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憂国考察記事#10-11 The Hunting of the Baskervilles

【関連作品】

「シャーロック・ホームズシリーズ」:『バスカヴィル家の犬』(The hound of the Baskervilles)

「憂国のモリアーティ」3巻:#10-11 The Hunting of the Baskervilles


「憂国のモリアーティ」では、しばしば原作の被害者が悪人として描かれている。『バスカヴィル家の狩り』に登場するチャールズ・バスカヴィルは貧しい子どもたちを追い立て、狩りを楽しむ極悪人だ。一方、原作の『バスカヴィル家の犬』に登場するサー・チャールズ・バスカヴィルは地元や地方の慈善事業に多額の寄付をしていた名士であり、財産相続目的で殺された。

ただ、原作にも漫画のチャールズ・バスカヴィルを想起させる人物がいる。サー・チャールズ・バスカヴィルの先祖で、ヒューゴー・バスカヴィルだ。ヒューゴーの場合、子どもではなく女性を誘拐し、荒野に逃げ出したその女性を追い立てた。

“その瞬間ヒューゴーは馬手たちに対して、馬に鞍をつけて猟犬全部を小屋から出すようにと叫びながら家を走り出た。そして女性の頭巾を犬に嗅がせ、月明かりの荒野の向こうへと激しい勢いで跡を追わせた。”

このヒューゴーの残忍さを漫画ではチャールズがそのまま受け継いでいるようだ。チャールズは殺した子どもたちの頭部をコレクションしていた。これは原作の犯人が珍しい植物や昆虫を収集していたことを反映しているのかもしれない。

ちなみに漫画ではウィリアムは途中でモランやルイス、フレッドと別行動を取っている。この展開にすることで、モランの面倒見の良さやルイスの思い、フレッドの正義感がよく分かる。原作でもホームズはワトソンに現地調査を任せ、自らは別行動を取っている。ウィリアムの別行動はこの展開へのオマージュであると共に、ほかのキャラクターの魅力を引き立たせている。

※Alice_AlphabetによるPixabayからの画像

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