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【ライフハック】西和賀を滅ぼさせないためにやるべき10のこと・前編【ライフハックではない】

岩手県で一番最初に「消滅」するといわれている西和賀町。最高に不名誉な称号だ。

西和賀町を知って7年。初めて訪れて6年半。住んで1ヶ月。まだまだ町のことを知らない俺が放言する10のこと。暴言を暴言であると指摘することは愛である。これが暴言だったとして、愛をもって応えてもらえるほど俺がこの町に受け容れられているとは感じていないので、とてもリスキーなことではあるのだが、しかし、今感じていることは、町に染まったあとでは思い出せなくなるかもしれない。

だからこうやってオープンにするのが最良だと信じている。無関係に挿入される角館の桜やら何やらの画像とともにお楽しみください。順不同です。

1. 地域おこし協力隊を30人入れる

現在、西和賀町では役場がそれぞれの課ごとに地域おこし協力隊を募集している。(その結果、場合によっては、行政の臨時職員のような働き方、あるいは行政のルールを押し付けられるケースが、少なくとも過去にはあったと仄聞している。)

正直、もっと放任すればいいのでは。役場で、町における事業の進め方(それはいろいろなやり方の一部のはずだ)を知るだけなら、役場に張り付いているのは1年でも十分だろう。「それでは放り出された協力隊はたまったもんじゃないだろ!」と言うなら、「うちはこういうかたちでやりますから」という情報をちゃんと表に出しておけば、あとから「こんなはずじゃなかったのに」と後悔する人は確実に減る

そして、30人の協力隊が同時に活動していれば、100人規模の役場で管理できるはずもない。管理の目が行き届かないところでは、往々にして新しいものが生まれる。

30人の協力隊は、町民にとっては一義的に30人のよそ者である。よそ者が1人来れば、何をやっても噂になるが、30人一気に来れば噂が追いつかない。

30人が役場を飛び出して、町民の目もすり抜けて、町の至るところに散らばる。彼らを受け容れて、彼らと一緒に何かをやりたいと考える人たちとつながることで初めて、やりたい人がやりたいようにやる町おこしが可能になる

ちなみに。

俺はこの町の協力隊としては、相当好き勝手にさせてもらっている部類なのではないかと思っている。配属された課の布陣と雰囲気、生来の性格、そして、もともとこの町のことを知っていたし、協力隊になる前に半年ほどの準備期間を過ごしているし、などなどいろいろな要因があるだろう。だったらどうして協力隊のあり方そのものにコチャコチャ言うのか。

町の人から「任期が終わって3年後の仕事のことをちゃんと考えておくんだぞ。そのために3年間を有効に使えよ」と言われることが多い。

大変に気にかけてもらって、そのこと自体はありがたいが、俺はどこでどうやったって、自分が食っていくぶんには困らない自信がある。ここで面白いと思える仕事ができれば、ここに住み続けるし、ツマランと思えば出ていく。それだけだ。

そして俺は演劇をやっていて、演出家だ。演出家の仕事は役者本人の魅力を最大限に引き出すことだ、と俺は思っている。俺はこの町で「町の演出家」をやりたい。

つまり、俺だけが儲けて、俺だけが注目されて、という状況になったって、俺はまったくもって楽しくないのである。役者として舞台に立ってくれる町民にこそ、儲けて、注目してもらいたいのだから

俺が演出していて楽しい町にすることが理想であって、その理想がちゃんと成り立てば、十分稼げるし、この町に居続けることだろう。

2. 県立西和賀高校の町立化

岩手県立西和賀高等学校、通称・西高は町で唯一の高校である。町は高校に対して、いろいろな補助策と補助金を出している。その手厚さは「『えっ、こんなに!?』と保護者が驚く」(by某役場職員)レベルである。

考える。

町に県立高校がなくなることと、町に高校がなくなること、どちらが致命的か。そりゃ、町に高校がなくなること、でしょう

教育行政どころか、行政についていまだにまったくの門外漢レベルで語って申し訳ない気持ちもあるが、恐らく、いずれ岩手県は、このままいけば西高を廃校にするだろう。

だったらその前に、こっちから「今までありがとうございました。もう県立高校は要りません。あとは自分たちでやりますから」と言ってやったほうが、町として格好がつく。

この町でやるんだったら、観光科と農林科でいいじゃない。それで日本で一番の高校になればいいじゃない。

成功するかなんて知らないよ。でも、このままの路線じゃ、大化けする可能性を捨てることになるのではないでしょうか。

3. コラボレーションの促進

以前、シナリオライターとしてブラウザゲームに携わっていたとき、「ユーザーを増やすにはコラボレーション以外にない」という話を聞いた。コラボするということは、お互いのファンを交換するということだ。

「来てみたらいいところだった」「食べてみたらおいしかった」と話す人は多い。しかし、多くの人々に最初のきっかけを与えるのに有効なマス広告を打つ体力が、この町には基本的にはない。

「SNSを使った情報発信」と言うのは簡単だが、それは根気とセンスと、なにより多大な労力がかかる。その労力を、今、役場が、町の民間が払えるか。非常に疑問である。

じゃあどうするかって、手の届く範囲から、すでに町の、あるいは町の生産物や町民のファンたちと、積極的にコラボしていくしかない。

民間レベルならそういう試みはもうすでに行われている。あとは行政自らがコラボを実践して、町全体でコラボの機運を高めていくべきだろう。

4.行政の徹底したICT化

民間と行政がコラボするとして、俺だったら「もうここと組むのやめとこかな……」と感じるだろうな、という点が多々ある。

たとえば、役場のメールは、庁舎でしか確認できない。土日を挟んで月曜に出てみたら、なんだか大変な事態になっていたということはいくらでも想像しうる。

たとえば。

先日、付き合いのある編集者から仕事の斡旋が来ていた。何度か電話をもらっていたが、取材やら締切やらでバタバタしていて、電話には出れなかったし、メールが来ていたのは気づいていたものの、タイトルだけちらっと見ていただけだった。

まあ、1日で「すいません、今回は別の人にお願いすることにします!」ってなるよね。

それにこのご時世「あー、すいません、庁舎でWi-Fi飛ばしてないんですよ」って言われたら、「うわ、マジかよ」ってなっちゃう民間は少なくないんじゃないか。

せめて、せめて、庁舎にWi-Fiを飛ばし、各人のスマホでメールを確認できる状況にはしなければいけない。

スマホでメールを確認できるようになったところで、「土日はしっかり休む」という原則は守ればいいし、「われわれは土日はしっかり休む」と対外的にも宣言すればいい。ただし、火急の事態には各自の裁量で対応する。

そして、言ってはなんだが、この町では非常にレベルの低いムダが目立つ。

西和賀町は合併してできた町で、旧湯田町と旧沢内村のそれぞれに湯田庁舎と沢内庁舎がある。庁舎間は道のりにして22km、車で22分かかる、とグーグルマップは言っている。(早くないですか? まあいいや。)

それ、往復したら移動だけで44分だし、直接話してる時間を除いたとして、もろもろ込みで、絶対1時間じゃ済まないだろう。一度、一ヶ月間で、湯田-沢内を移動した人数、それに要した時間をきちんと出してみてはどうだろうか

いや、出向く相手がクライアントならまだ話はわかる。でも、そうじゃないでしょ。

グループウェアとビデオチャットのある時代で、それ、まだやりますか?

5. 暇な人を増やす

業績のいい企業でも社員に余裕のない企業はいずれ滅びる。なぜなら、連続的な成長しか望めないからであり、連続的な成長で生き残れる期間は、多くの産業で短期化している

非連続的成長、つまりイノベーションを生み出す源泉は、立ち止まって考えることだ。

「そういえば、これって不便だよね」
「ずっとこうやってきたけど、これっておかしいよね」

そういうのって、ちょっと考えてみれば、「なんでこんなにわかりやすいことを見落としてたんだろう」って思うのに、目の前の仕事でいっぱいいっぱいになっていれば、気づくこともなくただただ見逃してしまう。

俺は役場職員は定時で帰ればいいし、その実現のために仕事の内容を見直すべきだし、働き方を変えるべきだと考える。

役場職員に限らず、町の企業全体が、ICT化を進めれば、全業種とは言わないし、全企業とも言わないが、早く帰れる人や、出勤時間を遅らせても仕事に支障が出ない人がそれなりに出現するはずだ。

その人たちの一部でも、「この町、どうすっかなー」「この集落、どうすっかなー」と考えれば、まあいずれ、きっと何かが起こる。

もちろん、育児だってしやすくなる。役場は「イクボス宣言 」をしている。イクボスが真っ先に取り組むべきは従業員を暇にすることだと俺は思うし、そのためには当事者に徹底的にヒアリングをすべきだ。

6.「振り返り」の頻度を高める

この町の人口は減り続けている。1年ムダにしたら、それだけ人口は減る。成長基調でムダにする1年と、衰退トレンドでムダにする1年は、意味合いも、重みも違う。

課題の「重要度」と「緊急度」は必ずしもリンクしない。重要度の高い課題を一時的に棚上げして、緊急度の高い仕事に取り組まざるを得ないことはあるだろう。しかし、棚上げしている間に、人口のカウンターが「カタン」と音を立てている映像をイメージしたほうがいい

緊急度の高い課題について、少しずつでも前進しているかどうかを、ことあるごとに確認すべきだ。進んでいないなら、なぜ進んでいないのか原因を特定して、問題があるなら排除していくべきだ。

振り返りの頻度を高めることは、課題設定そのものの間違いに気づくチャンスも与えてくれる。

さいごに

「西和賀を滅ぼさせないためにやるべき10のこと・前編」、いかがでしたか?

「なるほど」と思うようなものから、「何言ってんだ、こいつ」と感じるものまで、さまざまなものをご紹介させていただきました。

皆さんも日常生活をちょっと工夫しながら、楽しみつつ滅びの運命を回避してみては?

後編も盛りだくさんなものになりそうで、ワクワクしますね。公開されたら、我慢できずにすぐ読んじゃうかも!?

皆さんの滅びの運命回避ライフハックも募集しています! 「これはすごいよ」というものがあれば、ぜひコメントで教えてくださいね!

唐仁原 俊博 a.k.a. 西和賀町のやべーやつ / とうじんばら としひろ
岩手県西和賀町 地域おこし協力隊 / 演出家 / エンハンサー / エンチャンター

大学生・怠惰な生活・演劇の三足のわらじで、京都大学を10年かけて中退した、元フリーランスライター。ほんとは大してやばくないけど、最長3年の任期をフル活用するためにも、やべーやつを名乗ることにした。
ほんとに大してやばくない。

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