憂国考察記事#5-6 The "Noahtic"
【関連作品】
「シャーロック・ホームズシリーズ」:『グロリア・スコット号事件』(The Gloria Scott)、『緋色の研究』(A Study in Scarlet)
「憂国のモリアーティ」2巻:#5-6 The "Noahtic"
「憂国のモリアーティ」の第5話では、本作のもう一人の主人公とも言うべきシャーロック・ホームズが初めて登場する。シャーロックはウィリアムを観察して職業を「数学者」と言い当てる。この観察力の高さは原作でもたびたびワトソンが紹介してくれている。
原作シリーズの第1作目『緋色の研究』で、ホームズはワトソンと握手を交わした際に「アフガニスタン帰りの軍医」であるとやはり言い当てている。
“「はじめまして」彼は常識を越えた握力で私の手を握りしめながら、心を込めてこう言った。「見たところ、アフガニスタンに行ったことがありますね」”
ウィリアムとシャーロックのやりとりはこの場面を明らかにオマージュしている。ウィリアムがシャーロックにやり返しているところがさらに面白い。
また、作品のタイトルを『ノアティック号事件』としたのも心憎い。これは原作シリーズの『グロリア・スコット号事件』を意識した命名だろう。
原作の『グロリア・スコット号事件』は、ホームズが初めて手掛けた事件。原作ファンには、ホームズが探偵になるきっかけとなった事件として知られている。短編ながらも暗号の謎解きやホームズの観察眼など魅力の詰まった作品だ。『ノアティック号事件』はウィリアムが犯罪郷として主体的に事件起こした最初の事件。それまでの誰かの復讐や願望を叶えるための犯罪相談役とは、犯罪への関わり方が異なっている。
犯罪郷としての最初の事件で、宿敵シャーロック・ホームズと邂逅させただけでなく、題名にも意味合いを持たせてくるとは恐れ入った。
※ComfreakによるPixabayからの画像
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