憂国考察記事#24 The Adventure of Four Servants
【関連作品】
「シャーロック・ホームズシリーズ」:『ボヘミアの醜聞』(A Scandal in Bohemia)
「憂国のモリアーティ」7巻:#24 The Adventure of Four Servants
「憂国のモリアーティ」7巻は切り裂きジャック編。原作と物語で重なっている部分やパロディは今のところ見つからないので、題名の元ネタや登場人物に絞って考察したい。(素直に感想を書くという選択肢は今のところないものとする)
第24話の日本語タイトルは『モリアーティ家の使用人たち』。英語タイトルの"The Adventure of Four Servants"をそのまま訳すと「4人の使用人の冒険」もしくは、シャーロック・ホームズ風にするなら「4人の使用人」。原作シリーズで似たようなタイトルは「3人の学生」「6つのナポレオン」「3人ガリデブ」。どれも似たような英文の構造を取っており、物語の内容は全く異なっているため、多少参考にした程度かと思っている。
さて、この物語からジェームズ・ボンドもといアイリーン・アドラーが本格的にウィリアムたちの仲間として活躍する。仲間入りの儀式のような話だ。ここで問題となるのは、いったい女性がどうやって男性として振る舞うかということ。原作ではワトソンがアドラーのグラマラスな体型について記述している。
“アイリーン・アドラーは―――これからも彼女をそう呼ぶが ―――階段を駆け上がっていた。しかし一番上で立ち止まり、玄関の灯りを逆光に素晴らしいプロポーションを浮かび上がらせて、通りを振り返った。”
漫画のアイリーンもこの記述通りの体型であるならば、いくら男装しても男に見せるのは難しい。その当たりを逆手に取ったエピソードが更衣室の場面なのだろう。モランへの壁ドンおよび蹴りで、女性としてどうしても足りない身長は厚底靴で補っていることが分かる。胸部などをどうしているかは描かれていないが、さらしでつぶすなどしているのではないだろうか。そして、女優として培った演技で男性のたたずまいを再現し、モランやフレッド、ルイスの中に男として溶け込んでいる。女優ティルダ・スウィントンは男役も女役も違和感なく、むしろ感嘆とさせられるほどどちらも美しく演じているので、きっとアイリーンもそんな女優なのだろうと思っている。
※Kai PilgerによるPixabayからの画像