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【投機の流儀 セレクション】次期エネルギー計画案に関わらず、電力株を始めとして「昭和の株」の引け値が連日安いのは、年間の税務対策上の損益通算の為の売りか?

本稿でも時々触れてはきたが、経産省がエネルギー基本計画の原案を新たに示した。2040年の発電量に占める原子力発電の割合を2割程度維持するというところがポイントだ。人工知能(AI)の普及による電力需要への対応と脱炭素の両立を図るためである。現在、原発は全体の電気量の6%しか出していないが、これをエネルギー中期計画によれば20%にまで持っていくということである。つまり、3倍にするということだ。

簡潔に言うと、ここがポイントである。エネルギー政策基本法で策定が義務付けられていて、
3年ごとに見直しており、今回の改正は第7次の計画に当たる。2040年に目指すべき生成可能エネルギーや原発などの電源構成を示す。従来は2030年まで、あと5年半で現在の6%の原発を20%に増やすというものだ。つまり、3倍半にするということである。

このことは18日(水)付けの日本経済新聞では明確に述べていないが、従来の中期計画というのはそういうものだった。脱炭素の問題と経済成長のための電力を使うため、この両方を兼ねて、30年度には13年度に対して温暖化ガスの排出削減目標と合わせて議論するが、13年度が46%減とする現行目標から35年には60%減、40年度には73%減にして、引き続き温暖化ガスを引き下げる案を軸に検討する。
電源構成の7割を占める火力発の脱炭素化も進める。

電力は当然、原発増加に行くことになる。原発の建て替えで、長期活用することも考えている。電力需要は2040年には22年度に比べて、最大限2割程度増える可能性がある。故に、原子力発電は設備更新につながる継続的な投資を起こすことが重点となる。このことは電力だけではなく、経済全体への裾野が広い事業となるので、経済を活性化することになる。

政府は原子力の2割程度の目標達成を、国内に現存する原発36基ほぼ全てに相当する稼働数としている。36基のうちの7基は東京電力であるが、東京電力は1基も動かしていない。そして、柏崎の第6号機と7号機はいつでも稼働はOKだと原子力委員会からお墨付きがつとに出ているのだ。これを地元の意見優先でと、東電の社内のゴタゴタによって遅れている。主として、地元の意見重視である。国土交通省出身の県知事であるが、経産省出身の県知事が着任すれば意見は変わるだろう。

日経平均は4万円近いところに居るににもかかわらず、東京電力(9501)は連日今年度最安値で、大量公募増資を果たした関西電力(9503)も公募額よりも100円以上、下である。不自然な状態はそう長くは続かない。

但し、東電も関電もともに「昭和の投資家」にとっては多数が持っている株式だから、年間の税務対策上での損益通算の対象になると思う。今年度を見越して、損益通算をするために「昭和の投資家」が多く持っているような銘柄が大引けにかけて安い。これが、この数日続いている。電力株はその代表だ。引けにかけて安いのは、商社株・海運株・鉄鋼株など「昭和の投資家」の銘柄が多い。

【今週号の目次】
第1部;当面の市況
(1)高値圏内の大保合を簡単には抜けないと述べ続けた。
(2)年末にかけて荒れるとすれば、為替の円安過度によろう。
(3)「来年春季労使交渉(春闘)の賃上げ動向」と「物価」の見極めをした上で、追加利上げを決める方向 
(4)金融政策見通せず、国債の予想変動率が上昇
(5)NY、50年ぶりの10日連続下落
(5)REIT、4年半ぶりの安値
(6)次期エネルギー計画案に関わらず、電力株を始めとして「昭和の株」の引け値が連日安いのは、年間の税務対策上の損益通算の為の売りか?
(7)冬のボーナス、4年連続で過去最高を記録─もちろん「好循環」に寄与する。
(8)賃上げ成長論の条件
(9)価格転嫁力と賃上げが「好循環」の絶対の条件だ。
(10)中途求人倍率が2.8倍に上昇
(11)FRBは中立金利の水準へと慎重に戻していく。
(12)日銀の利上げ─12月利上げを見送るというのが、市場の一般的な考え方だった。
(13)国内経済の動きは想定通りだ。2年7ヶ月連続で2%以上のインフレが実現している。
(14)FRBは3会合連続の利下げが確実視され、一方で日銀は追加利上げを見送る
(15)短期金利と長期金利の仕組み
(16)金利上昇でも、企業収益の拡大期待がそれよりも大きければ、株安は避けて通れる。
(17)日鉄(5401)に対する厚い壁─対米投資委員会の意見は割れるが、バイデンもトランプもUSスチール買収に反対

第2部;中長期の見方
(1)自社株買い、3年連続で過去最高
(2)東証市場に今年起こった初めての現象は新陳代謝を維持する望ましいことであると見る。
(3)上場は何のためにするのか?この意義が問われている。
(4)週刊ダイヤモンド誌の中長期予測がどのくらい当たるか?昨年12月23日・30日号の「2024年総予測」を要約してみる。
(5)トランプは就任後に「歴史的なドル高」をどう扱うか?
(6)地方再生論と首都遷都論
(7)本稿や「動画」の在り方についての基本スタンス

【プロフィール】
山崎和邦(やまざき・かずくに)
1937年シンガポール生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。野村證券入社後、1974年に同社支店長。退社後、三井ホーム九州支店長に、1990年、常務取締役・兼・三井ホームエンジニアリング社長。2001年、同社を退社し、産業能率大学講師、2004年武蔵野学院大学教授。現在同大学大学院教授、同大学名誉教授。大学院教授は世を忍ぶ仮の姿。実態は現職の投資家。投資歴57年、前半は野村証券で投資家の資金を運用、後半は自己資金で金融資産を構築、晩年は現役投資家で且つ「研究者」として大学院で実用経済学を講義。
趣味は狩猟(長野県下伊那郡で1シーズンに鹿、猪を3~5頭)、ゴルフ(オフィシャルHDCP12)、居合(古流4段、全日本剣道連盟3段)。一番の趣味は何と言っても金融市場で金融資産を増やすこと。
著書『投機学入門』『投資詐欺』(講談社)など多数。
ツイッター https://twitter.com/toukinoryugi

【著書】
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その他、著書多数。以下よりご覧ください。
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