憂国考察記事#15-16 The Two Detectives
【関連作品】
「シャーロック・ホームズシリーズ」:『3人の学生』(The Adventure of the Three Students)、『マスグレーヴ家の儀式』(The Musgrave Ritual)
「憂国のモリアーティ」4ー5巻:The Two Detectives
「憂国のモリアーティ」の第15ー16話は元ネタがあまりよく分かっていないため、この考察記事は未完成なまま公開し、判明した点があれば随時更新することを先に申し添えておきたい。
まず明らかに原作を意識していると分かる点から。物語の冒頭、シャーロックが犯罪郷の正体が分からずにイライラを募らせ、壁に向かって何発も発砲する場面がある。この非常識極まりない行動は原作の『マスグレーヴ家の儀式』で描かれている。
“私はずっと拳銃の練習は戸外で楽しむべきものと考えてきた。しかしホームズが妙な気まぐれを起こした時、肘掛け椅子に座ったまま引き金に軽く触れれば発射する銃とボクサー弾丸100個を使って、反対側の壁に弾痕で愛国心あふれるV. R.の文字を飾った。”
ワトソンはこれをホームズの「異常な一面」とみている。漫画でシャーロックはレストレードを呼びつけるためだと言い訳しているが、異常であることには変わりない。
ただ、原作に類似する場面として挙げられるのはここまで。あとはオリジナルかもしくは別作品のパロディかと思われるが、まだ正解であると確信を持てるものにたどり着けていない。
この考察記事でたびたび触れている題名に関しても同様だ。『2人の探偵』に類似するのは『3人の学生』か『3人ガリデブ』くらいだが、数字と名詞を組み合わせた単純な題名なので胸を張って元ネタだというには足りない。
事件の内容でより近いのは『3人の学生』かと思われるので、こちらの作品との比較で考察したい。第一に、限られた時間の中で推理しなければならなかった点は類似している。漫画でシャーロックとウィリアムは次の停車駅グランサムに到着するまでの48分以内に殺人犯を特定する必要があった。対する原作でホームズは、翌日の奨学金試験までに試験問題を盗み見た学生を探し出すことを求められていた。どちらも短時間で犯人を見つけ出している。
第二に、犯人を特定するに至った痕跡の一つが靴だった点も類似している。漫画でシャーロックとウィリアムは犯人の下足痕が乗務員の靴の形と同じであると気付き、犯人を乗務員に絞る。原作では、現場に残された机の傷やおがくずが混じった粘土から、スパイク靴を使う運動部の学生を犯人と特定する。
この作品で考察できるのはここまで。もし別の元ネタにたどり付いている人がいたら、ぜひ教えてほしい。
※Peter HによるPixabayからの画像