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【投機の流儀 セレクション】8月に入ってからの1週目と2週目の「史上最大の下落幅」「史上最大の上昇幅」を示現した背景

ここが重要なところであると筆者は思うが、1.金融市場が破壊された訳ではなく、2.日本経済の実態の予測が崩壊したことでもない。

1番目は、90年〜03年にかけての不良債権不況や08年〜09年にかけてのサブプライムローンの破裂から端を発したリーマンショックはこの類に入る。
古い話しだが、97年の日本の金融危機(大証券が2社破綻・大都銀が1社破綻・中堅地銀が破綻等)や71年の8月に発生した「ニクソンショック」はこの典型であった。

「失われた13年(1990年〜2003年春)」の引き金を引いたのが「1.金融市場の破壊」であったが、実際はバランスシートの崩壊が経済実勢を壊した。「2.日本経済の実態の予測が崩壊された」のは、73年に発生したオイルショックがこの類の典型に入る。
本質をまとめると次のようになると思う。

A:日銀の予告した通り、0.25%の利上げを契機とした円安バブルと日本株買いのオーバーシュートの是正(円売りと株買いの巻き戻し)

B:米景気のソフトランディングを完全否定し、極端な悲観論に陥った。

C:イラン対イスラエルの戦争に過剰反応した(73年の第5次中東戦争で原油価格が一挙に6倍にした故に、18年続いた日本の高度成長がそこでストップしたという姿を想定した)。

以上、ABCのうちのAだけはその通りであるが、Bは極端な悲観主義に走り過ぎていると言わなければならないし、アメリカの景気後退に対する処理は、日本を含めた他国のいずれよりも巧みであり、景気後退期間は浅く短いという事実をしっかり思い返そう。

Cは筆者には予測困難ではあるが、少なくとも次のようなことは言える。
イランもイスラエルもバカではない。それどころか狡猾で、知能は高い。また「育ちの悪い者が天下を取るとロクなことはない」と筆者が何人かを(秀吉・ヒットラー・スターリン・習近平)例示して述べた通りのウラジミール・プーチンとは違って、イランもイスラエルも核兵器保有国であるが、両国ともに「『伝家の宝刀』は抜かないところに凄味がある」ことを熟知している。

プーチンのように軽々しく「伝家の宝刀」の鯉口を切ったり、束に右手をかけたりはしないと思う。イラン対イスラエルの戦争が中東全体の戦争に拡大してしまうという心配は、過剰反応ではないかと思う。

テレビ番組の解説のように、今回の暴落暴騰の背景を述べると次のようになるだろう。
1.日銀の追加利上げが直ちにある→これは内田副総裁が否定した。
2.米景気懸念→行き過ぎだ。
3.米大幅利下げ期待による大幅円高懸念→行き過ぎだ。
4.米株大幅下落懸念→行き過ぎだ(★註:但し、金融市場は上にも下にも行きすぎることを銘記しよう)。
5.トランプ・トレードの巻き戻し→現にこれは起きつつある。
6.市場内部要因による暴騰暴落だった→これは全く正しい。
7.円ショートの巻き戻し→これは事実そうであったろう。

以上、大衆週刊誌的にまとめるとこうなるだろう。

【今週号の目次】
第1部;当面の市況
(1)「追い証」多発、下値を叩く
(2)相場が急落すると、その後の物色内容が変わることがある。
(3)追加利上げは「来年以降」 
(4)8月に入ってからの1週目と2週目の「史上最大の下落幅」「史上最大の上昇幅」を示現した背景
(5)「歴史上、最大の波乱場面」の第一波は、ひとまずは終わりに近づいた。
(6)上場企業、今期1%減益予想の背景 
(7)「分配と成長の好循環」の「分配」の方はうまく行き「成長」をもたらしつつある。
(8)「成長と配分の好循環」は動き始めている。

第2部;中長期の見方
(1)当面の大局の見方
(2)年末にかけて、どうなるか?
(3)円高により、7月〜9月期以降の業績は下振れする可能性がある。
(4)「賃上げ景気の実力」
(5)岸田首相は総裁選に立たないと表明して、瞬間に日経平均は400円上がった。
(6)東京都知事選挙に票田のレベルの低さと民主主義溶解の危機を感じる。
(7)マスメディアに侵された票田の危うさ
(8)米大統領選
(9)共和党内におけるトランプを巡る嵐
(10)ハリスの勝算に問題は多い。
(11)東電の福島第一原発で、重大事故に発展しかねないトラブルがいくつか続いている ─ここで東電株が下がれば、好個の買い場
(12)インドにおける貧富の差、拡大の一途
(13)「テスラ成長モデル 市場は懐疑的」

【プロフィール】
山崎和邦(やまざき・かずくに)
1937年シンガポール生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。野村證券入社後、1974年に同社支店長。退社後、三井ホーム九州支店長に、1990年、常務取締役・兼・三井ホームエンジニアリング社長。2001年、同社を退社し、産業能率大学講師、2004年武蔵野学院大学教授。現在同大学大学院教授、同大学名誉教授。大学院教授は世を忍ぶ仮の姿。実態は現職の投資家。投資歴57年、前半は野村証券で投資家の資金を運用、後半は自己資金で金融資産を構築、晩年は現役投資家で且つ「研究者」として大学院で実用経済学を講義。
趣味は狩猟(長野県下伊那郡で1シーズンに鹿、猪を3~5頭)、ゴルフ(オフィシャルHDCP12)、居合(古流4段、全日本剣道連盟3段)。一番の趣味は何と言っても金融市場で金融資産を増やすこと。
著書『投機学入門』『投資詐欺』(講談社)など多数。
ツイッター https://twitter.com/toukinoryugi

【著書】
『賢者の投資、愚者の投資』
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