中を見に行ってしまったけど麦くんは絹ちゃんを追いかけてきて「えらいぞ!麦くん!」とエールを送りました。
と色々書きましたが、前半は二人に対してあれこれ言いながら楽しみ
最後は過去の思い出をふわりと呼び起こしてくれるいい映画でした。